旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

ごっこ鍋と清酒国稀と舟唄と 留萌本線を完乗!

2016-04-09 | 呑み鉄放浪記

 高倉健演じる刑事が追う殺人犯の妹(烏丸せつこ)が働いていた風待食堂。
刑事たちが張り込みをしていた通りの反対側の旅館(日本通運の社屋)は今はもうない。
ここに来る前夜、予習をしておいた「駅STATION」は1981年、倉本聰脚本の作品だ。

 

木造三階建ての元旅館の富田屋、石造りの蔵が立派な旧商家丸一本間家
増毛駅周辺には明治から昭和にかけての歴史的な町並みが残っている。

260年ほど前の宝暦年間に漁場が開かれた増毛は、道北では古い歴史を誇る。
増毛は坂の町、暑寒別岳から流れ出た暑寒別川の傾斜地に集落が寄り添う。
傾斜地がやがてなだれ込むのは、まだ冬の顔をした日本海だ。

赤提灯の灯る小さな居酒屋を切り盛りする倍賞千恵子演じる桐子。
桐子が好きな八代亜紀の「舟唄」、劇中で何度も印象的に流れていた。
なるほど歌詞の情景を想像させる風景と雰囲気がこの町にはある。

 
 

最北の酒蔵「国稀酒造」は旅の目的のひとつ。
暑寒別岳連峰から豊かな残雪を源流として湧き出る伏流水で醸している。
もちろん劇中でも居酒屋「桐子」にはこの国稀の一升瓶が並んでいた。
土産の「純米吟醸 国稀」は、道産好適米を使った清々しい味わいの吟醸酒だ。

最果ての終着駅増毛、ある意味ご利益のありそうな名前ではある。
記念の硬券は売れるだろうか。映画から35年、国鉄分割民営化を経た。
フィルムの中の淋しげな駅の情景は、更に荒涼とした風景となっている。

余計な引込線や、構造物がすべて剥ぎ取られてしまった増毛駅。
短いプラットホームと、たった1本の線路が、折り返しの列車を待っている。

 

 さて今宵は留萌、光風館石亭さんに投宿する。なかなか気持ちの良い宿だ。
主に利尻島近海の海の幸、道産の肉・野菜などを盛り込んだ海の幸御膳に満足。 

 

お造り、チーズ焼き、石焼きにホタテ。"かすべの煮付" に "ほっけの塩焼" とどれも旨い。
名物 "ごっこ鍋"、淡白な身、ぷるんとしたゼラチン質の皮、ぷちぷちした卵が美味しい。
すすむ酒はもちろん「国稀」、まろやかでスッキリとした芳醇な甘口の酒だ。

 

 早朝の留萌駅から深川へ再び留萌本線に乗る。1日数往復足らず、1両の気動車が走る。
国鉄時代、ここから日本海沿いに宗谷本線の幌延まで140kmにも及ぶ支線が走っていた。
風光明媚なルートでも、このゲームに廃線跡まで加えたら、生涯のうちに終わらない。

6時47分発の深川行き、車内に生活の匂いは無い。乗り合わせた10名余のオジサン達。
青春18きっぷ最後の週末に、一部廃止となる留萌本線を乗りに来たご同輩だ。

鉄路は留萌川に沿って勾配を上る。石狩平野に出るには小さな峠を越えないといけない。
峠の前後は一面の銀世界だ。道北に本格的な春がやってくるのはもう少し先のようだ。

 

 石狩平野に下りると各駅から部活の中高生が乗ってきてようやく賑やかになる。
東進してきた鉄路が左手に大きくカーブを描くと、右手から函館本線の複線が近づく。
暫し並走して単行気動車は深川駅6番線に終着する。0キロポストは簡易な標柱だ。
8ヶ月後には増毛~留萌が廃止になる。日本海の車窓がなくなると思うと寂しい。

留萌本線 増毛~深川 66.8km 完乗

八代亜紀 / 舟唄



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