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「減圧室」に健康効果はあるのか 記者が体験してみた

2014-10-22 13:37:44 | 医療と介護

朝日新聞デジタル 2014年10月21日 (富岡万葉、清宮涼)

 富士山9合目と同じ低気圧にして新陳代謝を促すという「減圧室」で男女2人が死亡する事故が起き、警察が捜査している。健康効果をうたって気圧を調整する施設はここ数年、全国に増えているという。

 埼玉県ふじみ野市のスーパー銭湯「真名井(まない)の湯大井店」の減圧室で先月、事故は起きた。同県富士見市の男性会社員(65)と女性介護士(58)の2人が、利用時間の45分を過ぎても出てこないため従業員が確認すると、減圧状態の室内で2人が倒れていたという。
 施設運営会社によると、減圧室は約7年前に福島県の製造元から購入。15分かけて富士山9合目と同じ高度約3500メートルの低気圧にし、15分維持したあと通常の気圧に戻す。室内は約7平方メートルで、向かい合うようにベンチが置かれ、8人程度が同時に座れる。圧力が戻るまで扉は開かない。
 「効果」について、銭湯のホームページでは「身体の中から改善し成人病や数々の病から身体を守る」とうたっていた。利用は1回約45分で300円。事前に体調チェック表を記入してもらっており、2人とも問題ないとしていた。
 遺体を解剖した県警によると、2人には急死につながるような病気はなく、死因は現時点ではっきりしない。室内には気圧を戻すボタンや緊急用のインターホンもあったが、2人がインターホンや減圧解除のボタンを押したかどうかは不明という。県警は機械の誤作動や操作ミスが死亡事故につながった可能性もあるとみて、業務上過失致死容疑も視野に捜査している。
 今回の事故とは違う製造元の減圧室を記者も体験してみた。東京都新宿区の「調圧室」と呼ばれる施設。「全身の血液の流れがよくなり体温も上がる」とホームページで紹介されていた。
 5分で高度1500メートルの低気圧にした後、5分かけて平地の気圧に戻すのを計5回繰り返す。2列のイスが向かい合って置かれた四角いドームの室内。「気圧が下がっているときは密閉されているので、ドアは開けられない」と説明を聞いたときは、内心動揺した。
 気圧が戻り始めると、蒸し暑くなり汗ばんできた。耳が聞こえづらく、鼻も詰まり、あくびが出てきた。50分経ち、外に出る。肩を回しやすくなった気もするが、眠くて体がだるい。利用前と後で体温を測ったが、どちらも36・6度だった。
 週1回通っているという、一緒に室内に入った千葉県の無職男性(89)は「いい気分になる。健康法のひとつ」と話した。
 こうした気圧を調整する施設は、国の許可が必要な医療機器ではなく、効果は証明されていない。だが業界関係者によると、ここ数年、同種施設を置く店が増えているといい、事故があった施設と同じ製造元だけでも、8年前からこれまでに約50台を出荷したという。

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