思考の踏み込み

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形影神33

2014-10-12 06:31:43 | 
わずかなー 間が空いた。
その、直後だった。

突如、 "心" が急に動揺を露わにして叫んだ。



「 …だが、それが何になるのです?!
どんなに良く生きる指針が分かって、その通りに生きたとて、死ねば全ては元に戻るだけではないか!

淵明殿が言われた事が真実とすれば、
我々は中空に分じ、散じ、漂い続けるだけの存在に戻るだけではないか!

ならば初めから漂っているだけで良かったのではないか?
何故にわざわざ我々は…斯くなる徒労をしなければならないのか!」


「!!…。」


一同が "心" の俄かなその乱れ方に目を疑った。だが同時にその叫びは誰もが抱えていた疑念でもあった。

満座に声なく、月光だけが ー 凄まじいほどの輝きでそこに居るモノ達を照らしだしている。
だが ー 。


「?」





「 琴が…止んでいる…。」

誰かが気付き、呟いた。
止むことなく鳴り続けていた琴はいつの間にか ー 静寂に溶け、闇に溶けこんでいる。

それどころか ー そこだけがどういうわけか、月の光も届かずに闇よりも暗く、漆黒よりも黒い。
それは清冽な美しささえ感じさせた。


やがて ー 、そこからおよそ聞いたことの無い層の音でもって "声" が聞こえてきた…。


「ソコカラ…ソノ、ムゲンノ キョ ノセカイカラ…ヌケダサンガタメニ…ワレラハ、チ ニクダリシモノナリ。」





「ー ?」


「…ワレラハ ナンジラト トモニ アルモノナリ。トモニ…ユクモノナリ。
ワレラノ ネガイハ ナンジラガ ネガイー 。」


「……………。」

皆、しばし呆然としていた。
淵明の影だけが穏やかに揺らめき、その場で唯一の動きを為している。