さくらんひめ東文章

指折って駄句をひねって夜が明けて

中村吉右衛門定本句集

2014年09月03日 | 歌舞伎関連の本



三宅周太郎編「中村吉右衛門定本句集」


日記や写真入りの句集で、貴重な舞台写真などが興味深い。


昭和6年からの句が収められている。


高浜虚子は、序で



たとふれば真萩の露のそれなりし  虚子



「氏は多作ではなかったが、心から俳句を愛した。


氏の句は純粋率直、なんの求めるところもなく、


何の衒ふところもなかった。


氏は最も俳句を善解した人であると思ふ。」 とある。




秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2014年09月02日 | いざ銀座歌舞伎座




行きも帰りも土砂降りの中、初日の仁左衛門丈・千之助丈の「連獅子」拝見するため夜の部へ。


「連獅子」


3年前はまだあどけなくてお背もお祖父さまの半分ぐらいだった千之助丈が


もうすっかり青年の面ざしでご立派なのに感動した。


そして前半の狂言師左近は、仁左衛門丈が孝夫としての最後の「連獅子」で共演された孝太郎丈に良く似ておられた。


仁左衛門丈の右近・親獅子の精がとても情愛と品格に溢れていて、


それを受けて千之助丈が若獅子らしい勢いがあって素晴らしかった。


宗論の又五郎丈・錦之助丈も良かった。







「絵本太功記」尼ヶ崎閑居の場


染五郎丈の十次郎と米吉丈の初菊がなんとも初々しく綺麗なので


後半の二人の悲劇がより一層際立った。


竹藪から出てきた吉右衛門丈の光秀は怖いくらいオーラがあって、


間違えて母を竹槍で刺してしまった驚きから大おとし、後半の幕切れまで


竹本の三味線にのってその心情を重厚にみせてくれる。


魁春丈の操のくどきも泣かせてくれる。


吉右衛門丈の光秀に、又五郎丈の正清が豪快で、歌六丈の久吉が立派なので、実にいい幕切れであった。



「曾我綉侠御所染 御所五郎蔵」


傾城皐月の芝雀丈と傾城逢州の高麗蔵丈が良かった。


番頭新造千代菊の歌江丈はいぶし銀。






秀山は初代吉右衛門の俳号であるが、「ホトトギス」の同人としても知られた初世は、


句作は「吉右衛門」の名でしたと筋書の「光秀と法界坊の間 -上村以和於」にあるが、


藤巻透著「歌舞伎の百句」によると、


高浜虚子が


「吉右衛門と言う名は、貴方が初代とうかがっている。


なまじ名家の何代目と言われぬだけ、いさぎよく、立派だから、


それを俳句の名にも用いなさい。・・・・」



ということらしい。




昭和27年11月3日、文化勲章を拝受せし時に、


菊を前恭くも思はるる    



こんな句も作られておられます。


秋の蚊を追へぬ形の仁木かな  吉右衛門