日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 左行秀 Yukihide Katana

2019-11-01 | 
刀 左行秀


刀 左行秀

 兼虎の特質の一つでもある沸深い出来に関連して、例に出した左行秀を改めて眺めてみる。沸が強くて深いという左行秀の凄さは、この作例で判るのではなかろうか。左行秀が生きた同時代、これほどに沸が深く強い刀を製作した刀工はいない。他には、少し時代が上がって井上真改がいる。刃縁の沸の帯から刃先に向かって沸が柔らかく広がり、明るく細密な沸が刃先にまで達しているのが判ると思う。地中にも地沸があり、本作においては、いずれも叢がなく均質である。もちろん湯走りや刃中に金線沸筋砂流しを働かせた作もあるが、ここに見るような均質な地刃を生み出した左行秀の凄さは、他にこのような作を遺した刀工がいないという点で理解すべきだ。同時代の相州伝刀工では、肌目を強く出して沸出来の刃文を焼いた大慶直胤がいる。直胤も清麿と同様に鍛え肌を強く意識した作風で有名だが、左行秀の相州伝とは異質、まったく別の分野と言っていい。左行秀もまた相州伝の刀工。この差を鑑賞して楽しんでほしい。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする