博士の目からは、もう涙は出ていなかった。その代わりに、腕を組んで考え深げな表情をしている。
「もう一度、みんなに聞きたいんだが、」
「何でしょうか。」
「この気持ちを、一言で言い表すとしたら、どんな言葉が浮かんでくるかね。」
「さあ、言葉ですか。」ぴょんたが考え込んだ。
「考えてはだめだよ。瞬間に思いつく言葉でなけりゃだめなんだ。」
「ゆりかごでヤすな。」
. . . 本文を読む
スケール号はどこまでも広がっている暗黒星雲の中にはいって行った。光はどこからもやって来なかった。真っ暗な闇がスケール号を包んだ。ブラックホールに落ちた時とは違って、周りに星らしきものは見えない。かといって、原子の宇宙のように何もない闇ではなかった。ゆっくりとしたガスの流れがその中心に向かって流れている。世界に大きな変化はなく、すべてがゆったりと落ち着いている。
「ハハ~ハハ~ハハ~ハハ~ハハハ . . . 本文を読む
八、ピンクの銀河
長老シリウスが指し示した方向の、はるか彼方の宇宙にピンクの銀河がある。スケール号は真っすぐ、ピンクの銀河に向かって、宇宙を飛び続けている。
ピンクの銀河がどれだけ遠いのか誰も分からない、しかし何としてもピンクの銀河にめぐり会わなければならないのだ。それが神ひと様に会うための道だと、長老シリウスは言ったのだった。
「いつに . . . 本文を読む
スケール号は原子よりも小さな素粒子より、もっと小さな体になっている。そう、スケール号は今、素粒子の上に着陸できるほどの大きさなのだ。
そこから見る 原子は宇宙に浮かぶ太陽のようだ。自分の大きさを変えることで同じ物でも全くちがった世界に見える。この不思議な出来事もスケール号の乗組員達にはもう慣れっこになった。
その太陽原子が、次々と揺らめいて素粒子を手放し、空は、好き勝手に飛び交う素 . . . 本文を読む
七、ブラックホールからの脱出
静かだった原子の空間に激しい変化が起こったのは、食事を終えてくつろごうとしたその時だった。
原子のひしめく空間が突然激しく動き始めたのだ。原子はまるで波打つように揺れ動き、それぞれが勝手気ままに動き出した。光の点滅が全天で花火のように始まった。
手をつないで原子をつくっていた素粒子たちが一斉に手をはな . . . 本文を読む