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横領にたどり着いた病気

2015-03-04 08:39:48 | 医療と介護
公益財団法人事務局次長逮捕の深層
元電通マンを「1億円横領犯」に転落させた


「ギャンブル依存症」とは

産経デジタル 2014年11月1日 【衝撃事件の核心】

大手広告代理店「電通」が出資して設立した公益財団法人「吉田秀雄記念事業財団」の預金80万円を着服したとして、元事務局次長、小口芳和容疑者(63)=住所不定=が10月5日、警視庁捜査2課に業務上横領容疑で逮捕され、東京地検に起訴された。元電通マンだった小口被告が横領した総額は約1億円。ほとんどを競馬につぎ込んでいた。その犯行態様からギャンブル依存症を指摘する声もある。「真面目」と評判だった元電通マンの“裏の顔”とは-。(太田明広、五十嵐一)
■夜間にこっそり忍び込みデータ削除
 東京・銀座のビル4階。今年3月のある深夜、吉田秀雄記念事業財団が入る部屋の明かりが突然ついた。誰もいないはずの時間帯に姿を現したのが小口被告だった。パソコンを起動させ、財団の経理に関わるデータを削除した。作業を終えると財団名義の通帳を持ち出し、2度とこの職場に姿を現すことはなかった。
 無断欠勤や遅刻とは無縁の小口被告が出勤しないことを不審に思った同僚が、携帯電話や自宅に電話をかけたが応答はなく、小口被告が扱っていた経理書類を確認したところ、預金口座と帳簿上の残高が合わないなど多額の使途不明金の存在が判明。小口被告の不正行為が明るみに出た。財団は直後に警視庁に被害相談し、7月には小口被告を懲戒解雇した。
 行方をくらませていた小口被告は9月中旬になって、警視庁本富士署に出頭。財団の通帳を盗んだとして窃盗容疑で逮捕された後、10月5日に業務上横領容疑で再逮捕された。小口被告は捜査2課の調べに対し、「間違いない」と容疑を認めている。
 今年3月に会社に忍び込んだのは、直前に財団理事から「所管官庁の内閣府の検査があるから書類を整理しておくように」と指示されたため、不正の発覚を遅らせようとした工作だったという。捜査関係者によると、横領した金はほぼ底をついていたといい、逃走資金がなくなったことから、出頭したとみられる。
■小口で引き出し、競馬用口座に入金
 小口被告が勤めていた吉田秀雄記念事業財団は昭和40年、仕事に対する心構えを説いた「鬼十則」を編み出すなど電通の発展に尽力した4代目社長、吉田秀雄氏の遺志などを継承するために設立され、広告に関する研究への助成事業などを行っている。
 電通社員だった小口被告は平成13年に財団に出向。23年に定年退職したが、その後、正式な財団職員となり事務局次長を務めていた。財団関係者によると、小口被告は口数は少ないが仕事をきちんとやる真面目な職員。職場の人間と積極的に付き合うことはなく、仕事が終わるとすぐに帰宅することが多かったという。「競馬好きだったなんて逮捕後の報道で初めて知った」と、この関係者は驚きを隠せない。職場で競馬の話をすることは一切なかったからだ。
■夜間にこっそり忍び込みデータ削除
 東京・銀座のビル4階。今年3月のある深夜、吉田秀雄記念事業財団が入る部屋の明かりが突然ついた。誰もいないはずの時間帯に姿を現したのが小口被告だった。パソコンを起動させ、財団の経理に関わるデータを削除した。作業を終えると財団名義の通帳を持ち出し、2度とこの職場に姿を現すことはなかった。
 無断欠勤や遅刻とは無縁の小口被告が出勤しないことを不審に思った同僚が、携帯電話や自宅に電話をかけたが応答はなく、小口被告が扱っていた経理書類を確認したところ、預金口座と帳簿上の残高が合わないなど多額の使途不明金の存在が判明。小口被告の不正行為が明るみに出た。財団は直後に警視庁に被害相談し、7月には小口被告を懲戒解雇した。
 財団の通帳の残高チェックなどは規則上、上司の事務局長がすることになっていたが形骸化しており、実質的に小口被告が1人で経理を担当していた。
 捜査関係者によると、チェック態勢の甘さにつけ込み、小口被告は1回当たり約3万円と少額のカネを引き出していた。しかし、多いときでは1日に20~30回も引き出すことがあった。引き出した金は小口被告が競馬用に開設した口座に振り込んでいた。
 着服を始めた時期について、小口被告は「20年くらいからだ」と供述しているが、捜査2課は18年くらいから不正を行っていたとみている。22年までは年度末に他から金を借りて補填(ほてん)することで発覚を逃れていたという。その後は資金繰りが悪化したとみられ、23年以降は補填されることもなかった。
■ギャンブルの負けは、ギャンブルでと…
 動機については、小口容疑者の口からは明らかになっていないが、着服した1億円もの大金を競馬につぎ込む心理的背景には何があるのか。一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表理事は、ギャンブル依存症の可能性を指摘する。
 田中氏は一般論として、「幼い頃から厳しくしつけされ、偏差値教育など競争社会の中で生きてきたタイプは、世間の道徳やルールに縛られる。日々の生活に息苦しさを覚え、何もかも忘れられるものを求めてギャンブルにたどりつくケースがある」と説明する。
 ギャンブル依存症はこうした成育環境を要因とするケースのほか、「肉親にギャンブルや酒への依存症がある場合、陥りやすいという学説が出ている」といい、遺伝も要因となりうる。
 田中氏によると、ギャンブルをすると、脳内でドーパミンなどの神経伝達物質を生成して満足感や快感が得られるが、やり過ぎると、ギャンブルでしか快感などを得られない体質になってしまい、依存症に陥るという。
 道徳や順法意識よりも快楽が優先され、行動に抑制がきかず会社の金を横領するような不正行為を繰り返すようになる。思考回路も一般的な感覚と異なり、「一発大きく当たれば問題ない」と、ギャンブルの負けをギャンブルで取り戻そうと考えるようになるという。
 田中氏は「ギャンブル依存症は誰でもなりうる病気」と強調する。その上で「日本では“自己責任の欠如”という偏見が強いが、周囲が気づき、治療を受けさせるなどの仕組みを整えない限り、同様の事例は続く」と指摘した。

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