日本語言語文化における主体性の研究 はじめに
全体の構成
0 はじめに
01
本研究は、日本語の文脈の中で<主体性>という用語を再確認し、日本言語文化にあって、<主体性>がいかに言説化されているかを考察する。
本研究は、
(1)日本語学・言語学の面から<subject=主語>、<subjectivity=主観性・主語性>、
(2)日本語言語文化の面から<subject=主体・主観>、<subjectivity=主体性>という両面を見ていこうとするものである。
インドヨーロッパ語(以下、印欧語と略す)を中心とする平均的ヨーロッパ標準言語(
Standard Average European, SAE」(以下、西欧語と略す)を使用する側からも<主体・客体>について、従来とは異なる枠組みのなかで捉えていこうとする考え方が提出されてきているという面を重視しつつ、日本語言語文化に表現された<主体性>を考察していくつもりである。
(3)主体subjectと客体objectとの関係を考察する。主体から客体への働きかけの在り方として<他動性>というキーワードをとりあげる。主体から客体への<他動性>が強く働く動詞から<他動性>の弱い動詞、主体と客体が対立することなく、動詞が状態を表し、自動詞に近い再帰的な他動詞文まで見通す。
02 本研究の目的
日本語の中に、主体性はどのように表現されているのか、文の統語構造と、表現された言語文化の両面を統合する形で日本語の主体性を考察していくことが、本研究の目的である。
これまで多くの日本人論日本語論の中で、「日本人は主体性の欠如した民族」「集団主義を好み、個人が確立していない」「主語を明確にして発言しない日本語は、責任の所在を曖昧にしている言語である」などの言説が流布してきた。「一人だけ周囲と異なる行動をとるのを好まず、周囲と異なる意見を持っても、異議申し立てをしない」「流行に乗りやすく、他の人にたやすく同調する」などと言われてきた日本語を母語とする人々の築き上げてきた社会。ほんとうに日本語は<主体性>のない言語であり、日本語を原因として日本人は主体性を発揮することの少ない人々なのだろうか。
日本語母語話者が自己の知覚感情行為を表現し、聞き手がそれを受け止めるとき、話し手聞き手はどのような主体性を持って応答を成立させているのか、日本語学から日本語言語文化の中からそれを探っていくことを本研究の目的としたい。
筆者が従事している日本語教育において、「日本語の主語」「日本語が表現している主体の理解」について、統一的標準的な教育方法は提出されておらず、出版されている教科書類、教師用文法指導書などにおいても、執筆者が拠って立つ文法論の違いにより、日本語学習者への説明も異なってくる、というのが現状である。日本語学習者への日本語理解のアプローチを探ることが、本研究の二つ目の目的である。
03 研究の歴史と現況
日本語言語文化における<主体性>の研究は、これまでどのようになされてきたか概観する。
日本語学からのアプローチは、日本語の<主語>の研究、<主格>の研究というような統語論からの研究から多くの成果が上がっている。一方、哲学や社会学から考察した<主体性>論や日本人論としてまとめられた中でも主体性が論じられてきた。subjectがそれぞれの分野で<主語><主体><主観>などに訳された結果、subjectivityという語の受け止め方も<主語性><主体性><主観性>と別れ、言語学から論じられる<主体性>と、哲学で論じられる<主観性>では、異なる意味を持つようになっている。
日本語を言語学日本語学の面と、言語文化面の両面を見渡す形での<主体性>考察は、行われてこなかったというのが現状である。2010年3月に発行された廣瀬幸生・長谷川葉子『日本語から見た日本人 主体性の言語学』は、「日本語」と「主体性」を正面から取り上げた書であり、廣瀬・長谷川の両者の共同研究により、英語との対照研究を中心に述べられているが、具体的な作品を分析しての論考はなされていない。
本論は、留学生日本語教育の現場から、作品読解や文章表現を通して得られた知見をもとに、具体的な主体理解を実践し、日本語の<主体性>とは、どのように作品に表れているのかを日本語学習者にも理解が及ぶよう、分析していく。
04 本研究の構成
第1章は、主体と客体を日本語統語の面から考察する。第1節で主体、主語、主題などの語を確認し、第2節では日本語の中の主体がどのように表現される格表示の面から分析する。
第2章は、主体、主体性の意味を考え、現代日本語言語文化の中に表現されている主体、主体性について考察する。具体的な作品分析として『富嶽百景』を取り上げ、作品分析を行いながら、表現主体の主観と主体性をさぐる。また、『夢の痂』を取り上げて、日本人の日本語と主体に関する意識を分析する。
第3章は、日本語教育の立場から<主体>の理解と教育について考察する。
05 本研究の方法と意義
本研究は、文法的な分析から文学理解に至るまで包括的に<主体>を追求するものであり、日本語学の成果と文学研究をつなぐものとして、日本語言語文化の幅広い理解へを日本語学習者や日本学研究者に寄与することをめざしている。
従来の日本語学研究及び、認知言語学的なとらえ方を加え、日本語文を分析していく。
<注>
本論中、「*」がマークされている文は、日本語として非文であることを示す。
06 本研究の構成
第1章 <主体>
1 <主体>と<客体>
1.1 認識の<主体>
1.2 日本語文法から見た<主体>と<主語><主題>
1.2.1 類型論から見た日本語の<主語>
1.2.2 近代西洋文法の主語
1.2.3 翻訳語としてのsubject
1.2.3.1 subjectの訳語
1.2.3.2 Subjektivitatの受容
1.2.4 主題優先言語と主語優先言語
1.2.5 西洋語の<主語>
1.2.6 西洋語の<主語>
1.3 日本語の<主題>と<題述>
1.3.1 ロドリゲスの「Va」
1.3.2 富士谷成章の「は」
1.3.3 松下大三郎「題目態」
1.3.4 三上章「題目の提示」
1.3.5 佐治圭三「顕題と陰題」
1.3.6 「ハ」に表れる<主体>
1.4 日本語の<主語>
1.4.1 日本の<主語>肯定論否定論
1.4.2 鈴木重幸の主語
1.4.3 橋本進吉の主語
1.4.4 竹林一志の主部
1.5 名詞の意味役割<主格>
1.5.1 主格
1.5.2 <名詞+格>の意味
1.5.3 動詞述語の<動作主><経験主><状態主>
1.5.4 動作主体
1.5.5 動作主体・行為主体・agent
1.6 第1節のまとめ
2 <主体>と<客体>の関係
2.1 日本語の自動詞文と他動詞文
2.1.2 他動詞の限界性と他動詞文
2.1.3 自動詞文における主体の背景化
2.2 第2節のまとめ
3 再帰的他動詞構文の動詞分類
3.1 再帰的他動詞構文の主体と客体
3.1.1 再帰的他動詞構文の動詞カテゴリー
3.1.2 動作の引き起こし手
3.2 第3節のまとめ
4 授動詞文の動作主体
4.1 授動詞文<動作主体>のマーカー「ニ」「ニヨッテ」
4.2 授動詞文の<主体>と<受益者>
4.3 日本語教育における授受文
4.4 話者の視点と表現意図
4.5 「のために」
4.6 意志を表わす「~てやる」
4.7 受益者の格マーク
4.8 受益者格を新たに付け加える場合
4.8.1 物の授受、移動がないとき
4.8.2 物の授受・移動がある場合
4.9 「に格」の補語が存在する動詞文
4.10 「に格」以外のとき
4.11 受益者が「の格」で表わされるとき
4.12 第4節のまとめ
4.13 補説-直接受身文の動作主体
4.14 他動詞と自動詞の主体
第2章 日本語言語文化における<主体性>
5 はじめに
5.1 辞書に記載されている<主体><主体性>の語義
5.1.1 辞書搭載の<主体>語義
5.1.2 辞書搭載の<主体性>語義
5.2 近代社会の<主体>と近代以後における<主体>概念
5.2.1 「行為論からみた言語」における<主体>
5.2.2 日本語の<主体>の立脚点
5.3 日本語言語文化における<主体性>の確認
5.3.1 時枝誠記の<主体性>
5.3.2 森山卓郎の<主体性>
5.3.2.1 森山卓郎の問題点
5.3.3 廣瀬幸生の<主体性>
5.3.3.1 廣瀬2010の問題点
5.4 本論で用いる<主体>、<主体性>
5.5 本論での<主体性>
6 はじめに
6.1 日本語・日本人と主体性
6.2 <主体性>の背景
6.2.1 近代社会における<主体性>
6.2.2 subjectivityの語義再確認
6.3 哲学の<主体性>
6.3.1 フーコーの<主体化>
6.3.2 藤野寛の<主体性>
6..4 文学評論における<主体性>
6.4.1 ガニエの<主体性>
6.4.2 カラーの<主体性>
6.5 言語学における<主体性>
6.5.1 バンヴェニストの<主体性>
6.5.2 ジョン・ライオンズJohn Lyonsの<主体性>
6.5.3 ラネカーの<主体性>
6.6 日本語表現の<主体性>
6.6.1 池上1981の「状態表現」の問題点
7 太宰治『富岳百景』の叙述分析
7.1 はじめに
7.2 太宰治の『富嶽百景』
7.3 日本言語文化における<主体性>概念
7.3.1 「私小説」にみる<主体性>―太宰の文章観から
7.4 『富嶽百景』文体分析
7.4.1 意志動詞文の数/文の数
7.4.2 『富嶽百景』文の主観性
7.4.3 述語の分析―動詞述語「タ形」と「ル形」
7.4.4 指示語に表れた視点
7.4.5 待遇表現
7.4.6 授受動詞
7.4.7 受身文(受動文)
7.4.8 動作主体からの感情表出・評価
7.4.9 叙述分析まとめ
7.5 おわりに
8. 『夢の痂』にみる日本人の文法意識と<主体性>
8.1 はじめに
8.1.1 東京裁判三部作
8.1.2 夢の痂・梗概
8.1.3『夢の痂』の作品テーマ
8.2 井上ひさしの日本語文法観
8.2.1 絹子の国文法観
8.2.2.1 主題と主語
8.2.2.2コピュラ文(名詞措定文)
8.2.3 主語の非明示(主語なし文)
8.2.4 自動詞文と状況変化主体文
8.2.5 井上ひさしの文法認識
8.3 比喩としての「主語」
8.4 主体と主語
8.5 行為主体と責任
8.6 おわりに
第3章 日本語教育の実際と<主体性>
9 非日本語母語話者・日本語学習者にとっての日本語の主語(明示されない<主語>)
9.1 主語の見つけ方
9.2 非日本語母語話者の読解における問題点
9.3 第6節のまとめ
第4章 まとめ
10 現代日本語言語文化における主体性
参考文献一覧
全体の構成
0 はじめに
01
本研究は、日本語の文脈の中で<主体性>という用語を再確認し、日本言語文化にあって、<主体性>がいかに言説化されているかを考察する。
本研究は、
(1)日本語学・言語学の面から<subject=主語>、<subjectivity=主観性・主語性>、
(2)日本語言語文化の面から<subject=主体・主観>、<subjectivity=主体性>という両面を見ていこうとするものである。
インドヨーロッパ語(以下、印欧語と略す)を中心とする平均的ヨーロッパ標準言語(
Standard Average European, SAE」(以下、西欧語と略す)を使用する側からも<主体・客体>について、従来とは異なる枠組みのなかで捉えていこうとする考え方が提出されてきているという面を重視しつつ、日本語言語文化に表現された<主体性>を考察していくつもりである。
(3)主体subjectと客体objectとの関係を考察する。主体から客体への働きかけの在り方として<他動性>というキーワードをとりあげる。主体から客体への<他動性>が強く働く動詞から<他動性>の弱い動詞、主体と客体が対立することなく、動詞が状態を表し、自動詞に近い再帰的な他動詞文まで見通す。
02 本研究の目的
日本語の中に、主体性はどのように表現されているのか、文の統語構造と、表現された言語文化の両面を統合する形で日本語の主体性を考察していくことが、本研究の目的である。
これまで多くの日本人論日本語論の中で、「日本人は主体性の欠如した民族」「集団主義を好み、個人が確立していない」「主語を明確にして発言しない日本語は、責任の所在を曖昧にしている言語である」などの言説が流布してきた。「一人だけ周囲と異なる行動をとるのを好まず、周囲と異なる意見を持っても、異議申し立てをしない」「流行に乗りやすく、他の人にたやすく同調する」などと言われてきた日本語を母語とする人々の築き上げてきた社会。ほんとうに日本語は<主体性>のない言語であり、日本語を原因として日本人は主体性を発揮することの少ない人々なのだろうか。
日本語母語話者が自己の知覚感情行為を表現し、聞き手がそれを受け止めるとき、話し手聞き手はどのような主体性を持って応答を成立させているのか、日本語学から日本語言語文化の中からそれを探っていくことを本研究の目的としたい。
筆者が従事している日本語教育において、「日本語の主語」「日本語が表現している主体の理解」について、統一的標準的な教育方法は提出されておらず、出版されている教科書類、教師用文法指導書などにおいても、執筆者が拠って立つ文法論の違いにより、日本語学習者への説明も異なってくる、というのが現状である。日本語学習者への日本語理解のアプローチを探ることが、本研究の二つ目の目的である。
03 研究の歴史と現況
日本語言語文化における<主体性>の研究は、これまでどのようになされてきたか概観する。
日本語学からのアプローチは、日本語の<主語>の研究、<主格>の研究というような統語論からの研究から多くの成果が上がっている。一方、哲学や社会学から考察した<主体性>論や日本人論としてまとめられた中でも主体性が論じられてきた。subjectがそれぞれの分野で<主語><主体><主観>などに訳された結果、subjectivityという語の受け止め方も<主語性><主体性><主観性>と別れ、言語学から論じられる<主体性>と、哲学で論じられる<主観性>では、異なる意味を持つようになっている。
日本語を言語学日本語学の面と、言語文化面の両面を見渡す形での<主体性>考察は、行われてこなかったというのが現状である。2010年3月に発行された廣瀬幸生・長谷川葉子『日本語から見た日本人 主体性の言語学』は、「日本語」と「主体性」を正面から取り上げた書であり、廣瀬・長谷川の両者の共同研究により、英語との対照研究を中心に述べられているが、具体的な作品を分析しての論考はなされていない。
本論は、留学生日本語教育の現場から、作品読解や文章表現を通して得られた知見をもとに、具体的な主体理解を実践し、日本語の<主体性>とは、どのように作品に表れているのかを日本語学習者にも理解が及ぶよう、分析していく。
04 本研究の構成
第1章は、主体と客体を日本語統語の面から考察する。第1節で主体、主語、主題などの語を確認し、第2節では日本語の中の主体がどのように表現される格表示の面から分析する。
第2章は、主体、主体性の意味を考え、現代日本語言語文化の中に表現されている主体、主体性について考察する。具体的な作品分析として『富嶽百景』を取り上げ、作品分析を行いながら、表現主体の主観と主体性をさぐる。また、『夢の痂』を取り上げて、日本人の日本語と主体に関する意識を分析する。
第3章は、日本語教育の立場から<主体>の理解と教育について考察する。
05 本研究の方法と意義
本研究は、文法的な分析から文学理解に至るまで包括的に<主体>を追求するものであり、日本語学の成果と文学研究をつなぐものとして、日本語言語文化の幅広い理解へを日本語学習者や日本学研究者に寄与することをめざしている。
従来の日本語学研究及び、認知言語学的なとらえ方を加え、日本語文を分析していく。
<注>
本論中、「*」がマークされている文は、日本語として非文であることを示す。
06 本研究の構成
第1章 <主体>
1 <主体>と<客体>
1.1 認識の<主体>
1.2 日本語文法から見た<主体>と<主語><主題>
1.2.1 類型論から見た日本語の<主語>
1.2.2 近代西洋文法の主語
1.2.3 翻訳語としてのsubject
1.2.3.1 subjectの訳語
1.2.3.2 Subjektivitatの受容
1.2.4 主題優先言語と主語優先言語
1.2.5 西洋語の<主語>
1.2.6 西洋語の<主語>
1.3 日本語の<主題>と<題述>
1.3.1 ロドリゲスの「Va」
1.3.2 富士谷成章の「は」
1.3.3 松下大三郎「題目態」
1.3.4 三上章「題目の提示」
1.3.5 佐治圭三「顕題と陰題」
1.3.6 「ハ」に表れる<主体>
1.4 日本語の<主語>
1.4.1 日本の<主語>肯定論否定論
1.4.2 鈴木重幸の主語
1.4.3 橋本進吉の主語
1.4.4 竹林一志の主部
1.5 名詞の意味役割<主格>
1.5.1 主格
1.5.2 <名詞+格>の意味
1.5.3 動詞述語の<動作主><経験主><状態主>
1.5.4 動作主体
1.5.5 動作主体・行為主体・agent
1.6 第1節のまとめ
2 <主体>と<客体>の関係
2.1 日本語の自動詞文と他動詞文
2.1.2 他動詞の限界性と他動詞文
2.1.3 自動詞文における主体の背景化
2.2 第2節のまとめ
3 再帰的他動詞構文の動詞分類
3.1 再帰的他動詞構文の主体と客体
3.1.1 再帰的他動詞構文の動詞カテゴリー
3.1.2 動作の引き起こし手
3.2 第3節のまとめ
4 授動詞文の動作主体
4.1 授動詞文<動作主体>のマーカー「ニ」「ニヨッテ」
4.2 授動詞文の<主体>と<受益者>
4.3 日本語教育における授受文
4.4 話者の視点と表現意図
4.5 「のために」
4.6 意志を表わす「~てやる」
4.7 受益者の格マーク
4.8 受益者格を新たに付け加える場合
4.8.1 物の授受、移動がないとき
4.8.2 物の授受・移動がある場合
4.9 「に格」の補語が存在する動詞文
4.10 「に格」以外のとき
4.11 受益者が「の格」で表わされるとき
4.12 第4節のまとめ
4.13 補説-直接受身文の動作主体
4.14 他動詞と自動詞の主体
第2章 日本語言語文化における<主体性>
5 はじめに
5.1 辞書に記載されている<主体><主体性>の語義
5.1.1 辞書搭載の<主体>語義
5.1.2 辞書搭載の<主体性>語義
5.2 近代社会の<主体>と近代以後における<主体>概念
5.2.1 「行為論からみた言語」における<主体>
5.2.2 日本語の<主体>の立脚点
5.3 日本語言語文化における<主体性>の確認
5.3.1 時枝誠記の<主体性>
5.3.2 森山卓郎の<主体性>
5.3.2.1 森山卓郎の問題点
5.3.3 廣瀬幸生の<主体性>
5.3.3.1 廣瀬2010の問題点
5.4 本論で用いる<主体>、<主体性>
5.5 本論での<主体性>
6 はじめに
6.1 日本語・日本人と主体性
6.2 <主体性>の背景
6.2.1 近代社会における<主体性>
6.2.2 subjectivityの語義再確認
6.3 哲学の<主体性>
6.3.1 フーコーの<主体化>
6.3.2 藤野寛の<主体性>
6..4 文学評論における<主体性>
6.4.1 ガニエの<主体性>
6.4.2 カラーの<主体性>
6.5 言語学における<主体性>
6.5.1 バンヴェニストの<主体性>
6.5.2 ジョン・ライオンズJohn Lyonsの<主体性>
6.5.3 ラネカーの<主体性>
6.6 日本語表現の<主体性>
6.6.1 池上1981の「状態表現」の問題点
7 太宰治『富岳百景』の叙述分析
7.1 はじめに
7.2 太宰治の『富嶽百景』
7.3 日本言語文化における<主体性>概念
7.3.1 「私小説」にみる<主体性>―太宰の文章観から
7.4 『富嶽百景』文体分析
7.4.1 意志動詞文の数/文の数
7.4.2 『富嶽百景』文の主観性
7.4.3 述語の分析―動詞述語「タ形」と「ル形」
7.4.4 指示語に表れた視点
7.4.5 待遇表現
7.4.6 授受動詞
7.4.7 受身文(受動文)
7.4.8 動作主体からの感情表出・評価
7.4.9 叙述分析まとめ
7.5 おわりに
8. 『夢の痂』にみる日本人の文法意識と<主体性>
8.1 はじめに
8.1.1 東京裁判三部作
8.1.2 夢の痂・梗概
8.1.3『夢の痂』の作品テーマ
8.2 井上ひさしの日本語文法観
8.2.1 絹子の国文法観
8.2.2.1 主題と主語
8.2.2.2コピュラ文(名詞措定文)
8.2.3 主語の非明示(主語なし文)
8.2.4 自動詞文と状況変化主体文
8.2.5 井上ひさしの文法認識
8.3 比喩としての「主語」
8.4 主体と主語
8.5 行為主体と責任
8.6 おわりに
第3章 日本語教育の実際と<主体性>
9 非日本語母語話者・日本語学習者にとっての日本語の主語(明示されない<主語>)
9.1 主語の見つけ方
9.2 非日本語母語話者の読解における問題点
9.3 第6節のまとめ
第4章 まとめ
10 現代日本語言語文化における主体性
参考文献一覧