ウクライナの ポロシェンコ大統領は5日夜、同国東部で親ロシア派武装勢力が軍事的な拠点にしていたドネツク州スラビャンスクを軍が奪還したことについて、制圧作戦に 「転機が訪れた」とする声明を出した。一方、親ロシア派側は勢力を州都ドネツクなどに再配置したことを示唆。戦闘が周辺に拡散する恐れも出てきた。
ポロシェンコ氏は、スラビャンスクの制圧で「人質が解放され、大量の武器が押収された」と強調。同市での制圧作戦の成功は「完全な勝利ではないが、大きな象徴的な意味を持っている」と述べた。また、さらに周辺地域でも制圧作戦を続けるとした。
一方、「ドネツク人民共和国軍の総司令官」を名乗り、スラビャンスクを拠点としていた親ロシア派幹部ストレルコフ氏はロシアのテレビの取材に答え、同市と同様に親ロシア派が街全体を掌握していた近隣のクラマトルスクからも撤退したことを明らかにした。
武装勢力側の死者数などは明らかにしなかったが、「スラビャンスク脱出に際し人員の8~9割、武器の9割を維持することに成功した」と述べた。「防衛には大都市の方が向いている」とも述べた。7日には「ドネツク人民共和国の中央軍事評議会」を設立し、隣接するルガンスク州を含め、東部の親ロシア派武装勢力全体の軍事戦略を協議する考えを示した。
ドネツク州内では、6日未明も軍と武装勢力の散発的な衝突が続いた模様だ。州政府によると、市内でも銃撃音が聞こえたという。ウクライナ軍幹部は6日、「都市の空爆や居住地区での無秩序な銃撃は誰も考えていない」と述べ、ドネツク市住民が恐れる軍による「総攻撃」説を否定した。
ロシアは、ポロシェンコ氏が停戦の延期を拒否し、制圧作戦を再開した1日以降、住民に多数の死者が出ていると強く批判している。(ウィーン=喜田尚)
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