ガレージの攻防

スペインの駐車場はどこも恐ろしく狭い。
我が家のガレージもかなり。
そのうえ余計なところに柱があってこれまた車の出し入れに邪魔なことこのうえない。

私の愛車は小さなトヨタ・ヤリス（日本ではヴィッツ）だが、結構富裕層の住むこのあたりではみな大層大きな車に乗っていらっしゃる。
ベンツ、BMW、アウディ、レクサス・・・。
よくもよくもこんな狭い駐車場にそんなデカい車を停めようという気になるものだと感心する。

我が家のスペースの隣は同じ棟の気のいいおばちゃんだ。
時々しか顔を合わせることはないが、会えばにこにこ話しかけてくれる。
でも駐車の技術はかなりあやしい。
かろうじて白線内ではあってもこちら側にぐいぐいプレッシャーをかけてくる。
日によってはドアを開け閉めするのに苦労するほどだ。



ある日いつものように車で出かけようとするとドアに何か紙が挟まっている。
何かと思って見ると、「Por favor, no den golpes a mi puerta tracera.（お願い、ドアにゴッツンしないで） 」と書いてある。
何のこと？とよくよく見てみると、なるほど～、これか～と納得。
おばちゃんの車の後部座席ドアにブーメラン型のキズがいくつかついている。
いや～ん、どうしよう。
明らかにウチの子供たちの仕業だ。
隣との距離があまりに狭いのでドアを明けるときに勢い余って「ゴン！」と行っちゃってたのだ。
ゴシゴシ、なんて布でこすってみたけど消えるはずもなく・・・。
これは塗装代を払わねばならないのだろうか。

同じ棟だということは知っているが部屋番号がわからない。
おばちゃんのメモに返事を書くかたちで「ごめんなさい、以後気をつけます。」と書き電話番号を添えておばちゃんの車のドアに挟んでおいた。
塗装代をくれということなら電話がかかってくるだろう。

電話はかかってこなかった。
バッタリエレベーターで出くわすということもなかった。
許してもらえたと解釈してよいのかな？うん。

おばちゃんの車を意識して、それ以来車庫入れには気を遣った。
なるべくおばちゃんから離れるように停めたり、ドアの開け閉めのたびに子供たちに一言「気をつけて」と声をかけるようにしたり。

迂闊だったと気がついたのはしばらくたってから。
反対側の隣のことを忘れていた・・・・！
おばちゃんを避けるあまり逆側に寄ってしまって今度はそっちの車にブーメラン型のキズが・・・・！
うわっっっ！！・・・ええぇーー？！
愕然として佇むうちになんと自分の車のドアにもブーメラン型のキズ数本発見！
・・・やられた。