医学部新設「弁護士と同じ轍踏むな」、全国医学部長病院長会議
暫定的定員増の期限も「誠実に履行を」
m3.com 9月19日(金) 池田宏之(m3.com編集部)
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文部科学省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」において、新設候補として東北薬科大学(仙台市青葉区)が条件付きで選ばれたことを受けて、全国医学部長病院長会議は、9月18日、改めて「新設に反対」とする声明の文書を出した(『東北薬科大、医学部新設の“第一関門突破”』を参照)。
同会議の幹部は、同日の会見で、教員の確保により悪影響が出ないような方策が取られるか注視していく考えを示し、「行政には(資格保持者の増加で混乱する)歯科医や弁護士と同じ轍を踏まないようにしてほしい」との指摘も出た。声明には、暫定的に増加が認められている医学部入学定員増の期限切れについて「誠実に履行されるように行政に強く要望する」との項目も入っている。
「東北薬科大選定は、苦渋の選択」
同会議は、今回の構想審査会の決定について、「政治判断なので、ある程度前向きに考えなくてはいけないところもある」(同会議の荒川哲男会長)としながら、「あくまで第一段階」(声明)とのスタンス。東北薬科大学が選ばれた理由については、「3つの候補の中から選ばざるを得なかった。苦渋の選択と理解している」(同会議顧問の別所正美氏)。
声明では、当初示された「卒業生の定着」「教員確保で地域医療に影響を与えない」などの項目をブレイクダウンした7条件をクリアしているかについて検証する必要性を強調し、東北各県や地元大学などで作る「運営協議会」の議論について注目する方針。特に、教員などとして医師が引き抜かれる影響を防ぐための方策について「一番の問題」(荒川会長)として、「『現所属長の推薦書』などの仕組みが必要」と指摘して、対応を求めている。加えて、東北における2008年度以降の219人の定員増(うち95人は地域枠)の定着実態を検証する重要性も指摘している。
同会議広報委員会委員長の森山寛氏は、東北薬科大学の計画について、地域定着の対策の不十分さを指摘されている点を踏まえて、「(指摘は、新設ありきでなく)『地域医療充実のために、(新設の必要性を)もう一度考え直してほしい』というところまで含んでいるとの認識」と踏み込み、「(定員増で)歯科医や法曹界と同じ轍を踏まないでほしい」と話した。
「勤務形態の偏在」解消求める声
医師偏在の解消については、会見出席者から様々な意見が出た。同会議相談役の岡村吉隆氏は、偏在の例として、出産や育児などで働けない期間のある女性医師やフリーター医師の「勤務形態の偏在」(森山氏)や、診療科偏在、介護系施設で働く医師の多さなどを挙げた。同会議副会長の甲能直幸氏は、医学部新設について、「非効率的。非常に金を使う」と切り捨てた。医師の必要数は定員増や女性医師の復職支援、外科系医師が現場に早く出るような教育制度の検討などのアイデアを示し、「(新設より)税金を使わすコストパフォーマンスが良い」とした。
現状の暫定的な医学部定員増についての指摘も出た。声明では、「期限切れの誠実な履行」を求めているが、荒川会長は、暫定的な定員増の期限が2017年度と2021年度に来ることを踏まえて、「医師不足が続いている地域は、暫定措置を外すこともできると思う」と話し、暫定的な定員増で、養成数が調整できるとの認識。和歌山県立医科大学理事長・学長 の岡村氏は、同大が暫定的な定員増を始める際の条件として、「定員増から10年後には定員を10人減らす」との約束であった点に触れて、「(定員削減を示しながら、一方で)なぜ医学部新設になるのか」と矛盾を指摘した。
岡村氏は、一部の「西日本に医師が多い」と指摘する声にも反論。和歌山県内の公的病院の勤務医について「全く足りない。寄付講座の話があっても、(派遣する)医師がいない」と理解を求めた。
暫定的定員増の期限も「誠実に履行を」
m3.com 9月19日(金) 池田宏之(m3.com編集部)
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文部科学省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」において、新設候補として東北薬科大学(仙台市青葉区)が条件付きで選ばれたことを受けて、全国医学部長病院長会議は、9月18日、改めて「新設に反対」とする声明の文書を出した(『東北薬科大、医学部新設の“第一関門突破”』を参照)。
同会議の幹部は、同日の会見で、教員の確保により悪影響が出ないような方策が取られるか注視していく考えを示し、「行政には(資格保持者の増加で混乱する)歯科医や弁護士と同じ轍を踏まないようにしてほしい」との指摘も出た。声明には、暫定的に増加が認められている医学部入学定員増の期限切れについて「誠実に履行されるように行政に強く要望する」との項目も入っている。
「東北薬科大選定は、苦渋の選択」
同会議は、今回の構想審査会の決定について、「政治判断なので、ある程度前向きに考えなくてはいけないところもある」(同会議の荒川哲男会長)としながら、「あくまで第一段階」(声明)とのスタンス。東北薬科大学が選ばれた理由については、「3つの候補の中から選ばざるを得なかった。苦渋の選択と理解している」(同会議顧問の別所正美氏)。
声明では、当初示された「卒業生の定着」「教員確保で地域医療に影響を与えない」などの項目をブレイクダウンした7条件をクリアしているかについて検証する必要性を強調し、東北各県や地元大学などで作る「運営協議会」の議論について注目する方針。特に、教員などとして医師が引き抜かれる影響を防ぐための方策について「一番の問題」(荒川会長)として、「『現所属長の推薦書』などの仕組みが必要」と指摘して、対応を求めている。加えて、東北における2008年度以降の219人の定員増(うち95人は地域枠)の定着実態を検証する重要性も指摘している。
同会議広報委員会委員長の森山寛氏は、東北薬科大学の計画について、地域定着の対策の不十分さを指摘されている点を踏まえて、「(指摘は、新設ありきでなく)『地域医療充実のために、(新設の必要性を)もう一度考え直してほしい』というところまで含んでいるとの認識」と踏み込み、「(定員増で)歯科医や法曹界と同じ轍を踏まないでほしい」と話した。
「勤務形態の偏在」解消求める声
医師偏在の解消については、会見出席者から様々な意見が出た。同会議相談役の岡村吉隆氏は、偏在の例として、出産や育児などで働けない期間のある女性医師やフリーター医師の「勤務形態の偏在」(森山氏)や、診療科偏在、介護系施設で働く医師の多さなどを挙げた。同会議副会長の甲能直幸氏は、医学部新設について、「非効率的。非常に金を使う」と切り捨てた。医師の必要数は定員増や女性医師の復職支援、外科系医師が現場に早く出るような教育制度の検討などのアイデアを示し、「(新設より)税金を使わすコストパフォーマンスが良い」とした。
現状の暫定的な医学部定員増についての指摘も出た。声明では、「期限切れの誠実な履行」を求めているが、荒川会長は、暫定的な定員増の期限が2017年度と2021年度に来ることを踏まえて、「医師不足が続いている地域は、暫定措置を外すこともできると思う」と話し、暫定的な定員増で、養成数が調整できるとの認識。和歌山県立医科大学理事長・学長 の岡村氏は、同大が暫定的な定員増を始める際の条件として、「定員増から10年後には定員を10人減らす」との約束であった点に触れて、「(定員削減を示しながら、一方で)なぜ医学部新設になるのか」と矛盾を指摘した。
岡村氏は、一部の「西日本に医師が多い」と指摘する声にも反論。和歌山県内の公的病院の勤務医について「全く足りない。寄付講座の話があっても、(派遣する)医師がいない」と理解を求めた。
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