定期テストも宿題も廃止して一躍脚光を浴びた、東京都千代田区麹町中が、一連の改革を白紙に戻す異例の事態に。
「定期試験なし」の千代田区・麴町中、改革転換を検討 保護者に波紋
まあ、正直、遅かれ早かれこうなるだろうとは思っていました。
理由はいろいろありますが、まずは記事の内容を(一部略)。
同校は、公立校教員などを経て2014年に就任した工藤勇一校長(現・横浜創英中学・高校校長)が「子どもの自主性を伸ばす」などとして、改革を実行。宿題や定期試験、固定した学級担任制などを廃止し、制服(標準服)や体操着も「着用自由」で一部私服も導入した。
だが、複数の関係者によると、同校は今年7月にあった区内の小学5、6年生と保護者向けの学校説明会で、「まだ決定ではない」としつつ、定期試験の実施、学級担任制の導入、指定の制服・体操着の着用などを進める方向で検討していることを明らかにした。
麴町中には、近年の改革に魅力を感じて子どもを通学させようと、区外から転居する家庭も少なくないという。
説明会の出席者によると、方針転換の理由は、生徒の学力向上や生活指導強化の必要性、地域からの要望など。「来春の新入生から適用」という説明もあったという。
--引用ここまで--
■麹町中の一連の改革の問題点
・定期テストを廃止して単元テストだけにすると学力は落ちる
・公立校なので異動で数年~十年もしたらほぼすべての教員が入れ替わる
・宿題廃止は、やる子とやらない子の格差を広げるだけ
・固定担任制の廃止は、責任の分散につながり、個々の教員が多忙化すると機能しなくなる
・制服等の自由化は学校の“治安”がよい時は上手く作用するが、一度、空回りし出すと負のスパイラルに
そもそも、一番の問題点は校長を主導としたトップダウンの改革は、その人がいなくなったら効き目がなくなることが多いのです。
工藤校長が公立学校の教員を辞め、私学の教員になったあたりでこのような結果は目に見えてました。
案の定というか、2021年に週刊ポストがこんな記事をあげています。
千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張
「髪型も服装も自由」「宿題なし」「中間・期末テスト廃止」──こんな改革を行なう公立中学がある。都内の千代田区立麹町中学校だ。先進的な教育を行なう同校に、ある異変が起きている。
「これまでの通知表は『3』や『4』が並んでいたのに、校長が変わると『1』ばかりに……」
「ずっと『5』を取っていた科目が『2』になったので驚きました」
そう困惑するのは、3月まで麹町中に子供を通わせていた保護者たちだ。
永田町や霞が関に近い麹町中は古くから名門として知られ、麹町中から都立屈指の進学校・日比谷高校へと進むのが“エリートコース”とされていた。OBには岸田文雄・元外相やアナウンサーの露木茂氏などがいる。
そんな麹町中に革命をもたらしたのが、2014年に赴任した工藤勇一・前校長だ。
それまで都や区の教育委員会の職員だった工藤前校長は、赴任するや担任制度や宿題、定期テストを廃止。生徒の自主性を重んじる改革を断行し、一躍“教育界の風雲児”に。4冊の著書を出版したほか「教育再生実行会議」の有識者メンバーにも名を連ねている。
中でも注目されたのが、「単元テスト」の導入だ。
麹町中では宿題や定期テストの代わりに、授業の進捗ごとに単元テストと呼ばれる小テストを受ける。点数が低ければ、納得のいく点数に到達するまで何度でも再テストを受けることができる。
この方式は、「通知表の評価が上がりやすい」とある教育関係者が言う。
「ほかの公立中学は一発勝負の中間・期末テストの成績で判断されますが、麹町中は繰り返し再テストを受けて好成績を収めれば高評価が得やすい。
都の教育委員会は毎年、各公立中学の成績割合を公開しており、2019年の麹町中は生徒の45%が数学で『5』を、英語を除く他教科でも生徒の50%超が『4』以上を取っていた。工藤氏は雑誌のインタビューなどでも『生徒全員に5を付けて何が悪いのか』と公言しており、わざわざ住民票を学区内に移す“越境入学者”も絶えなかった」(同前)
だが、冒頭の保護者のひとりは、「昨年3月に工藤先生が退任してから学校の印象は一変した」と話す。
--引用ここまで--
この問題の根深いところは、高校入試との整合性のなさです。
がんばって高評価をあげたいという先生の気持ちもわからなくはないですが、
・数学で『5』がついた子は45%
・他教科でも『4』以上を取っていた子が5割
つまり、入試で重要な位置を占める「内申」にバブルを引き起こしたのは問題です。
そりゃ不公平だろうってことになりますよね。
さらに、こうやって内申バブルで自分の実力以上の内申点をもらった子が、背伸びして自分の実力以上の進学校を受験して合格してしまったら、高校に入ってからついていけなくて大変になるのは目に見えています。
つまり、長い目で見れば、全然子どものためにならない。
成績につけ方についての理想は理想であって、現実は現実なんです。
私は、大学入試センター試験の数学が197/200点でしたが、中学校で数学で「5」の評定なんてなかなかとれませんでした。
がんばったら良い評価をあげるのと、甘ったれた評価をあげるのとは、別問題です。
そして、他にも問題なのは、恐らく「宿題廃止」の影響でしょう。
自主学習というと聞こえは良いですが、中学生がすべて自分で勉強の内容ややり方を管理して進められると思いますか?
そんなの成績上位5%の子だけですよ。
それだって、親のサポートがあってこそ。
ちょうどそれを裏づけるような本が(笑)。
■國立拓治著 指導歴25年超&“生の声”で実証! [中学生]成績トップの子の親がしていること
我らが國立先生の最新作です。
結局、塾に通っていない子の学力ががた落ちになったんだと思います。
似たような話、最近、どこかで耳にしましたよね?
そう、宿題を廃止した布袋中学校がその典型例でしょう。
実際、学力はがた落ち、宿題も廃止したはずなのに、今ではサイレント修正されて、ちゃーんと宿題らしきものを出されています。
もう、学校教育自体が塾なしでは成り立たなくなっているほど、教育力・指導力が低下していることの現れなのではないでしょうか。
■江南ネクサスの空席状況をチェック
・学年ごとの曜日・空席状況がチェックできます
「定期試験なし」の千代田区・麴町中、改革転換を検討 保護者に波紋
まあ、正直、遅かれ早かれこうなるだろうとは思っていました。
理由はいろいろありますが、まずは記事の内容を(一部略)。
同校は、公立校教員などを経て2014年に就任した工藤勇一校長(現・横浜創英中学・高校校長)が「子どもの自主性を伸ばす」などとして、改革を実行。宿題や定期試験、固定した学級担任制などを廃止し、制服(標準服)や体操着も「着用自由」で一部私服も導入した。
だが、複数の関係者によると、同校は今年7月にあった区内の小学5、6年生と保護者向けの学校説明会で、「まだ決定ではない」としつつ、定期試験の実施、学級担任制の導入、指定の制服・体操着の着用などを進める方向で検討していることを明らかにした。
麴町中には、近年の改革に魅力を感じて子どもを通学させようと、区外から転居する家庭も少なくないという。
説明会の出席者によると、方針転換の理由は、生徒の学力向上や生活指導強化の必要性、地域からの要望など。「来春の新入生から適用」という説明もあったという。
--引用ここまで--
■麹町中の一連の改革の問題点
・定期テストを廃止して単元テストだけにすると学力は落ちる
・公立校なので異動で数年~十年もしたらほぼすべての教員が入れ替わる
・宿題廃止は、やる子とやらない子の格差を広げるだけ
・固定担任制の廃止は、責任の分散につながり、個々の教員が多忙化すると機能しなくなる
・制服等の自由化は学校の“治安”がよい時は上手く作用するが、一度、空回りし出すと負のスパイラルに
そもそも、一番の問題点は校長を主導としたトップダウンの改革は、その人がいなくなったら効き目がなくなることが多いのです。
工藤校長が公立学校の教員を辞め、私学の教員になったあたりでこのような結果は目に見えてました。
案の定というか、2021年に週刊ポストがこんな記事をあげています。
千代田区の名門公立中学校で通知表に「1」を連発した新校長の主張
「髪型も服装も自由」「宿題なし」「中間・期末テスト廃止」──こんな改革を行なう公立中学がある。都内の千代田区立麹町中学校だ。先進的な教育を行なう同校に、ある異変が起きている。
「これまでの通知表は『3』や『4』が並んでいたのに、校長が変わると『1』ばかりに……」
「ずっと『5』を取っていた科目が『2』になったので驚きました」
そう困惑するのは、3月まで麹町中に子供を通わせていた保護者たちだ。
永田町や霞が関に近い麹町中は古くから名門として知られ、麹町中から都立屈指の進学校・日比谷高校へと進むのが“エリートコース”とされていた。OBには岸田文雄・元外相やアナウンサーの露木茂氏などがいる。
そんな麹町中に革命をもたらしたのが、2014年に赴任した工藤勇一・前校長だ。
それまで都や区の教育委員会の職員だった工藤前校長は、赴任するや担任制度や宿題、定期テストを廃止。生徒の自主性を重んじる改革を断行し、一躍“教育界の風雲児”に。4冊の著書を出版したほか「教育再生実行会議」の有識者メンバーにも名を連ねている。
中でも注目されたのが、「単元テスト」の導入だ。
麹町中では宿題や定期テストの代わりに、授業の進捗ごとに単元テストと呼ばれる小テストを受ける。点数が低ければ、納得のいく点数に到達するまで何度でも再テストを受けることができる。
この方式は、「通知表の評価が上がりやすい」とある教育関係者が言う。
「ほかの公立中学は一発勝負の中間・期末テストの成績で判断されますが、麹町中は繰り返し再テストを受けて好成績を収めれば高評価が得やすい。
都の教育委員会は毎年、各公立中学の成績割合を公開しており、2019年の麹町中は生徒の45%が数学で『5』を、英語を除く他教科でも生徒の50%超が『4』以上を取っていた。工藤氏は雑誌のインタビューなどでも『生徒全員に5を付けて何が悪いのか』と公言しており、わざわざ住民票を学区内に移す“越境入学者”も絶えなかった」(同前)
だが、冒頭の保護者のひとりは、「昨年3月に工藤先生が退任してから学校の印象は一変した」と話す。
--引用ここまで--
この問題の根深いところは、高校入試との整合性のなさです。
がんばって高評価をあげたいという先生の気持ちもわからなくはないですが、
・数学で『5』がついた子は45%
・他教科でも『4』以上を取っていた子が5割
つまり、入試で重要な位置を占める「内申」にバブルを引き起こしたのは問題です。
そりゃ不公平だろうってことになりますよね。
さらに、こうやって内申バブルで自分の実力以上の内申点をもらった子が、背伸びして自分の実力以上の進学校を受験して合格してしまったら、高校に入ってからついていけなくて大変になるのは目に見えています。
つまり、長い目で見れば、全然子どものためにならない。
成績につけ方についての理想は理想であって、現実は現実なんです。
私は、大学入試センター試験の数学が197/200点でしたが、中学校で数学で「5」の評定なんてなかなかとれませんでした。
がんばったら良い評価をあげるのと、甘ったれた評価をあげるのとは、別問題です。
そして、他にも問題なのは、恐らく「宿題廃止」の影響でしょう。
自主学習というと聞こえは良いですが、中学生がすべて自分で勉強の内容ややり方を管理して進められると思いますか?
そんなの成績上位5%の子だけですよ。
それだって、親のサポートがあってこそ。
ちょうどそれを裏づけるような本が(笑)。
■國立拓治著 指導歴25年超&“生の声”で実証! [中学生]成績トップの子の親がしていること
我らが國立先生の最新作です。
結局、塾に通っていない子の学力ががた落ちになったんだと思います。
似たような話、最近、どこかで耳にしましたよね?
そう、宿題を廃止した布袋中学校がその典型例でしょう。
実際、学力はがた落ち、宿題も廃止したはずなのに、今ではサイレント修正されて、ちゃーんと宿題らしきものを出されています。
もう、学校教育自体が塾なしでは成り立たなくなっているほど、教育力・指導力が低下していることの現れなのではないでしょうか。
■江南ネクサスの空席状況をチェック
・学年ごとの曜日・空席状況がチェックできます