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昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

カメラの裏蓋吸引

2020-04-18 | 天体望遠鏡
 昔、フィルムを水素増感処理することが流行しました。これは、天体写真を撮影する際に起きる相反則性不軌(露出が長くなるにつれ、感度も下がってしまうこと)に悩まされてきた天キチにとって、画期的な方法でした。コダックのTP2415フィルムに水素増感を行うと、微粒子高感度で赤い天体も写るという理想的なフィルムになりました。
 出始めのころ、Sky&Telescope誌で知り、純水素ガスで試みたことがありましたが、かぶってしまいダメでした。後に、適度に窒素ガスで希釈したガス(その当時フォーミングガスと呼ばれていました)を用いると良いと知りました。製造キット(フォーミングガス・圧力容器・真空ポンプ)や処理済みのフィルムが市販され、一般に広まっていきました。
 ただし、このフィルムには欠点もありました。ベースが薄いせいか、長時間露出の途中でフィルムが浮き上がり、ピンボケになってしまうのです。その対策として使われたのが、裏蓋吸引です。昔の一眼レフは、裏蓋が外れるものが多くあり、アマチュアでも加工することが出来ました。

 



 一番上はノーマルのニコンFMの裏側です。これに穴をあけて、フィルムを押さえる板(圧板)より吸引できるようにします。




 水道用の真鍮製のコマに旋盤で穴を開け、使用しました。吸引はゴム球の使用で十分のようで、ゴム球は凹んだままでした。




 フィルムを押さえる板(圧板)の中央やや右よりに、小穴が見えます。ここから空気が吸引され、中央部分を浮かないようにします。この穴から放射状に溝を掘る、より高級な方法もありました。

 久しぶりに防湿庫から出しました。もちろん保管時には、シャッターのスプリングに負担がかからないように、ダイアルはバルブにしてあります。金属製ですので、造りもしっかりして、手にも馴染みます。その昔、ニコンFというカメラがあり、写りの良さだけでなく、並外れた頑丈さからストラップを持って振り回すと武器になるとも言われていた銘機がありました。そんな機械仕立てのカメラを、何時かは使いたいと思っていましたが、すっかり時代は変わり、かなわぬ夢となってしまいました。