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LDS教会におけるエロヒムとヤハウェ(エホバ)の位置づけ、いつから?

2022-01-19 23:06:31 | モルモン教関連

 末日聖徒はエロヒムが天父なる神であり、ヤハウェ(エホバ)は御子イエス・キリストを指すと受けとめている。しかし、その理解は初めから首尾一貫してそうであったわけではなく、20世紀の初め1916年に「天父と御子に関する大管長と十二使徒による教義的解説」を公的に発表して以来、それに従って説かれるようになったのである。ボイド・カークランドはそれまでの経緯を5つの段階に分けている。

 その五段階は次のとおりである。

1 ジョセフ・スミスは当初天父と御子を区分しないで、一方(ひとかた)の神が三方の姿で現れていたと三位一体の認識でいた。モルモン書も1835年前の教義と聖約の啓示、最初の示現(1832年)にそれが見られる。

2 1835年の「信仰講話」と1838年の最初の示現は天父と御子が別々の方であると強調するようになっている。天父は栄光と力に満ちた霊の存在で、御子は骨肉を有する方で御父の心と同じである。名前については、エロヒムもエホバも共に旧約の神で天父なる神である。

3 1838~1844年の間にジョセフ・スミスは神について、無限に連続する概念を展開した。アブラハム書で神々による創造(4:1)、キング・フォレットの説教ではこれらの神々が「頭(かしら)なる神」(天父の上位にある)のもとにあることとした。「エロヒム」という呼称は天父に、頭なる神に、そして複数の神々を称するのに用いられた。エホバはまだ御父を指すものとされ、イエスを指すものではなかった。

 

4 1854年の総大会や他の機会にブリガム・ヤングは、地が創造された後その業に携わったミカエルが地に降って、アダムとなった、そしてアダムは死後天界にもどってエロヒム、エホバの名でイスラエルを導いた、とアダム神の説を唱道した。

 

5 ブリガム・ヤングの死後世紀をまたぐまで、教会内で上記のような様々な立場の神概念が交錯し、争論や混乱が生じた。そこで一定の調和を実現し、外部からの批判を封じるため、教会の指導者たちは20世紀に入って慎重に教会の神学を構築し直した。その結果1916年に公的な発表を行なうに至った。声明は1915年に出版されたJ.E.タルメージの「基督・イエス」で、エホバはイエスであると確認されたことなどを踏まえて、整理され、タルメージが草稿を書き大管長会と十二使徒評議会に提出された。

 

 以上のような経緯を経て今日に至る。一つの宗教として整えられた教義のもとに信仰生活を送るのは、自然な一つの姿であるが、矛盾がなくなっているわけではない。旧約聖書が異なる神格者の名前を使用する資料(複数)からなっているからである。神学に、また状況に通じた教会員はそういった背景を承知した上で、相違にとらわれない大きな観点で臨むことを求められる。 

[旧約に見られる神の名前。6行目にエロヒム、下から2行目にヤハウェ。] 


典拠
・Boyd Kirkland, "Jehovah as the Father: The Development of the Mormon Jehovah Doctrine"  Sunstone, Vol. 9, No. 2 (Autumn, 1984)
・Boyd Kirkland, "Elohim and Jehovah in Mormonism and the Bible"  Dialogue, A Journal of Mormon Thought, Vol. 19, No. 1, Spring 1986

参考文献
・Melodie Moench, "The Christianizing of the Old Testament," Sunstone 5 (Nov.-Dec. 1980)
・山我哲雄「一神教の起源 - - 旧約聖書の『神』はどこから来たのか」筑摩書房、2013年 

 


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32 コメント

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ボイド・カークランドって (エニグマ)
2022-01-20 08:54:57
この人ですね?
 ↓
https://en.wikipedia.org/wiki/Boyd_Kirkland
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ボイド・ダグラス・カークランド(Boyd Douglas Kirkland、1950年11月4日 - 2011年1月27日)は、アメリカのテレビアニメーションディレクター。X-Men: Evolution』や『バットマン: アニメーション・シリーズ』などの作品で知られる。

カークランドはモルモン教の思想における神の性質について記事を発表している。末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師であったとき、カークランドは19世紀に表向き教えられ、1970年代に否定されたアダムと神の教義について混乱し、現在の教会の公式指導者に疑問を持つようになった。 教会指導者からの短い回答要請の後、カークランドはこの論争について独自の調査を続け、サンストーン誌, ダイアログ誌に記事を掲載する結果となった。
---------------------------

経歴が面白すぎます・・・
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ところで、最後の一文が気になります (エニグマ)
2022-01-20 09:21:33
>神学に、また状況に通じた教会員はそういった背景を承知した上で、相違にとらわれない大きな観点で臨むことを求められる。

これはどなたのアドバイスでしょうか?カークランドさん?NJさん?
命令しているように感じますが、具体的にどうして欲しいのか意味不明ですが・・・。

忖度して考えると、ようするにこういうことでしょうか?
根本的な教義が変更されているように見えても教会に反発を感じるな、こういうのは宗教ではよくあることだから気にするな、モルモンが真実の教会ではないなどと怒ってはいけない、それより教会の良いところに目を向けろ、またこうした知識は純朴にモルモンを信じている会員の前では絶対に口にしてはいけない・・・と。

もしそういう事であれば、これはジョセフ・スミスが多妻結婚をしていたことを秘密にしていた理由と同じ感覚が働いているのだと思いますねぇ。そういう事をやってるからモルモンから人が離れていくのだと思います。
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文章(特に末尾)は難しい (nJ)
2022-01-20 10:02:12
はい、この人物です。確認を有難うございます。もう故人なのですね。

最後の段落「以上の・・求められる」は、私の結びです。気持ちとしては、当惑していると言った感じで、仕方がない、間隔を置いて眺める、といったところです。

命令的な印象を与えるとか、批判,干渉するな、という気持ちはなく、自分に対する対処法を書いたような次第です。
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エロヒム&エホバ (オムナイ)
2022-01-20 11:47:20
数年前、NJさんが主催されていた別のフェースブック・グループでしたか、
イザヤ書のある箇所では「エホバ」が父なる神のように表現してあるが?という質問を見かけて、調べた事があります。

エロヒム=父なる神、エホバ=キリストというのは最初の示現以来の真理と思い込んでいた私ですが。。。

モルモン書にも三位一体的な記述がありますからね。

実は三位一体思想の方が真理と短絡するのではなく鷹揚に構えて聖典を読む事が吉ですかね。

https://www.fairlatterdaysaints.org/answers/Mormonism_and_the_nature_of_God/Elohim_and_Jehovah
・・・
エロヒムは古代の全能の神であり,わたしたちすべての父であり,エホバはその子であるイエス・キリストであるという確信は,

現代の聖句(D&C 110:1-4)に基づいており,聖書の釈義に基づいているわけではありません。

現代の預言者や使徒の教えはこの用法を強化する傾向があります。

例えば,ジョセフ・F・スミス大管長は,"エロヒムの霊の子供たちの中で,長子はエホバまたはイエス・キリストであり,他のすべての者はそれに続く者である "と教えています。[2]

末日聖徒イエス・キリスト教会では、天の父なる神とその独り子であるイエス・キリストを表すために、エロヒムとエホバという名称を使っていますが、
これは聖書を含め、これらの名称が常に古代に使われていたと主張するためのものではありません。

むしろ、これらの呼称は、明瞭さと正確さのために現代の教会で使われている命名規則なのです。

キリストは多くの意味で「父」として語られることがあるので、現代の聖徒たちは、神のペルソナのどの「役割」が議論されるかにかかわらず、
曖昧さを避けるためにこれらの呼称を使用しています。

この用語は20世紀以前には利便性と明瞭性のために標準化されていなかったので、読者は教会の初期の著作が、わずか数十年後に生じたこの慣習を常に反映していると期待しないように注意されたいのです。

同様に、聖書の著者が現代の慣行に従ったかのように読もうとするのは時代錯誤であり、混乱と誤読を招く恐れがある。
ーーーーーー
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Unknown (あじフライ)
2022-01-20 12:12:03
>この用語は20世紀以前には利便性と明瞭性のために標準化されていなかったので、読者は教会の初期の著作が、わずか数十年後に生じたこの慣習を常に反映していると期待しないように注意されたいのです。

ワロタ!
さすが護教サイト、良くまぁこう言う詭弁に満ちた言い回しを思い付くよなぁ、呆れつつ、感心しますわ

>聖書の著者が現代の慣行に従ったかのように読もうとするのは時代錯誤であり、混乱と誤読を招く恐れがある。

これはその通りだけど、そう言う混乱と誤読が広まっている原因はモルモン教会にあるのだけどねぇ・・・
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護教サイト (エニグマ)
2022-01-20 12:57:42
>>この用語は20世紀以前には利便性と明瞭性のために標準化されていなかったので、読者は教会の初期の著作が、わずか数十年後に生じたこの慣習を常に反映していると期待しないように注意されたいのです。
>
>ワロタ!
>さすが護教サイト、良くまぁこう言う詭弁に満ちた言い回しを思い付くよなぁ、呆れつつ、感心しますわ

この FairMormon とか FairLatterDaySaints というサイトのこういう言い回しが私はすごく嫌いですね。

人を小馬鹿にしてごまかしているような悪意を感じます。これで本当に教会を守っている気になっているんでしょうかねぇ・・・
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問題の発端は ()
2022-01-20 13:54:56
イエスがエホバなのか?って事ですが。


私の考えでは、イエスは今から2000年ほど前に存在した宗教者で、後にその教えを信じ広めた人たちが、イエスをキリストだと言い、イエスはいつの間にか信仰者の間で「イエス=キリスト」になった。

それが世に広まり、「イエス=キリスト」と言う教義が定着し、一般的に唱えられるようになった。

さらに、イエスを神の子として崇め、神と同等の存在にまでしてしまった。

イエスが神なら、旧約の時代から存在すべきだとして、「イエスが旧約の神エホバで有る」との解釈が生まれ、やがて教義として広まった。


つまり、すべて人間の信仰と想像力が作りがした話で有り、教義ですから、イエスがエホバなのかエロヒムなのかって論議はまったく意味がない。

また、1000年も経てば話も教義も変ってしまう。

目糞と鼻くその相違を論じる方がまだ価値が有ると思う。
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そりゃそうなりますよねぇ (エニグマ)
2022-01-20 14:29:01
豚さん

>また、1000年も経てば話も教義も変ってしまう。

いやぁモルモンの場合、10年くらいで教義が変わってませんか?

>つまり、すべて人間の信仰と想像力が作りがした話で有り、教義ですから、イエスがエホバなのかエロヒムなのかって論議はまったく意味がない。

まぁね、自由主義神学も行きつくところまで行ってしまうと「そもそもイエスはラビの一人としてユダヤ教の解釈論を示したに過ぎない、自分が救い主などとは言ってない」ってなるんでしょうね。つまりキリスト教自体の否定になっちゃいます。もっとも、そこに行きつくまで追求したらそれはそれで立派なものだと思いますが。

それで、一つ私にモルモン教義の問題提起をさせていただくなら、この教会が真理と言ってる事柄は文字通りの意味での「永遠に変わらぬ真理」ではないってことです。教義も変化しているし、神概念も変化してる、最初の示現の内容も変化してる。それを一生懸命に真実だ、変化していないのだ、と言い訳しているのがモルモン教会。

でもね、それでいいじゃないの。もう認めましょうよ、その程度の教義なんだってこと。あんまり必死になって戒めだ、救いだ、活動だってやってるとしんどいだけで馬鹿を見ますよ、って思うのです。
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ココまで来たら ()
2022-01-20 15:53:49
>まぁね、自由主義神学も行きつくところまで行ってしまうと・・・

自由主義神学が何者か走りませんが、モルモン生活も半世紀、もうここまで来たら、開き直るしかないでしょ?

つまり、正直に事実を事実として認めたうえで、どんな信仰が残るのか?って言うとこで勝負をするしかないんですよね。

それで自分の信仰が消えるなら、その程度の信仰だったって事です。

事実でも無い事を、自分に事実だと思いこませないと継続できない様な信仰なら、そんな信仰は何の価値もないって思います。

「水は高いところから低いところに流れる」と言う様な事実の積み重ねの世界観の中に存在し得る信仰ってものも有ると思います。

たとえイエスがただの人間であっても、その中に真理と思える言葉が有れば、私はその世界感の中で信仰を持つことが出来ると思います。

はじめに言葉が有ったんですから。
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オーマイゴッド!信じられない!!! ()
2022-01-20 15:56:31
>自由主義神学が何者か走りませんが

こんな変換ミスするなんて・・・信じられない!!


自由主義神学が何者かは知りませんが

ですよね
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