「ところで我が主よ、貴方は "この世" に生を受けて幾年になられる?」
そう言って肚は "形" に問いかけた。
主とは言っているが、実際に言葉程には従属の関係にある様には見えない。
むしろ "形" の方が "肚" に敬意を表している様に見えることさえある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/da/0a5652ad8e13a9d37346fe6dd5a812e2.jpg)
「さあ?何年だろうか?あまり気にした事はない。そういう事は "意識" 達が詳しいよ。」
「まあ年数は良いでしょう。
では、これまでのともかくも数十年の間に、"試練" にどれくらい出くわされたか?」
「試練?」
「左様。つまり "形" としての存続の危機、もしくは貴方と一心同体たる "心" に訪れた困難…。」
「…どうだろうか。はっきり覚えておるには及ばぬが、間違いなく何度もそういう事はあったー 。」
形は心と顔を見合わせながら、答えた。
肚は頷きながら、今度は "意識" に問いを発する。
「人の未来は全て "潜在意識" で思った通りに進んでゆく。 ー という言葉があるが、それを君はどう考えるかね?意識君。」
「…我が母の、力とその影響力は余りにも大きく、私程度では計り知れませぬ。しかし、その偉大な力を持ってすれば、あるいはそういう事も事実かもしれない…。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/18/61db6cf07805ac04a4a25e45b111a7fc.jpg)
「宜しい。では仮にそうだとして話をを進める。つまり、人が無意識の次元で思った通りに、その人生を歩んでいるのだとすればだ、何故にして人には試練などというものが訪れるのか、ということだ。」
「…。」
「試練とは先程も申した様に、形と心にとっては危機である。思った通りにそれが訪れるという事は、それを我らは無意識に必要としている、という事になる。」
「…。」
「そして一生涯平穏無事で、心身安らかに過ごせる者など居はしない。必ず何度かは試練にぶつかる。
繰り返すがそれは我らにとっては危機である。もし我々の本能が、その "カタチ" の安定や維持や発展に限っているとするならば、これは矛盾した現象ではないだろうか?」
「……。」
「だが、カタチが危機に出くわすとき、我々の中でそれを乗り越えようとする "力" が発揮される。
その力は生命力を高い次元で発露させ、我々の精神すら鍛え上げる。
だとすればだ…。」
「だとすれば…我々が時に向き合わされる試練とは…生命力の発揮の為に、我々自らが望んで招きよせている事象だとでも言うのですか?」
「そうだ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/3a/3ab2a7674a0a961263b6e50a79997e0e.jpg)
知性の脇から理性が久々に発言した。その内容に対して肚はひどく断定的に答えた。
「だが問題は、我々の中のどの部分がそれを要求しているのか、という事なのだ。」
誰もが顔を見合わせあって首をかしげた。
誰もそんな心当たりなどなかった。
だが、"直感" だけはある方向を見つめている。
それはその輪のやや外側、そう、魂と魄のいる場所だった。
そこからは相変わらず美しい琴の音が鳴り続けている…。
そう言って肚は "形" に問いかけた。
主とは言っているが、実際に言葉程には従属の関係にある様には見えない。
むしろ "形" の方が "肚" に敬意を表している様に見えることさえある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/da/0a5652ad8e13a9d37346fe6dd5a812e2.jpg)
「さあ?何年だろうか?あまり気にした事はない。そういう事は "意識" 達が詳しいよ。」
「まあ年数は良いでしょう。
では、これまでのともかくも数十年の間に、"試練" にどれくらい出くわされたか?」
「試練?」
「左様。つまり "形" としての存続の危機、もしくは貴方と一心同体たる "心" に訪れた困難…。」
「…どうだろうか。はっきり覚えておるには及ばぬが、間違いなく何度もそういう事はあったー 。」
形は心と顔を見合わせながら、答えた。
肚は頷きながら、今度は "意識" に問いを発する。
「人の未来は全て "潜在意識" で思った通りに進んでゆく。 ー という言葉があるが、それを君はどう考えるかね?意識君。」
「…我が母の、力とその影響力は余りにも大きく、私程度では計り知れませぬ。しかし、その偉大な力を持ってすれば、あるいはそういう事も事実かもしれない…。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/18/61db6cf07805ac04a4a25e45b111a7fc.jpg)
「宜しい。では仮にそうだとして話をを進める。つまり、人が無意識の次元で思った通りに、その人生を歩んでいるのだとすればだ、何故にして人には試練などというものが訪れるのか、ということだ。」
「…。」
「試練とは先程も申した様に、形と心にとっては危機である。思った通りにそれが訪れるという事は、それを我らは無意識に必要としている、という事になる。」
「…。」
「そして一生涯平穏無事で、心身安らかに過ごせる者など居はしない。必ず何度かは試練にぶつかる。
繰り返すがそれは我らにとっては危機である。もし我々の本能が、その "カタチ" の安定や維持や発展に限っているとするならば、これは矛盾した現象ではないだろうか?」
「……。」
「だが、カタチが危機に出くわすとき、我々の中でそれを乗り越えようとする "力" が発揮される。
その力は生命力を高い次元で発露させ、我々の精神すら鍛え上げる。
だとすればだ…。」
「だとすれば…我々が時に向き合わされる試練とは…生命力の発揮の為に、我々自らが望んで招きよせている事象だとでも言うのですか?」
「そうだ!」
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知性の脇から理性が久々に発言した。その内容に対して肚はひどく断定的に答えた。
「だが問題は、我々の中のどの部分がそれを要求しているのか、という事なのだ。」
誰もが顔を見合わせあって首をかしげた。
誰もそんな心当たりなどなかった。
だが、"直感" だけはある方向を見つめている。
それはその輪のやや外側、そう、魂と魄のいる場所だった。
そこからは相変わらず美しい琴の音が鳴り続けている…。