今般、「新プランター栽培」が、NHKの 「趣味の園芸 野菜の時間」で取り上げられて、放映される事になりましたが、それをご覧になられた方々が如何受け取られるか大変興味があり、以前に愛読するオーストラリアのWeb雑誌の中に載っていました1999年にウルガイの英国幼稚園での授業で、園児が育てる簡易水耕による葉レタス栽培の紹介記事があったのをふっと思い出しました。
子供たちを夢中にさせる植物を育てる事の大切さ、水耕栽培の高い栽培効果によるその成果の意義を、国が変ればその価値の捉え方も違うのでしょうが、進んでいると感服したのを覚えています。
今では、葉レタス栽培などの簡易水耕法は、海外の多くの幼稚園や小学校で取り入れて子供たちの教育ツールとなっているようですが、日本では今尚その域には無いと言う事のようです。
ハイドロポニックス発祥の国アメリカでは、一般の家庭園芸分野向け様々な園芸用の水耕栽培装置が市販されており、その普及レベルは言う迄も無く、ラテンアメリカでも10年以上前に幼稚園児の学習ツールになる程、その認識レベルに差が有ったのです。
しかし、日本でも新プランター栽培の方式のミニポット栽培なら、同等以上のレタス栽培が、幼稚園の園児でも簡単に出来るのではないかと思い、参考までに、その記事の抄訳を公開させて頂きます。
因みに、新プランター栽培では、リーフレタス類は忽ち育ち過ぎとなり、出来過ぎてプランター1つでも食べきれず、取って捨てる始末でした。
―ミニプランターで育ち過ぎたミックスレタスー
一寸長くなりますが、其の記事の全文を紹介しますので、幼稚園児の作ったリーフレタスを見てやってください。
幼稚園の為の簡易な水耕栽培 (抄訳)
by: Martin Caldeyro Stajano (M. Sc.)
水耕栽培が、ウルガイの幼稚園の4歳、5歳の子供たちの学習する意欲を引き出し、栄養の改善となる価値ある教育ツールとなりました。
―レタスを抱える子供達―
ウルグアイでの英国人学校の幼稚園では、教育システムを改善する新しい方法を見つけることに持続して興味を抱いていました。従来から幼稚園では、小さな園庭内の用地では、いくつかの要因―スペースの制限、子供達を泥からは守って清潔に保つこと、活動に参加する多くの子供には作業ツールの直接の取り扱いを許可しないとか、散水は複雑で実際には自由には出来ない等、子供達が払った大きな努力による成果としての収穫物を考えますと、その価値を理解させるには充分ではない事が経験で良くわかっていました。
―サラダを試食する子供達―
したがって、先生方がAQUAFOODプログラム(そこでは、教師と子供が、従来と異なる革新的な植物を栽培する方法を直接に触って体験している姿がオーディオビジュアルで写し出されている)で水耕法技術について知る機会を得た時には、先生方に大きな興味が広がりました。子どもたちが熱中して関与する姿を観察した後、この技術を学校でも採用して受け入れる考えが生まれました。
簡易化された水耕法は衛生的で、多くのスペースを取りません。また、子供達に個々の直接的な参加の機会を提供します。それに、子供たちが栽培環境から作物を引き抜く事も無く、植物の根を観察したり、植物が比較的速く成長する事を見ることを可能にします。
1999年には、70人の毎日幼稚園に来る子供のために、教師のチームと筆者は簡易水耕法を計画するプロジェクトに参加しました。水耕法がウルグアイの就学前の学校で学習手段として採用されたのはこれが初めてでした。プロジェクトの目的は次のとおりでした:
- 植物のライフ・サイクル(一生)について容易に理解させる。
-植物の機能(働き)について容易に理解させる。
- 作物(食料)の生産の過程に参加させる。
- 健全な食習慣の発達に寄与させる。
- グループ・プロジェクトでの子供の間のチームワークを育成させる。
- 自然界の命や其の価値を大切にする動機づけをする。
先生のチームワークおよび準備材料
午前および午後の2つのグループの各35人の子供に4人の先生1人の世話役がチームとなって作業をします。使用される用品は、砂、米籾殻、培養液、水、プラスチック、丸木、アイスクリームコンテナー、プラスチックポット、PVCパイプおよび種子。
-レタスと園児たちー
小さな雨よけ温室が幼稚園の裏庭隅に建造されました。木製の柱で支えられ、太陽、雨および風から作物を保護するために、屋根はプラスチックシートおよび日よけスクリーンで覆われていました。作物は床面から上げられて、長い木板の上に置かれました。プラスチックで包まれた小さな箱は、砂と稲の籾殻で満たされて苗床として使用されました。成長用にはさらに大きなフロート装置と側面の壁に付けられたPVCパイプで構成されました。
幼稚園での活動
準備
水耕栽培が「植物」のユニットの一部として幼稚園カリキュラムに統合され、それには次の要素が含む:
- 植物の部分。
- 必要条件を育てること。
-植物の機能。
-植物のライフ・サイクル。
- 食べることができる植物の部分。
理論と実践
第2期間(8月中旬から11月の初めまで)に、AQUAFOODへの一連の訪問は下記活動を展開するために行なわれました:
動機付けの話-この代替方法で植物を栽培する話をスライドで紹介し、子供達に自分で自ら植えることに仲間いりさせるようにする。
育苗- 虫眼鏡を使っての種子の観察および苗床へ種蒔き。その後での発芽過程およびに幼少植物の成長の観察。
野菜苗の移植- コンテナーに小さな植物を移し水と栄養素を加えること。各子供は個々の箱に2本のレタスを移しました。レタスの種類にはバターヘッド種(赤くぱりぱりするレタス)が含まれていました。各子供は、さらに、成長用の固形媒体で満たされた小さなプラスチックポットへバジルとパセリを移植しました。
花の移植- 小さなプラスチックポットに成長用の固形媒体を充填してキンセンカを移植しました。
様々な野菜の移植- PVCパイプ・システムに、レタス、ハツカダイコン、イチゴ、キャベツ、ハーブ草などを移植。この活動は集団となって実施されました。
―レタスに給液する園児―
―レタスの種を観察―
―レタスを観察する園児―
教育のプロセス
話は、親や家族、学校関係者にも伝えられました。それに興味を持っていたすべての人に情報は開放されました。話の目的は、教育的な観点から見た経験に関連づけて幼稚園での体験を評価することでした。全過程が写真で例証されました。このようにして、親が彼らの子供が経験した教育のプロセスの理解を助けることを可能にしました。
味見と試食
収穫準備が整うと、幾種類かの作物(レタス、エゾアサツキ、ハツカダイコン、バジルなど)は子供たちによって集められて洗われ、サラダ用として、酢、レモンおよび塩と共に準備された。これは常に、教師の監督の下で行われました。スナック・テーブルが置かれました。また、子供たちはサラダを味見し、食べるように勇気付けされました。子供たちのメッセージは、「好きではないとしても味見はするわ、食べ残すかも知れないけど…」とあり、それは非常に有益でした。子供たちは充分其の好奇心を満たして呉れると感じました。其のメッセージは喜んで試食する意欲を刺激しました。このように、子供には、辛いハツカダイコン(それは時には見るのが楽しかった)を含む新しい味を経験する冒険をすることになりました。子供たちの90パーセントがいろいろな種類の収穫物の味見をしました。そして多数の子供は小さい時より好きになったと言い出し、子供の多くが出されたものを夢中になって食べました。
―育苗中のレタスー
―栽培中のレタスー
野菜の家への持ち帰り
作物の収穫が出来るようになると、家に持ち帰って家族と一緒に食べるように子供たちに与えられました。親への伝言として野菜が無事に家へ到着した事を確信するための指示が連絡用の学校コミュニケーション(日記)の中に次のように書かれました。そして、子供たちは各々家に持ち帰りました。
- 水耕で育てられた2種類のレタス1箱。
- バジルまたはパセリ1本、花は栽培用の固体媒体の中に植えて育てられています。これらの植物は家で土の中に移植し、夏の間、其の成長プロセスを継続して子供と家族で観察するようにとなっていました。
スーパーマーケットの訪問
スーパーマーケットへの訪問の目的は、子供たちが、一旦収穫された野菜および果物がスーパーマーケットに到着し、販売する為に棚に並べられるまでの複雑な一切のプロセスを理解させることにありました。そして、子供たちは全プロセス、トラックからの箱の荷おろし、冷蔵室への運び込み、野菜や果物の計量やパッキング、値札付けや陳列などを見る事ができました。
―育苗中のレタスー
結果について
子供たちは実際に手で触っての経験、植物の成長についての直接の観察を行って作物を収穫して食べるまで継続的に関与する事で各子供が最後まで一貫して経験できました。
知識に関する点では、植物のニーズおよび機能について知り、成長しているプロセスでの人の介在の重要性を理解しました。学習のその他の分野では、さらに、子供たちは植物栽培の経験を、数学、自然科学、読み書きの能力、芸術および音楽に関連づけて学びました。
開発の価値
水耕プロジェクトは、子供たちの種子から収穫までの成長サイクル中で植物を世話する実行責任を促進しました。さらに、子供にライフサイエンスに対しての尊厳を学ばせ、プロジェクトの一員として食物や園芸草花の生産者としての自負心を育てる支援となりました。水耕プロジェクトはチームとして共に働く方法を子供に教えただけでなく、健全な食習慣の育成の支援となりました。
食習慣
4歳から5歳では、まだ食習慣が発達中であります。プロジェクトの重要な点は、子供およびその家族の食習慣での改善でもありました。3か月間で、食事中の野菜の摂取量は51%から74%と23%も増加しました。
家族への影響
水耕プロジェクトは、家族と子供の間の対話を促進する結果となりました。また、親たちは興味を持って子供の進歩について見守りました。親は、さらに子供が科学的な事実に関するより多くの知識を示したと話し、それがどのように行われたか、教師に質問しました。何人かの子供たちがより多くの植物を植える事を求めて、庭の植物の世話にも参加するようになりました。他の子供たちは、家の庭の鉢植えを始めたり、種子を求めたりしました。何人かの子供は、学校へ(ヒマワリとイチゴなど)の植物を持って行くようになり、かつスナック時にトマトあるいは他の珍しい果物を持っていくと親に依頼しました。
子供たちは、食物、特に果物および野菜へのより多くの関心を示し、食事の準備にもっとかかわるようになりました。親は、子供の健康によい食物を含む食事に変更することが可能であるという思いを抱いています。親はそうした経験は子供の栄養を改善する有効な方法であることを悟りました。
体験の終わりに、子供たちは各自の高品質な作物を家へ持ち帰りました。そして、レタスがテーブルに運ばれるときは、特別な瞬間であります。そこでは、子供は家の中の最も重要人物になるセレモニーのようなものであります。誰でもが家族の持っていない知識と体験で子供が評価される人となることを認めるのです。
―お持ち帰り前の記念撮影―
―はいーどうぞ!-
父母による最終評価
93%の事例で親は、水耕体験は自分の息子および娘に良い動機を与える結果となったと述べました。子供たちが育て家に持ち帰った最終生産物は優れた品質であると思われました。子供たちの78%は家でも植物を栽培するように動機づけられました。親のうちの90%は、子供たちの能力の促進にはこれらの活動を継続することが非常に重要であると言っています。
結論
簡易化された水耕栽培法は、幼児の中に好奇心を起こさせ、学習しようとする能力を刺激する事から、教育プロセスでの価値あるツールであることは明白であります。さらに、子供たちをより自然に近付けて、短い時間で成果が上げられることを子供たちが知る事で個人的な充足と自からの価値を向上させることになります。
これはプロジェクトに関係したすべての人々のための最も価値のある体験でした。結局、プロジェクトは、学校で開始されて子供の知識およびよりよい食習慣を発展させる一方、その家族へも、其の「成果」を受け渡すことになりました。教育のツールとして、この単純化された水耕栽培法は、ラテンアメリカでの他の教育機関でも採用されるべきだと思います。
―始めは怪訝そうに眺める園児―
著者に就いて
マーティンCaldeyro Stajano Ing。(M。sc.。)Uruguayan水耕栽培協会(Asociacion Urugauya de Hidroponia)会長、およびAQUAFOOD(ラテンアメリカ各地での水耕栽培技術の教育および実践的な適用に重要な役割を果たす活動)の主宰者
以上ですが、新プランター栽培方式のミニポット栽培ならもっと簡単です。 園児が一人ひとり、自分のポットに乾いて居たら、予め既定の濃度に希釈した養液を水差しで溢れるまで給液すれば良く、その上、露天栽培出来るので、雨が降っても構いません。しかも此の記事で紹介したようなレタスやバジル、ミニドワーフトマトが育つのですから、申し分ないと思います。
既に10年以上、ひと昔前の話で恐縮ですが、敢えてブログで紹介して見ました。此の機会に、近くの幼稚園からレタス栽培を始めてみてはどうかと紹介しようと思って居ます。皆さんどんな反応を示すか楽しみですが、親御さんが理解していない新しい事を園児にやらせるなど、日本では通用しないかもしれませんねー。
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