「東の大観、西の栖鳳」とその周辺の画家たちの作品展。
横山大観『作右衛門の家』
作右衛門が、草を刈って帰ってくる。
それを待っているような顔をした馬が左下に描かれている。
鮮やかな緑が印象的だ。
竹内栖鳳『班猫』(部分)
モデルになっているのは、沼津の八百屋で飼われていた猫なのだそうだ。
沼津に滞在していた栖鳳は、この猫を見て中国の徽宗皇帝が描いた猫の絵を思い出し、交渉の末に京都へ連れて帰ったのだという。
緑色の眼がいい。
いろんな方向から観てみたが、どこからでも目が合う。
八方睨みの猫だ。
竹内栖鳳『緑池』
蛙の足の感じがとても愛らしく、何度も観てしまった。
村上華岳『裸婦図』
この絵の脇に、読売新聞の「編集手帳」のコピーが貼ってあった。
1956年のこと、赤線で働いていた女性が、生きる希望を失って自殺をするために熱海に向かう前に、この作品を目にした。
その女性には、絵の中の裸婦が、亡き母の面影に、それから、別れて久しい姉の顔に見えてくる。
「生きなさい。死んではいけない」と言われているようで、彼女は自殺をとどまったのだそうだ。
一枚の絵が、人に生きる力を与えることがあるのだなあ。
ただ、死を前にして、絵を鑑賞する気持ちになるのは難しいだろうな。