神戸新聞NEXT 8月5日(火)11時1分配信
日本とモンゴルの歯科医療関係者の協力で誕生し、20周年を迎えた歯科診療所「エネレル」=モンゴル・ウランバートル
兵庫県内の歯科医療関係者らの協力でモンゴル・ウランバートルに開設された歯科診療所「エネレル」が、今年で20周年を迎えた。モンゴルは、民主化後の食生活の激変で子どもの虫歯が急増し、両国の医師らが同診療所を拠点に予防や検診の大切さを広める活動を展開。現在は同国最大規模の歯科診療所となり、医学生らの研修の場ともなっている。(磯辺康子)
活動の中心になってきたのは、神戸医療生協なでしこ歯科(神戸市西区前開南町)の黒田耕平医師(63)。
モンゴルでは1990年の民主化後、子どもが甘い菓子やジュースを口にする機会が増え、虫歯が目立ち始めた。91年、日本モンゴル文化経済交流協会(大阪市、佐藤紀子会長)の呼び掛けで、黒田医師らがモンゴルを訪問。以後、両国の歯科医療関係者が訪問し合う交流が始まった。
エネレルは94年、モンゴルの女性歯科医師ミジド・イチンホルローさん(56)が中心となり、幼稚園の一角を借りてオープン。2002年には、両国関係者の念願だった自前の診療所を開設した。
診察室だけでなく、歯磨きなどの予防教育の拠点としてセミナー室や図書室を備える。地下には歯ブラシ製造工場も設け、所内で販売している。当初の建設費約3000万円のうち、約2500万円は日本の支援者らが無利子で出資し、すでに返済も終わった。
現在は、所長のイチンホルローさんら約30人が働く大規模な診療所となり、一日平均約150人の患者が訪れる。約6割が子どもで、親子二代で訪れている人もいる。
「今も虫歯の子どもは多いが、『治療より予防』という考え方は着実に広まってきた」とイチンホルロー所長。治療体制の整っていない地方に出向き、遊牧民への予防、検診活動も展開している。
黒田医師は「モンゴルは、経済発展で利益を得やすい高額診療を行う医師も増えているが、健康の基本となる予防の大切さをさらに伝えていきたい」と話している。
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