思考の踏み込み

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過去帳其の二 5

2014-07-07 00:21:44 | 日記
ー たとえば触れる者皆傷付ける様な険しい空気感を纏って生きる事も悪くはないだろう。

個人的には一定の緊張感を纏っている人間や、協調性など皆無でどうしようもない変わり者とかいった変物も嫌いではない。

だが根本的に人間は集団生物であるという絶対原理がある以上は、自身の生き方の選択としては、もっと同調率や協調性を自由に扱える様な強さが欲しいものだとやはり思う。

合気道の達人、武道の神様とまで言われた塩田剛三は弟子に「合気道で一番強い技はなんですか?」と問われ、こう答えたという。



" ー それは 自分を殺そうとして襲って来た相手と一つになって、友達になってしまう事だよ。 "



相手がどういう者であろうと ー 殺意を持っていてさえ ー それを全て受け入れ自己に取り込んでしまう。
しかしそれは妥協ではなく、調和なんだ、と塩田は言う。
本当に強い人とはこういう人物のことを言うのだろう。

武道という、本来殺し合いの技術世界において ー 合気道が到達しまた塩田が到達していた世界観は明らかに一つ抜け出している ー 。

もちろんそれは塩田剛三の武の達人としての下地があってはじめて言えるセリフなのだが、この辺りまでいくと技術と人間性は別のモノではない。

なぜならこの次元の技術に至るには、相当に高度で統合された身体が必要であり、それは精神面もそれ相応に高めるモノであるからだ。

従って必ずしも合気道や武術の達人にならなくても、己が身体を整え感覚を高めていけば塩田のいた融通無碍な心境に辿り着くことは出来るはずである。

(肘の角度にお気付きだろうか?塩田の神技を解くカギの一つは明らかに "同調" の原理である。そして塩田の肘はしっかりと腰と繋がっている。崩されている側との差もそこにある。)


そしてそこへ行くための推進力とでも言うか、強くなりたいと願う気持ちは自然、弱い者ほど多く持っている。

弱き者ほど実は恵まれているのである。


その ー 弱さがあるからこそ人は自らと闘い、鍛錬し強くなり得る事もできる。
臆病者ほど智慧も湧くし、虚弱な者ほど健康への意識は強い。
そして孤独であるからこそ、自己と徹底して対話する時間も生まれるのである。

実は弱者こそが生き残ってきた ー という真実は人類史のみならず、生物史においてさえ、明らかな事実なのである。

(もちろんそのためには自己の弱さと真正面から向き合う覚悟が必要ではあるが。)