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カジノ法案:論議本格化 

2014-10-19 10:31:52 | 政治・社会・経済問題

経済期待…治安は? 今国会成立は不透明


毎日新聞 2014年10月17日 東京朝刊

 カジノ解禁の是非を巡る論議がにわかに盛り上がっている。超党派の「国際観光産業振興議員連盟」は16日、先の通常国会で継続審議になった議員立法「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)について、日本人の入場に一定の制限を設ける修正案を決定した。安倍晋三首相が成長戦略の目玉の一つに挙げるIRだが、経済効果への期待と治安への不安が入り交じり、候補地の反応も分かれる。与党の公明党では慎重論が大勢を占め、今国会中の法案成立はなお見通せない。【宮島寛、高本耕太、久保聡】
 
「これから日本を支える産業は観光だ。一気呵成(いっきかせい)に法案成立を目指したい」。国会内で16日に開かれた議連総会で、会長を務める自民党の細田博之幹事長代行は声を張り上げた。総会には議員ら163人が出席した。
 IRはカジノとホテルや国際展示場などが一体化した施設。カジノを呼び水として国際イベントを誘致するなど相乗効果を狙う。議連が法案成立に躍起なのは、IRを「アベノミクス第4の矢」と位置付けているためだ。海外富裕層に人気のカジノは旅行者増や外貨獲得の有力手段とされ、2010年に解禁したシンガポールでは国外からの旅行者が1557万人(13年)と解禁前より5割以上増えた。
 東京五輪が開催される20年までに訪日外国人を年2000万人(現在約1000万人)にしたい政府にとって、シンガポールは魅力的な「成功例」だ。安倍首相は5月、同国のIR「マリーナ・ベイ・サンズ」を視察し、「イメージがだいぶ変わった」と感嘆。カジノを自ら試す場面こそなかったが、6月に改定した成長戦略にIRの検討を盛り込んだ。



 議連は総会で、東京五輪までに全国2、3カ所程度のIR整備を目指す方針を確認。大和総研は、横浜、大阪、沖縄に開設した場合、経済波及効果は計7・7兆円に上り、五輪開催(約3兆円)をしのぐという試算をはじく。
 ただ、カジノ解禁には、周辺の治安悪化や、資金洗浄(マネーロンダリング)を助長する恐れなど負の側面もつきまとう。競馬などの公営ギャンブルと違い、民営のカジノを刑法の賭博罪の対象外にすれば、景品交換所を介在させることで適法とみなしてきたパチンコ産業をどう扱うかという議論にも飛び火する可能性がある。
 カジノ法案はIR整備の大枠を定めただけで、細目は、施行後1年以内に政府が別の法律で決めることになる。刑法を改正する必要もあり「制度設計は難航必至」(内閣府幹部)だ。公明党が16日に党内で開いた会合では「ギャンブル施設は多いが、依存症対策の施設は少ない」など懸念の声が相次いだ。同党は世論の批判に配慮した議連の修正案への賛否は明らかにせず、当面、世論の動向や議論を見守る構えだ。
 自治体側にも温度差がある。橋下徹大阪市長がIRの誘致に積極的な半面、隣接する兵庫県の井戸敏三知事は14日の記者会見で「私はカジノ大反対だ。地域振興のために手段を選ばない姿勢が間違っている」と批判した。


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