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末日聖徒イエスキリスト教会(モルモン教会)は潤沢な経済力があることで知られ、米政財界で影響力を行使していると言われる。教会は1959年以来収支について公表してこなかったためいろいろな憶測がなされ、教会が某々のために資金を投じていると伝えられると什分の一をそんなことに使ってよいのか、というようなことが取り沙汰される。

時折メディアが教会の資産について取り上げ、おおよそこれくらいではないかと推測に基づく記事を掲載することがある。そのような記事の主な例をリストアップしてみた。

I 新聞雑誌(オンライン記事を含む)
1 "Wikipedia, “Finances of the Church of Jesus Christ of Latter-day Saint.” Feb. 10, 2012 現在。 最新の情報はここで得られる。ニューズウィーク2011/6月号が純資産300億ドルと推測していることを紹介している。また、会計会社に毎年非利益勘定、利益勘定、教育関連勘定の監査をさせていると伝えている。なお、英国とカナダでは法が要求しているので財政を公表しているという。

2 Newsweek, “Mormons Rock! “ June 5, 2011

3 Time, “Mormons, Inc.,” Aug. 4, 1997 (Vol. 150, No. 5) 1996年の什分の一の収入を52億ドル(内49億は米)、教会所有の企業・事業への投資は少なくとも60億ドルとTime誌は見積もった。この教会の起業家的体質について初期に他から疎外され孤立した経験によるものと分析している。

4 Arizona Republic, “Mormon Inc. Finances and Faith,” 1991 6/30 – 7/3の4日間にわたり特集を組んだ。入手可能な一般的情報をもとに企業体を表の形でリストアップし、収支と資産額を推測した。年収は会員から43億ドル、企業群から4億ドルと推計した。これに対し教会は誇張されているとコメントした。モルモンフォーラム誌1992春季号73-75頁。

* 更に古いところでは (1) プレジデント(邦文)「荒地に栄える選民集団 モルモン教会」1964年6月号がある。中に「聖なる事業の収益力」の項がある。(“Mormonism: Rich, Vital, and Unique” – by Seymour Freedgood, Fortune, April 1964 の訳)
* (2) リーダーズ・ダイジェスト、「伸びゆくモルモン教」1967年4月号 (U.S.ニューズ・アンド・ワールド・リポートより要約)。短い言及。

II 書籍
1 “Mormon America,” by Richard and Joan Ostling, 1999

2 “Mormon Hierarchy: Extensions of Power,” Chapter 6 “Church Finances,” by D. Michael Quinn, 1997, 28 pp. 昔、教会幹部が各種の教会所有企業の役員を兼務したことを詳述。

3 “America’s Saints,” Chapter 4 “The Rise of the Mormon Managers: Economic Power in the Service of the Lord,” by John Gottlieb, Peter Wiley, 1984, 33 pp. マッケイ時代、副管長のヘンリー・D・モイルの放漫財政のため、教会が多額の負債をかかえたこと、それを後任のN・エルドン・タナーが修正、建て直した逸話などを扱っている。

4 「ザ・ブック・オブ・アメリカ」 最新アメリカ50州州別詳説 二ール・R・ピアス、ジェリー・ハグストローム共著、中屋健一監訳、ユタ州 聖徒たちの建てた州、実業之日本社、1984年。教会の財政上の運営はユタ経済を刺激するよりも活気を弱める可能性がある、という見方を紹介している。というのは個人の収入があまりにもたくさん教会の中に吸収されると、発展が鈍ったり、商店、ストアにまわる消費が減ったりするからというわけである。

[コメント] これほどの大きな組織になると什分の一だけの収入をとっても巨大な額にのぼる。それで賢い管理人であるためにはタレントの譬えではないが、地中に埋めて蓄えておく(箪笥預金にする)のはよい方法ではない。資産運用を行なうのは当然である。資金を有意義な事業に、あるいは富を生む企業に投じるのは、ひとつの社会的存在(entity)として自然な経済的営みと言えるのではないだろうか。

多額の資産を持つにいたった末日聖徒イエス・キリスト教会は、収支とも実態が多彩・複雑化しているが、少なくとも勘定は二種に分類されると考えてよいだろう。一つは税が免除される会員からの什分の一や他の献金であり、あと一つは教会が所有する企業群や事業からの収益で課税対象となるものである。実際にはほかに伝道・教育・広報・福祉・人道支援関連など数多くの勘定が複雑に関係し合い、単純なものではないであろう。詳細は比較的最近の米誌特集や英文Wikipediaを参照されることを薦める。

参考
本ブログ2011/05/26 モルモン教会の支援活動、MSN産経ニュースに
Wikipedia "Finances of the Church of Jesus Christ of Latter-day Saints"  
The Mormon Corporate Empire on latterdaycommentary.com
Mormons Rock in Newsweek June2011

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