リスボンから西へ30km、夏の避暑地として王侯貴族に愛されてきたシントラ(Sintra)という小さな町がある。
その昔、詩人バイロンに「エデンの園」とうたわれたという。
世界遺産の「自然と文化遺産」に登録されているとあっては、こりゃ行かねばなるまい、と出かけてみた。
不思議な町だった。
朝の雨がそう思わせたのかもしれない。
山あいに王宮や貴族のお屋敷が建ち、山の頂上には、一瞬「万里の長城か!?」とビックリするような「モーロ人の城壁」がそびえる。
その城壁が霧につつまれてモヤモヤ~とかすんで、いかにもオソロシげな雰囲気。
雨が降ってたんじゃちょっと山道はムリか・・・と思いきや、みるみるうちにすっきり晴れてきた。
・・・高いところは嫌いじゃない。
やっぱ登るしかない、あの城壁に。
標高わずか450m。
しかも城壁の始まり部分まで車で行ったのにもかかわらず、石段の険しさにヒィヒィ言いながら登る。
かなりな強風に吹き飛ばされそうで、まるで這うようにして一歩一歩登ってゆく。
息子は高いところが恐い。
「身内が高いところにいるのを見る」のも恐い。
いやがるものを、無理やり連れてきたが、この強い風である。
はじめのうちは壁にはりつくようにして、ギャーギャー騒ぎながらヨロヨロとついてきていたが、途中で恐怖のあまり気でも狂ったか、ものすごい勢いで登り始めた。
その姿はあっというまに彼方に消えた。
待ちくたびれたゼ、的な余裕を見せ、一番高いところで私たちを迎える彼。
やはり若いから。
なんと一番ビリでヨレヨレだったのはこの私である。
ところで今さらな疑問だけど、モーロ人って何もの?
調べてみると、モーロ人(ムーア人)とは8世紀初め以降イベリア半島に侵入した北アフリカのイスラム教徒のことだそうだ。
この城壁もその頃に築かれたものらしい。
多分世界史をちゃんと勉強していればなんてことのない問題だったのだ。
お恥ずかしい。