思考の踏み込み

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黄色7

2014-07-21 09:20:11 | 
ゴッホについて、軽くふれるだけで進むつもりだったが、彼の魅力が中々そうもさせてくれないのでもう少し続ける。

ローヌ川の「星降る夜」

ゴッホが黄色ばかり描いた理由に、彼がアブサンという幻覚作用を成分に持つお酒を好んだ為だという説がある。

彼はアブサン中毒で、その為に色弱となり世界がそもそも黄色く見えていたというのである。

これはしかし正しくはないだろうと思う。彼の色彩感覚をみる限りにおいて、色弱という要素は当たらない。

ゴッホが黄色を多用した理由は、やはり既に述べてきた様に、彼が黄色の持つ "力" に傾倒していた ー そう見る方が実際に近いであろう。

ただゴッホがアブサン中毒だったのは有名な話だし、事実だとも思う。
多くの人はアブサンという安酒を飲んだくれて、ゴッホは心まで壊していったと思いがちだが、これも実はまったく違う。

私は以前、1920年代のアブサンを飲んだ事がある。
もちろん幻覚作用となる成分を抜いたモノであるが、年代的にゴッホが飲んでいた頃の味に近いと思われるものである。

その美味しさはちょっと言語を絶した比類なきモノであった。
アブサンは蒸留酒であるから、ワインの様に寝かせる事で変質はしない。

従って私が飲んだアブサンオールドは当時の味そのままだったということであり、それは幻覚作用などなくても中毒性を呼び起こしかねないほどのクオリティであったと言える。

ヴィクトル オリヴァ「アブサンを飲む男」

それほどに今でもその味の記憶が鮮明に残っている。
ゴッホだけでなく、ロートレックやドガ、モネ、ピカソまで多くの芸術家がこの酒を好んだという。
美を愛する者たちに相応しい名酒であるが、これが当時の安酒であったとはなんと羨ましい時代であることか。

現代ではペルノやリカールと名を変えて販売されているが、当然比べるべくもない。

まだ世界には当時のモノが多少残っている様だが、そのうちカスクドールのマスターにお願いして仕入れて貰おうと企んでいる。これは余談。