利根輪太郎が取手競輪場の特別観覧席で自称・競輪車券師に出会ったのは、2度目の失業の時期だった。
看護師をしている妻が肝臓かんで亡くなって8か月が過ぎていた。
5月28日が妻の命日であったので、輪太郎は5-2-8の車券を買い続けていた。
その日に、5-2-8で的中した車券の配当は423倍。
1000円的中したので、42万3000円を輪太郎は払い戻した。
だが、輪太郎の特別観覧席の隣の席に座っていた60代と想われる白髪の男は1万円も買っていたので423万円も払い戻していたのだ。
地元の常陽銀行の帯付がかかった100万円の束が4つである。
「やりますね」と言いながら輪太郎は男に興味を覚えた。
「どこかで、以前会っていませんか?あなたは、取手の人ですか?」と男が輪太郎の顔を見詰めた。
「そうですが」と言いながら輪太郎も改めて男を見詰めた。
「私の記憶が確かであれば、伊東競輪場で会ったような気がしますね」
輪太郎の妻は伊豆の川奈の出身であり、妻が実家へ帰った時に何度か伊東競輪場へ行っていた。
最後に伊東競輪場へ行ったのは妻が余命半年と宣告された年であった。
それでも妻の美樹はそれから2年余、命を長らえたのだ。
看護師をしていた妻がなぜ、早期のうちにがんに気づかなかったのか?と輪太郎は悔やまれた。
そして医療・医学の限界も感じた。
妻は1年1回の定期検診を確り受けていたのだ。
一方、輪太郎はほとんど、健康診断を受けていなかった。
まだ、美樹は32歳の若さであった。
互に子どもを欲していたのに・・・
妻が亡くなってから悲嘆に暮れ、輪太郎は酒に溺れてしまった。
看護師をしている妻が肝臓かんで亡くなって8か月が過ぎていた。
5月28日が妻の命日であったので、輪太郎は5-2-8の車券を買い続けていた。
その日に、5-2-8で的中した車券の配当は423倍。
1000円的中したので、42万3000円を輪太郎は払い戻した。
だが、輪太郎の特別観覧席の隣の席に座っていた60代と想われる白髪の男は1万円も買っていたので423万円も払い戻していたのだ。
地元の常陽銀行の帯付がかかった100万円の束が4つである。
「やりますね」と言いながら輪太郎は男に興味を覚えた。
「どこかで、以前会っていませんか?あなたは、取手の人ですか?」と男が輪太郎の顔を見詰めた。
「そうですが」と言いながら輪太郎も改めて男を見詰めた。
「私の記憶が確かであれば、伊東競輪場で会ったような気がしますね」
輪太郎の妻は伊豆の川奈の出身であり、妻が実家へ帰った時に何度か伊東競輪場へ行っていた。
最後に伊東競輪場へ行ったのは妻が余命半年と宣告された年であった。
それでも妻の美樹はそれから2年余、命を長らえたのだ。
看護師をしていた妻がなぜ、早期のうちにがんに気づかなかったのか?と輪太郎は悔やまれた。
そして医療・医学の限界も感じた。
妻は1年1回の定期検診を確り受けていたのだ。
一方、輪太郎はほとんど、健康診断を受けていなかった。
まだ、美樹は32歳の若さであった。
互に子どもを欲していたのに・・・
妻が亡くなってから悲嘆に暮れ、輪太郎は酒に溺れてしまった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます