昔の望遠鏡で見ています

フェロタイプ乾燥機



 昔、写真は町内には必ずあった写真屋さんに頼んで現像・焼付してもらうのが普通でした。しかし天体写真、特に星野写真は、コントラストを上げなければ見栄えがしないため、自分で処理する必要がありました。フィルム現像に加えて、印画紙への焼付も行いました。押入れの中や、部屋を真っ暗にしたいわゆるお座敷暗室をこしらえて、作業したものです。酢酸を希釈した停止液や定着液には結構臭いがありましたので、今考えるとよくやったなと思う一方、その苦労が報われるような喜びも、確かにあったように思います。赤い電球の下、現像液の中で印画紙にじわりと像が出てくるのを見るのは、とても楽しいものでした。天文同好会の後輩が、自宅を新築する際に、暗室にするために窓のない部屋を作ろうとしましたが、建築業者から売却する際に不利になるので止めるよう説得され、しぶしぶ諦めたという話を聞いたのも、今となっては懐かしい思い出です。

 印画紙には、光沢と半光沢仕上げがありましたが、コントラストが付いて見栄えが良いのは光沢紙の方でした。私が天体写真を始めた頃は、印画紙はバライタ紙が一般的でしたが、光沢仕上げ作業が不要なRCタイプが丁度出始めた時期でもありました。画像のフェロタイプ乾燥機は、焼付後のバライタ紙を、光沢仕上げする際に使用するものです。奥に立てかけてあるのがフェロ板で、鏡面加工したステンレス薄板にハードクロムメッキしたものです。濡らしたバライタ紙をフェロ板に密着させた後に布の下にセットし、電気ヒーターで加熱乾燥させます。すると、印画紙の表面に光沢がでました。ただし、気泡のせいだと思いますが、まだらに光沢が出ていないところが出ることが多く、とても難しい作業でした。何度も天文ガイドに入選していた先輩には、大きなバットにドライウェル(界面活性剤が入った商品で、フィルムの水洗いの最後に使うと、水滴がつかず、きれいに乾きました)を入れた水を張り、印画紙とフェロ板を一緒に入れて密着させると良いと教わりましたが、そのように大きなバットを用意するのは手間が掛かるので、実行できずに終わりました。その結果、プラスチックベースで、水洗時間も短くて済むRCタイプをよく使うことになっていきました。


暗室用電球です。インガシ用 ナショナル 100V と表示されています。

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