ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

光で冷却するナノ冷蔵庫

2012-03-30 | 報道/ニュース

以前電圧を加えることによって冷却出来るナノ粒子について述べたことがある(11/12参照)。最近のアメリカの物理専門誌に、光を当てることによってナノ粒子を冷却出来るという論文が掲載された。ナノ粒子の中には低温でないとその機能を発揮出来ないものがある。実現すればいろいろな使い道があろう。まだ理論計算の段階であるが、その原理が面白いので紹介しておこう。
http://physicsworld.com/cws/article/news/49153

図のように、高温側と低温側の金属ナノ粒子にそれぞれ量子ドットA、Bをくっつける。量子ドットAとBは互いに接触させておく。金属では、伝導帯の途中までしか電子が詰まっていない(9/25参照)。多数の電子が熱エネルギーをもらって伝導帯の電子が詰まっていない部分へ励起される。電子が励起されると、電子が満ちていた部分に正孔が生じる。今図に示すように熱によって励起された一対の電子正孔に着目しよう。電子は量子ドットBの伝導帯の底へ、正孔は量子ドットBの価電子帯の頂上へ移る。次に、光によって(赤い矢印)、電子を量子ドットBの伝導帯から量子ドットAの伝導帯へ、正孔を量子ドットBの価電子帯から量子ドットAの価電子帯へ移す。量子ドットAの禁止帯の幅を量子ドットBの禁止帯の幅より大きくしておくと、電子正孔対が高温側の金属ナノ粒子では低温側の金属ナノ粒子に比べて高いエネルギーをもつことになる。この過程によって、低温側金属の電子正孔対が消滅し、すなわち冷却され、高温側金属が加熱されたことになる。

                              

論文には理論計算がなされている。いろいろな困難があろうが実現されると面白い。ナノ粒子でなければ達成出来ない冷蔵庫である。