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市販品類似薬の保険適用除外加速

2015-01-09 11:58:19 | 医療と介護

次は湿布薬か


薬粧流通タイムズ社:WebMedicalニュース 2015年1月8日

・次回診療報酬改定、財務省主導の効率化

市販品類似薬の保険適用除外が加速される方向となっている。候補に挙がっているのは、解熱鎮痛薬、湿布、胃薬、抗アレルギー薬だ。最近の診療報酬改定では平成24年度に栄養補給目的のビタミン剤、26年度にはうがい薬のみの処方に対し技術料・薬剤料とも算定不可とする措置が取られた。26年度のうがい薬は中医協議論が大詰めを迎えようとしている中で政府決定として提示され実施となったが、そもそも財政制度審議会で議論されていたものであった。その財政制度審が27年度予算建議で「市販品類似薬の保険給付除外を加速化すべき」と提言している。実施されるとすれば28年度診療報酬改定となろう。

財務省、財政制度審議会は市販品類似薬の保険適用除外を言い続けてきている。26年度診療報酬改定でのうがい薬のみの処方の算定不可は、その財務省の言い分が取り入れられたことの典型例と言える。
昨年の診療報酬改定では、厚生労働省は改定対象とすべき具体的項目に関する検討をほぼ40回に及ぶ中医協総会で行ってきた。それが近年の診療報酬改定に臨む厚労省の進め方となっている。中には診療側あるいは支払側が納得できないとする項目もあり、そうしたものは2度あるいは3度と議論を重ね合意点を見出す。つまり、問題となりそうな課題は早めに中医協の議題にあげ、議論を繰り返す方式をとっているのである。
しかし、うがい薬のみの処方の保険適用除外は、それまでの中医協での検討項目にあげられることはなく、診療報酬改定率を決定する財務省と厚労省との折衝の中で浮上し、2013年末の12月20日の改定率決定と合わせて後発医薬品の価格設定の見直しとともに記載されたものであった。中医協議論とは別のところで決定されたのである。そして財政制度審議会はそれより前、11月29日にまとめた平成26年度予算に関する建議の中で、市販品類似薬の保険適用除外を求めていた。

今回、平成27年度予算に関する建議では、その保険適用除外を求めるトーンが一段と上がった。市販品類似薬について公平性の観点から保険給付の対象から除外する取組みを「加速化すべき」という。その候補は、解熱鎮痛薬、うがい薬、湿布、ビタミン剤、胃薬、抗アレルギー薬で、前回26年度予算に関する建議と同じ項目だ。かつて候補にあがっていた漢方製剤はない。民主党政権下で行われた事業仕分けの中で大きな議論となったが、日本東洋医学会など臨床医による大きな反対運動もあって対象から除外された。

うがい薬とビタミン剤はすでに取り組みが行われており、それ以外のものが今後の取り組みの対象になるとみられるが、ビタミン剤、うがい薬というこれまでの流れから、次のターゲットも本格的な治療薬である解熱鎮痛薬や胃薬、抗アレルギー薬ではなく、湿布薬があがってくるのではないかと想像される。その後に、解熱鎮痛薬などが議論の対象になってこよう。

湿布薬が次のターゲットになるにしても、実際には次回平成28年度診療報酬改定時となる。ただ、「加速化すべき」というその意図が反映されることになれば、次回改定時にも湿布薬だけでは済まない可能性もある。また、前回のように改定率決定の政府内折衝で決定されることになると、最終的には中医協に諮られるとしてもその発言力は限定的なものとなる。

解熱鎮痛薬や胃薬、抗アレルギー薬という本格的な治療薬が保険適用除外のターゲットになる場合、診療の現場でそれらの対象となる患者が来ても医師は処方できないという問題が生ずるが、財務省は対案として処方する場合は市販品と同じ価格にする考えを持っている。市販品類似薬の薬価は同一成分を含む市販品よりも安く、しかも健康保険では多くても3割の負担で済む形になっている。このことは市販品を買う場合と医療機関で処方してもらう場合とで公平性に欠けるというのが財務省の考え方である。

資料1:財政制度審議会建議(22ページに市販品類似薬)(財務省)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia261225/index.htm
資料2:平成26年10月8日財政制度審財政制度分科会資料・社会保障(1)(26ページに市販品類似薬候補)(財務省)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia261008/01.pdf
資料3:平成26年度診療報酬改定(平成25年12月25日中医協資料、12月20日政府決定)(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000033409.pdf


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