(眠いから雑。できれば後で書き直したい。とりあえず生の感覚を残しておきたいから今日のうちに書く。)
今日は雪が降っていた。
祖母が死んだのは夏の暑い日だった。死んでからあっという間に季節が巡って冬。寒い毎日が続く。
母がひと月に一回、月命日(25日)のあたりに祖母の家に行きたいというのであるので、今日は僕の運転で行くことにした。
お線香をあげること以外にも今日は一つやることがあった。
それは、祖母が持っていたといわれている日傘を探すことであった。
というのも、母の従姉、すなわち祖母の兄のむすめ、やっぱり、母の従姉の方が分かりやすいか、母の従姉が、
「昔、おかぁちゃん(訳あってこれは祖母のこと)が、ヒロシさん(祖母の兄)からもらったっていう日傘を見せてくれたのよぉ。シルクの日傘なんだけど、まだ整理されずに残っているかしらねぇ。ヒロシさんの形見としてもらいたいわ。」
と言っていたのである。
ヒロシさんという人は、僕と同じ医師で、戦前に信濃町の医学校を卒業して、
戦地に赴き戦死した方である。
その奥さんが戦地に行く直前に妊娠したそうであるから、
母の従姉、とは一度も顔を合わせないまま亡くなってしまった。
義理人情に篤い僕の母であるから、
そりゃあ探さなくっちゃいかん、
今日は祖母の家の家探しをするぞ、
ってな具合で探しにやってきたのである。
そうして。見つかった。
シルクの日傘。レース柄の表面に、裏地にシルク。
色は、クリーム色とオレンジ色の中間みたいな、ちょっと色あせた感じの色。
傘の内側にはタグが付いていて、小さなタグには「伊」という字。
長めのタグには「Isetan」という文字が書かれていた。
伊勢丹の傘である。
すでに書いたようにヒロシさんが日本にいたのは戦前だけである。
すなわち、戦前の伊勢丹である。おそらく学生時代に信濃町の医学校から新宿に行って買ってきたんだろう。
埼玉北部の妹にちょっとおしゃれなものを買ってやろうという、
純粋な兄の優しさで買っていったのかもしれない。
それとも、東京のハイカラなものを買って行って自慢してやろう、とか
見栄みたいな気持ちで買っていったのかもしれない。
なんにせよ、ヒロシさんが祖母に持っていったシルクの傘である。
それを発掘し、今日はヒロシさんのむすめに渡すことができた。
知らない人から見たら、ただの古い傘である。
ほつれていて、傘を開くと布がちょっとずり落ちたりしてしまう古びた傘である。
でも、そこには妹を思う兄の気持ちが入っていた。いや、今も入っている。
祖母も死んだ。
今日の僕らの行動を見ながら、あの世で二人で何を話しているだろう。
ありがとうございます。
皆さんのおかげで僕は今日も生きています。
今日は雪が降っていた。
祖母が死んだのは夏の暑い日だった。死んでからあっという間に季節が巡って冬。寒い毎日が続く。
母がひと月に一回、月命日(25日)のあたりに祖母の家に行きたいというのであるので、今日は僕の運転で行くことにした。
お線香をあげること以外にも今日は一つやることがあった。
それは、祖母が持っていたといわれている日傘を探すことであった。
というのも、母の従姉、すなわち祖母の兄のむすめ、やっぱり、母の従姉の方が分かりやすいか、母の従姉が、
「昔、おかぁちゃん(訳あってこれは祖母のこと)が、ヒロシさん(祖母の兄)からもらったっていう日傘を見せてくれたのよぉ。シルクの日傘なんだけど、まだ整理されずに残っているかしらねぇ。ヒロシさんの形見としてもらいたいわ。」
と言っていたのである。
ヒロシさんという人は、僕と同じ医師で、戦前に信濃町の医学校を卒業して、
戦地に赴き戦死した方である。
その奥さんが戦地に行く直前に妊娠したそうであるから、
母の従姉、とは一度も顔を合わせないまま亡くなってしまった。
義理人情に篤い僕の母であるから、
そりゃあ探さなくっちゃいかん、
今日は祖母の家の家探しをするぞ、
ってな具合で探しにやってきたのである。
そうして。見つかった。
シルクの日傘。レース柄の表面に、裏地にシルク。
色は、クリーム色とオレンジ色の中間みたいな、ちょっと色あせた感じの色。
傘の内側にはタグが付いていて、小さなタグには「伊」という字。
長めのタグには「Isetan」という文字が書かれていた。
伊勢丹の傘である。
すでに書いたようにヒロシさんが日本にいたのは戦前だけである。
すなわち、戦前の伊勢丹である。おそらく学生時代に信濃町の医学校から新宿に行って買ってきたんだろう。
埼玉北部の妹にちょっとおしゃれなものを買ってやろうという、
純粋な兄の優しさで買っていったのかもしれない。
それとも、東京のハイカラなものを買って行って自慢してやろう、とか
見栄みたいな気持ちで買っていったのかもしれない。
なんにせよ、ヒロシさんが祖母に持っていったシルクの傘である。
それを発掘し、今日はヒロシさんのむすめに渡すことができた。
知らない人から見たら、ただの古い傘である。
ほつれていて、傘を開くと布がちょっとずり落ちたりしてしまう古びた傘である。
でも、そこには妹を思う兄の気持ちが入っていた。いや、今も入っている。
祖母も死んだ。
今日の僕らの行動を見ながら、あの世で二人で何を話しているだろう。
ありがとうございます。
皆さんのおかげで僕は今日も生きています。