LIFE SPAN(ライフスパン) 「 老いなき世界」
ハーバード大学医学大学院 教授 ダビット・A・シンクレア著
~誰もが人生120年時代を若く生きられる!
~人類の若さを左右する長寿遺伝子とは?
~いつまでも若く健康でいるために今すぐできることとは?
~山中伸弥教授の発見が、なぜ若返りを可能にするのか?
~「病なき老い、老いなき世界」における人生戦略とは?
📺本書を知ったのは、2020年1月に見たTVでした。「人生120年時代」を予感させる「LIFESPAN 老いなき世界」には、「誰もが人生120年時代を若く生きられる!」「老いは病気。だから治療できる」など、衝撃的な内容が書かれています。
筆者;ダビット・A・シンクレア氏は、老化の原因と若返りの方法に関する研究の第一人者
科学的な研究結果に基づいて展開される著者の主張は、「老いなき世界」が本当に来るかもしれないと思わせてくれます。人生のゴールが見えてきた自分にとって、大変興味をそそられましたので、早速購入し一読。600Pに及ぶ長文ですので、要約するにも多くのページを必要ですので、ここでは、主に、「筆者の主張」と、私たちが一番知りたい「老化を防ぐ方法」についてどのよなことが書かれているか触れたいと思います。
平均寿命が長くなった一方で、支援・介護の生活が長く続き、晩年は薬や手術といった苦痛の期間を過ごすようになっていることも現実です。年老いていくことで身体が弱くなっていき、心疾患やがん、アルツハイマーなどといった様々な病気になり、モグラ叩きのように治療を繰り返し、最期の時を迎えることになる。それが私たちの共通認識だと思います。
この現代の常識!に対して著者は、疑問を感じ、そもそも老化とは何なのか?を研究しはじめ、その結果行き着いたのが「老いは病気」というもの。研究を通して老化のメカニズムが明らかになっていくにつれ,「老いは病気である」としか言いようがなく、晩年患う様々な病気は、老化という病気による個々の症状で、老化さえ治すことができれば、それらの症状は発症しないという考えに。そして、病気であるならば、治療も可能であると主張しています。
下記は目次の羅列ですが、これをキーワードとしてつないでいくと述べられている骨子がある程度わかると思います。
- はじめにーいつまでも若々しくありたいという願い
- 「いい人生」を教えてくれた祖母の晩年
- 死を迎えるということ
- 時が過ぎていくことを気に病まなくていい人生
- 老化の根源を追い求めて
- 私たちはすでに長く生きすぎているのか
- 健康なまま120歳まで生きられる時代へ
- 第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
- 第1章 老化の唯一の原因ーー原初のサバイバル回路
- 生命の誕生
- 生殖か、修復かー厳しい環境を生き残るための仕組み
- 老化の原因に注目すべき理由
- なぜ生物には寿命があるのか
- 老化を説明する統合理論の確立に向けた努力
- 遺伝子変異が老化の原因ではない証拠
- 老化の唯一の原因は存在しないという玉虫色の見解
- 私の考える「老化の情報理論」ー老化とはエピゲノム情報の喪失である
- 劣化したアナログ情報は回復できる
- 明らかになっている「長寿遺伝子」の存在とその役割
- 生殖とDNA修復を調節しているサーチュイン
- サーチュイン以外の長寿関連遺伝子ーーTOR、AMPK
- 適度なストレスが長寿遺伝子を働かせる
- 第2章 弾き方を忘れたピアニスト
- なぜ「老化遺伝子」は存在しないのか
- 酵母研究から始まった「老化の情報理論」への道のり
- 酵母が老化する謎を解けなければ、人間の老化の秘密は暴けない
- 遺伝子操作によって酵母を老化させる実験の成功
- エピゲノムの変化が老化の原因だ!
- 遺伝子のスイッチを調整するエピゲノムのメカニズム
- ピアノ(ゲノム)を弾くピアニスト(エピゲノム)のミスタッチ
- 酵母を使った「老化の情報理論」の検証
- ドリームチームによる数々の発見
- サバイバル回路におけるサーチュインの役割
- サーチュインが酷使されると何が起きるのか
- サバイバル回路に負荷をかけることでマウスを老化させる実験
- 何が老化時計を早めているのか
- 老化を寄せつけない、あるいは信じがたいほど長寿な生き物たち
- あらゆる生物がほぼ同じ長寿遺伝子を持つのに、老化のペースが異なるのはなぜか
- 細胞の役割を決める「エピジェネティック地形」
- アナログ情報であるエピゲノムは不安定
- エピゲノムを安定させれば若返りも不可能ではないー走るのをやめない高齢のマウス
- 第3章 万人を蝕む見えざる病気
- 「老化は疾患」であるという王立協会の会合の主張
- 老化を死因とは認めない社会
- 加齢と「人間の死亡率の法則」
- 老化ほど危険な病気はないーー無視されている老化のリスク
- 老化は身体機能を衰えさせ、生活の質を落とす
- 高齢になればなるほど怪我や病気からの回復が遅れる
- 現代のモグラ叩き式の医療の問題点
- 個々の病気を治療するだけでは健康寿命は伸ばせない
- さまざまな病気の唯一のリスク要因
- 老化を病気と認めれば老化との戦いには勝利できる
- 老化を病気と認めるための思考実験
- 「老化の情報理論」から始まる老化との戦い
- 第1章 老化の唯一の原因ーー原初のサバイバル回路
- 第二部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)
- 第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
- 健康長寿のために誰もが取り組めること
- 間違いなく確実な方法食べる量を減らせ
- 食事制限の科学的研究の始まり
- 人間を対象とした観察でわかったこと
- 効果はありそうだが、万人向けではない手段
- 間欠的断食ー画期的な健康増進法
- 間欠的断食の方法はいくつもある
- アミノ酸を制限するーなぜ肉は危険なのか
- mTORを活性化させるアミノ酸の摂取量を控える
- 運動をする人ほどテロメアが長い理由
- 理想の運動強度はどれくらいか
- 寒さに身をさらして長寿遺伝子を働かせる
- 褐色脂肪細胞による熱の算出を再現する脱共役剤
- 褐色脂肪は「寒さ」でも活性化される
- サウナの効果ーー高温は人体にプラスか
- タバコや有害な化学物質、放射線は老化を早める
- 第5章 老化を治療する薬
- 分子レベルで見れば生命の仕組みは単純
- 死は必然であるとする法則はない
- イースター島に由来するラパマイシンの長寿効果
- TOR阻害分子のもつ可能性
- 糖尿病治療薬として手頃な価格で処方されるメトホルミン
- メトホルミンが持つ健康長寿効果の発見
- 「抗老化薬」としてのメトホルミンの未来
- サーチュインを活性化させる化学物質の発見
- Sir2酵素を活性化させるレスベラトロール
- レスベラトロールの効果を検証する
- サーチュインの燃料となるNAD
- NADを増加させるNRとNMN
- NAD増強分子による生殖能力回復の可能性
- 老化研究にとって卵巣機能の回復が意味するもの
- メトホルミンとNMNを摂取している父親に起きた変化
- さらなる老化の治療薬の発見に向けて
- 第6章 若く健康な未来への躍進
- 問題が何かを理解すれば、老化と戦うのはがんと戦うより優しい
- 未来の選択①老化細胞を除去する
- 老化細胞によるダメージのメカニズム
- 私たちの体が老化細胞を始末しない理由
- 老化細胞除去薬「セノリティクス」
- 未来の選択肢②レトロトランスポゾンを封じ込める
- 未来の選択肢③免疫系を活用するワクチンを使う
- 老化の予防接種は自然に反する行為のか
- 未来の選択肢④細胞のリプログラミング
- 老化はリセットできる
- シャノンの通信理論と私の老化理論の類似性
- 山中伸弥が突き止めた老化のリセット・スイッチ
- 未来の私たちが享受しよる夢の若返り治療薬
- マウスの視神経を再生させ、マウスの視力回復にも成功するという快挙
- リプログラミングのメカニズムを探る
- リプログラミングは老化研究の次のフロンティア
- リプログラミング技術の倫理問題に取り組む
- 科学会はなぜ「デザイナーベビー」を否定したか
- 第7章 医療におけるイノベーション
- 個人に特化した精密医療へ
- 新しいオーダーメイドのがん治療法
- 自分の遺伝子を知ることで可能となること
- 遺伝子が異なれば薬への反応も異なる
- ゲノムの情報をもとに症状の先回りをする
- センサーの活用
- パーソナル・バイオセンサーの時代へ
- バイオモニターが生活習慣についての決断を助ける
- バイオトラッキングによって突然死を防ぐ
- 「バイオクラウド」データとDNA解析を使って感染症の世界的大流行を阻止する
- 個人情報を明け渡すことへの懸念
- 病原体のDNAを解析して迅速に診断を下す
- ワクチン開発のミニ・ルネサンス
- 臓器移植のドナー問題
- 異種多種と臓器印刷の可能性
- 革新の時代はかならずやってくる
- 第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
- 第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)
- 第8章未来の世界はこうなる
- 健康寿命がどこまで延びるのか計算してみよう
- 科学技術は想像を超える速さで進歩する
- 長寿社会に対して誰もが抱く不安
- 地球が抱えきれる人口ー「100年以内に人類は滅亡する」という警告
- 大量消費・大量廃棄という問題
- 100年辞めない政治家が牛耳る世界
- 社会保障の危機
- かつてないほど広がる格差
- 過去から学べることー人口過密都市ロンドンが経験したコレラの大流行
- ロンドンにおける公衆衛生の改革
- 人口が多いからこそロンドンは繁栄した
- 人類は限界を超えることができるー地球で生きていける人口に上限などない
- 寿命を延ばすことは「不自然」なのか
- 人口増加のペースは着実に落ちている
- 人口が増加したこの世界での暮らしは確実に良くなっている
- 高齢者が活躍できる社会へ
- 高齢者の能力は非常に高い
- 高齢の労働者が労働市場を圧迫するという誤った考え
- いつまでも働き続けられれば経済のあり方は根本から変わる
- 老化を遅らせることによる経済効果
- 医療費の削減で浮いた予算を科学研究や教育に回す
- 一番重要なことー長い人生がもたらす人間らしさ
- 第9章 私たちが築くべき未来
- 科学者による未来予測
- 来る健康長寿社会に向けてなすべきこと
- 医学研究に公的資金が欠かせない理由
- なぜ老化研究に割かれる予算は少ないのか
- 今すぐ国は老化研究に資金を投じるべきだ
- 高齢者差別の上に築かれた医療制度
- 個々の病気を治療するコストとどうかを治療するコストの比較
- オーストラリアにおける健康保険・医療サービス制度の成功
- 健康保険制度が不十分なアメリカでは平均寿命が短い
- 誰もが等しく医療を受けられるようにすべきである
- 人生の終え方を考える
- 自ら尊厳のある死を迎えられるようにする
- 大量消費の問題を技術革新で解決する
- 遺伝子組み換え作物に対する風当たり
- CRISPR作物に対する時代遅れの規制
- 人類は創意工夫で困難を乗り越えられる
- 健康長寿社会に向けて働き方を考え直す
- 孫の孫にも会える社会における責任とモラル
- 第8章未来の世界はこうなる
- おわりにー世界を変える勇気をもとう
- 気鋭の研究者たちの取り組み
- 思い込みを超えて
- 私が実践していること
- 大切な家族とずっと一緒に入るために
- ブッシュウォーキングに出かけようー変えられない未来などない