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卵巣嚢腫で体調を崩した神楽ちゃん

2014年04月17日 | 診療科目

神楽ちゃんとの出会いは、お家に来てすぐにパルボウイルスに感染して生死をさまよった時でした。

奇跡の復活を遂げた神楽ちゃん、その後はお肌とお耳のトラブル以外はいつも元気でしたが、5才を迎えたすぐに体調を崩して来院されました。

「今朝から3-4回泡のようなものを吐いてます。元気はあるが食欲が無い。もしかしたらネズミを食べたかも・・・」とのことでした。

診察室でみた神楽ちゃん、それでも少し元気が無いように感じましたので、各種検査を行ったところ、ネズミを食べた形跡はありませんでしたが、気になる幾つかの異常が認められました。

1.大腸領域に下痢便と思われる内容物あり

2.通常40%台あるPCV(血の濃さ)が35%に低下している

3.胆泥の存在

4.左側卵巣が直径10mmに拡大

さて、これらの問題点、今回吐いて食欲が無いことに関連性があるのか検証していく必要はありますが、手順としては今の状態が救急状態ではないようなので、飼い主の方と相談した結果、さらに突っ込んだ検査をせずに一般的な急性胃腸炎の治療反応をみることになりました。

実際は投薬と食事療法で約2種間ほど反応をみていった訳ですが、調子が良くなったり悪くなったりで不安定な状態が続きました。

さすがに、不安定な状態が続くので、その後再度検査を行った所、消化器系の異常所見は消失していたのですが、赤血球の再生像がみられない軽度の貧血の進行(PCV:31%)と左側卵巣の拡大が残った状態でした。

ここで、鑑別診断リストとして

1.慢性腸疾患

2.卵巣疾患からの性ホルモン疾患(エストロジェン過剰による骨髄抑制)

を考えなければなりませんが、慢性腸疾患であれば内視鏡で確定診断した後に内科療法、卵巣疾患であれば卵巣子宮全摘出術が治療法になります。

確定診断がついていない以上、同時に診断を進めて行く予定でしたが、その後すぐに呕吐や下痢といった消化器症状が見られなくなったので、卵巣疾患を優先的に治療することになりました。

↑摘出した卵巣子宮の全体像

↑左側の腫大した卵巣

↑手術後のちょっとしょんぼり気味の神楽ちゃん

 

さて、心配された卵巣の病理診断と術後ですが、病理診断名は「卵胞嚢腫」で非腫瘍性疾患で摘出後は問題無しです。

本人の経過は順調で約2週間後にはいつのも元気と変わらない状態になりました。

↑撫でられるのが大好きな神楽ちゃん

しかし、予想はしていましたが・・・血が増えてきません。

そうですエストロジェン過剰分泌よる骨髄の抑制はすぐには解消されないのです。

(ちなみに性腺腫瘍の場合はオス・メス関係なく、エストロジェン過剰による致死的な貧血を起こす可能性があるので、注意が必要です)

結果的に一般状態は良い状態を維持して行きましたが、血液の濃さが元の数値に回復するまでは、術後2ヶ月半もの期間がかかりました。

今思うと、手術の判断が遅れていれば貧血で命を失っていたかも知れないので、本当に間に合って良かったです!

↑ずっと元気なままでいてくださいね!

 

 

 

 


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