ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

ナノテクノロジーと癌:現状と将来

2012-03-15 | 報道/ニュース

カリフォルニア州に2000年に設立されたKalvi財団がある。その設立の目的は、科学の人類に対する貢献の推進と科学者ならびにその研究活動のパブリック理解を深めることにあるという。このKalvi財団が最近発表したレポート「ナノテクノロジーで癌と戦う」が興味を引いた。これは4人の先駆的専門家とのパネルディスカッションのレポートである。
http://www.kavlifoundation.org/science-spotlights/nanoscience-fighting-cancer-nanotechnology

レポートは次の文章で始まる。「患者から採取した1滴の血液中に100万種類もの分子を通すことによって、特定の癌の指標となる分子を見つけることを想像してみよう。また、毒性のある薬剤が癌細胞の中に到達して初めて放出する薬剤運搬法や、癌治療が有効だったかどうかを数日のうちに判断出来る分子やたんぱく質集合体を思い描いて見よう。」(1/27参照)。4人の専門家ともにナノテクノロジーが癌治療に革命的な変化をもたらすものと考え、技術開発に努力しているようだ。

司会者が「アメリカ食品医薬品局の承認を得て治験を開始するにはどのようなことをする必要があるのか」と質問した。これに対して専門家の一人、前アメリカ国立がん研究所所長は、治験認可を得るためにいろいろな努力を重ねている段階であると説明した。ナノ粒子が肝臓に蓄積するのを防ぐこと、ナノ粒子に毒性がないことを証明することなどの問題には解決策が得られているようだ。すでに治験前のデータが取得されつつある。他の専門家によると、ナノ治療の副作用は従来の治療法の副作用に比べてはるかに少なく、また新しい副作用を起こしていないとのことだ。

さらに他の専門家は言う。「ナノテクノロジーは驚くべき新しいツールだ。新しい世界を眺める目を我々に与えているように思われる。これまで得られた証拠から判断すると、注意深く技術開発すれば、得られる御利益は大きい。」

新技術には多くの場合危険性を伴う。毒性の高い元素が多くのエレクトロニクス機器や自動車に使用されている。原子力産業を含めて(3/12参照)、公害を起こさないよう技術開発すること、これが科学者・技術者の責任であろう。