まだディスカス飼育人口がそれなりにいて、ワイルドディスカスが入荷する傍からバンバン売れて
いた頃…ワイルドを扱うショップではよくピン抜きと呼ばれる、常連客だけを集めて上物を先に選ばせ
る販売形態が取られていました。
まあ、当時はフェアじゃないとかいろいろ言われてたピン抜きですが、業界がまだそれだけ熱かったと
いう事なのでしょう。
私も一度だけ誘われて見学に行ったのですが、一晩でビックリするようなお金が動いていました。
そしてあの頃、あれだけ熱意を持ってワイルドディスカスを探し回ってた人の多くが、今はディスカスを
止めてしまっているのもまた現実です。
ディスカスは衰退の一途だと言われますが、ディスカスを続けている人たちにとってはある意味
良い時代だとも言えます。上等なワイルドに良心的な値段がつき、入荷してしばらくストックされている
ケースもざらで、シーズンが過ぎると、おっと思うような魚が処分セールになってたり…
ワイルドも腰を落ち着けて購入できる時代になりました。
上のテフェグリーンは当時、通販で買った魚です。
そのお店も今は、ディスカスの扱いをやめてしまっていますね。
ほとんどスポットが出てない残り物?の若魚を数年飼い込んだ魚で、グリーンらしい横長体型ですが
自分にとっては宝物でした。
後に改良繁殖に目覚めた自分の秋水乙系統の礎にもなった魚です。
この魚を幼魚から育てたブルーベリー6に掛けて採ったのが秋水プロトですが、最初はコバルトと
ワイルドを掛け合わせることについて、メールや立ち話などで反論されました。
自家産ショップの中にはコバルト系を看板魚として扱う店も多く、それぞれにコアなファン層がいます。
有名品種直系の魚を系統維持する店もあれば、ドイツや国内から探した拘りの青系を掛け合わせた
新しい系統を作る店もありますが、それぞれにプライドとポリシーがありますね。
そういう拘りのコバルトにワイルドの血を混ぜて、素人が雑種を作るとは何事か!という訳です。
プロのコラムにも、コバルトにグリーンを掛けても中途半端な表現にしかならず、今まで多くの人が挑戦
して同じ結果を辿って、意味がないとありました。
コバルトを改良できるのは良質なコバルトの血しかないと…
それでもやってみなければ納得できない自分は、グリーンxコバルトの禁断?のクロス個体を
採ってしまったんです(笑)で、その結果は…
ご覧の通り、皆さんの仰るように、まあ中途半端なクロス個体が出来上がりました…(笑)
これはグリーンなのかコバルトなのか?横に長い体型と雰囲気だけは親のグリーンにそっくりですが。
まあ、自家産ショップならとても販売に踏み切れないような雑種F1の出来上がりです。
…が、自分にとってこの魚は中途半端な反面、磨けば光るダイヤの原石に見えました。
青ベタなブルーベリーの体表に出現した半端な虫食いラインと全身から漂うワイルド臭…
荒削りですが、体力があり生命力が強く、♂♀共に繁殖力旺盛。
改良種で時おり現れる、草食系男子&お子ちゃま未成熟男子や激しいDV野郎は出現せず、
受精率も高かった。なかなかエロい魚でしたね(笑)
上のグリーンクロスの若魚時代。やはり荒削りですが、いろんな事にヤル気満々な魚です。
まあ、多くの人がその中途半端さや体型に失望し、F1でやめてしまうのも理解できますが、
自分にとっては出現したこのラインと生命力こそが一番大事なポイントで、ネガな部分は目をつぶる
ことが出来ました。まあ、欠点はコバルト主体の改良の過程で消せるだろうと…
以後、この血を生かしながら改良を進める系統作りを決意します。
こちらは同時期に採ったブルーベリーとオリコバのコバルト同士F1。
まだ改良の余地はありますが、原種クロスと比べると、やはりF1から完成度が違いますね。
ブルーベリー体型にオリコバ虫食いライン…手っ取り早く結果を出せましたが、世の中そう甘くない?
原種クロスと比べて長い目で見るとどうなのか…インブリードに切り換えた後、結果が出るのは
これからです。
こちらはグリーンクロスの血を引くF2♀。中途半端さはだいぶ薄れましたが、体型をもう少し…
繁殖力はやはり旺盛で子育ても上手く、多くの子を残してくれました。
以下、グリーンクロスの血を引く最新の若魚を3連発で。
ここまでの成長過程を見る限り、同時期の歴代秋水では一番の仕上がりになってきました。
ネックだった体型も修正でき、虫食い柄もコバルト同士のF3よりハッキリしています。
グリーンの血はだいぶ薄まっていますが、インブリードの秋水甲タイプに無いシッカリ感があります。
F3にしてようやく原種グリーンを使った効果が現れました。
ここから先は予測でしかありませんが、雰囲気からインブリードの耐性は甲タイプより強そうです。
結局、グリーンクロスとは何なのか?人によって回答は様々でしょう。
ここでは秋水の繁殖にグリーンクロスの血を入れた私の経験から書かせていただきますが…
グリーンクロスのF1は確かに中途半端な物が出来上がります。
この先、改良していくのは気の長い話で、初めての方なら先の展開が未知なわけですから、
アマチュアがF1を見て繁殖継続を見限ってしまうのも解ります。
幼魚育成の苦労や淘汰選別を考えると、体型や発色、柄と、なるべく最良の個体を種親に使いたい
のが人情ってもんです。
これが良心的なショップなら尚更、品質を見極めなければならず、中途半端になると解っている、
言わば雑種のグリーンクロスF1の幼魚販売はしないと思います。
グリーンクロスの効果を明らかに実感できるのは2~3世代後になりますが、販売に漕ぎつけるのに
時間が掛かっても、3年以上掛かったコストを全て販売魚に乗せるわけにもいかないでしょう。
コバルトと原種グリーンのクロス繁殖はプロにとって極めて非効率…生産性の低い仕事と言えます。
アウトプットがなかなか出ない物に、普通プロは手を出しません。
反面、趣味に徹するアマチュアなら時間と手間を掛ける覚悟があれば、お金を払っても得られない
大きなメリットを手に入れる事が可能なのです。
ここで勝手にグリーンクロス格言…
「原種クロスはF1にして成らず」
「桃栗3年クロスも3年」
「美人は3日で飽きるが(ブスな)F1は3日で慣れる」
初期の頃からすると秋水は私の理想に近づきましたが、まだまだ先は長そうです。
秋水の改良、維持を続けるにあたって、またいつか原種グリーンの血が必用になると思います。
あと3~4年先で良いのですが、またテフェが解禁になる日が来てほしいですね。
種親水槽にストックしている初期のグリーンクロスは、あと1匹…しかも老いて結構ヨレヨレです(笑)
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