思考の踏み込み

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過去帳其の二 8

2014-07-10 07:38:44 | 日記
弓についてもう少し触れてみよう。

"阿波研造" という人物をご存知の方が今の日本にはどれだけいるだろうか。

オイゲン ヘリゲルの「弓と禅」が有名だが、弓術を "道" にまで高め弓禅一如を体現した人物として偉大である。

阿波研造。1980~1939年。

こうした達人が存在したという事実を我々はもっと知るべきであろう。

彼は小手先の技術としての弓術を否定し、当時の弓道界と隔絶。
"孤独" な高みを独り歩んだ。
しかし、その実力は全国弓道大会で四日連続百発百中という人間離れしたモノ。
彼はいかにしてその境地に辿り着いたのか?


阿波研造は言う ー 。

" ー 的と私が一体になるならば、矢は有と非有の不動の中心にある。
射は術ではない。的中は我が心を射抜き、仏陀に到る。"


これは間違いなく彼が、身体の統合を高次元において ー "弓を引く" という所作から達成し、その先に到達した証となる言葉であろう。

人生を矢を射る事に例えたが、その奥義とでもいうべきヒントがこの言葉にはある。

彼は目を閉じていても的を外さなかったといわれる。
日本人研究の為に来日した哲学者ヘリゲルはその事を疑うと「ではやって見せよう」と、阿波。

夜、暗闇の中阿波は矢を放つ。
当然の様に矢は的の中心を射抜く。

驚くべきは二本目。
一本目の矢筈の真ん中から入って一矢目を引き裂いていた。

その時の炸裂音を印象深くヘリゲルは聞き、やがて阿波に傾倒してゆく。

果たして本当にこんな事が人間には可能なのだろうかー ?

私自身、弓道など縁はないし、阿波の事をそれほど詳しくもしらないのだが、いずれにせよ、阿波研造の "弓禅一如" からはただの精神論などではない、深淵な身体技術が垣間見られて興味が尽きない。



(補記 : ちなみに「弓と禅」はスティーブ ジョブズが生涯の愛読書としていた、とか言われて話題にもなったから最近はご存知の方は多いかもしれない。

ヘリゲルがどこまで阿波の本質に迫り得ていたかはともかく、興味がある方は読んでみる価値はあるだろう。)