読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

雑誌「SIGHT」 続き

2007-12-16 21:21:14 | 雑誌の感想
「論座 2008年1月号」の中で、作家 宮崎学氏の「政治家に“クリーンさ”を求めるな 汚れたハトか、清潔なタカか」がおもしろかった。
 私は小泉氏、安倍氏などの日本型タカ派の代表たちは、汚れたハト派よりその本質においては汚れていると思う。
 それは成り上がり型の、つまり一代で昇りつめた政治家と違い、この人たちは2代目、3代目の政治家だ。「地盤」「看板」「カバン(金)」という政治家としての必要条件がすでに整った人たちだ。
 成り上がりのハト派はこの「カバン」がもともとない。そのためともすれば「汚れる」のであるが、小泉、安倍両氏などは、その必要がないために「清潔」であるかのように見えるだけだ。
 しかし厳密に言えば、先代、先々代から相続した「カバン」が清潔なものとは思えない。実際2代目、3代目政治家の資産公開を見るとその潤沢な資産に驚かされることが多い。
 次に、汚れたハト派について考えてみると次のようになる。「汚れた」ということは合法的か非合法的であるかを問わず、「金銭」を得ることを追求することである。
 金銭を得るということは、金を出す人(企業)と政治家との間では、ある種の合理的関係が条件となる。カネを出す人(企業)に利益を与えないかぎり、その関係は成立しない。つまりギブ・アンド・テイクの関係だ。
 この合理性の壁が憲法問題などの「平和」に関わる時にはタカ派の理念優先型の暴走とは逆方向へと向かわせる。この合理性がハト派の政治感性の基盤であると私は考える。ハト派は汚れることによってハト派たり得たというところがある。

雑誌「SIGHT」2008年1月増刊号でおもしろかったのは「特別対談 枝野幸男×後藤田正純」だった。民主党の対中強硬派(ウィキペディアによれば)と自民党のハト派ってことで、なんか所属政党が入れ替わってもかまわんのじゃないかという感じがした。
メディア戦略について
枝野 まあ、やっぱり世論というのはある意味でぶれがあるものだと思うんです。明らかに小泉さんの功罪の罪のほうで(中略)端的に言えば選挙が最後の一週間で決まるみたいな、そういう状況になってしまっている。テレ・ポリティクスという言葉ができ上がっている通り、これがこのまま続いたら大変なことになる。そろそろみんなテレビのワイドショーなんかは半耳で聞かなきゃいけないよねと、そういうところに行くのかどうか、今はその分岐点だと思うんですけどね。
――ただ、そうはいっても「わかりやすく、一発で伝える」ためのコピー能力なりメディア戦略は、民主党も積極的に取り入れる必要があるのではないですか。
枝野 こういうこと自体が失格なのかもしれないけれども、仮にそう思ってたとしてもそれは言っちゃいけないんですよ。つまりね、ぼくは小泉さんが郵政選挙で成功して、安倍さんがメディア戦略で失敗したと言われている決定的な要因は、本人のキャラクターもそうなんだけど、小泉さんはメディア戦略を仕掛けますよということを言わずに成功をした。で、安倍さんは、そのメディア戦略に上手く乗っかろうってことが見え見えになってたわけなんですよ。メディア戦略を仕掛けてますっていうことを有権者に向かって発信するというのは、最悪のメディア戦略です。
後藤田 まったくおっしゃる通りで、安倍さんのときには、メディア戦略担当がメディアに出ているという大変馬鹿げたことが起きたでしょ。(中略)実はこの問題に対しては、ぼくは枝野先生とまったく逆のこと言ってるんですよね。やっぱりメディアに対してはおかしいだろうとみんなが思い始めてて、そろそろ本当のことを言う政治家を求めてるんじゃないかと。
 やっぱり我々政治家は、策を弄するよりも、メッセージ性が高い本当のことを端的に繰り返し言う。これだと思うんですよ。
枝野 明確で本当のことを言う政治を求めてるっていうのはまったく同感です。ただ、ぼくが分岐点というのは、それに政治の側が応えられる状況であるのかどうかということなんですね。まさにそこが分岐点で、これに応えられないとますます大衆迎合の政治になってしまう。

後藤田さんは自民党の正統保守派なんだな。「編集部からの10の質問」の中で「政界再編が噂されています。仮に再編が行われるとしたら、何を争点に行われるべきだとお考えですか?」という問いに「アジア外交⇔対米重視、国家主義⇔国民主義、自由⇔規律」という答えだった。
後藤田 まず、靖国の問題は、わたしらの時代で解決しなければならない。で、ぼくは日米安保条約というのは、(旧)ソ連に対する軍事同盟だったわけで、これはもう時代の終焉を迎えていると思う。今アジアの有事は台湾と北朝鮮であり、ワンチャイナ、ワンコリアを目指す中では、新しいアジア外交を樹立しなければならない。ただ自民党の中にもいまだに媚中外交だと批判する人がいたり、中国は脅威だとおっしゃる方がいたりするから、そんな状況ではなかなか難しい。

枝野 そもそもぼくはね、外交って争点にしちゃいけないと思うんですよ。国内だったらいろんな政策誘導である程度までは、やっていけるかもしれないけど、アメリカ国内や中国の世論がどうなるかなんて我々にはコントロールしようがないんだから。ものすごいリアリズムな世界にいるわけですから。どういう立場にしても極論はあり得ないんです。
 で、残念ながら日本外交は、特に安全保障が絡むと極論同士で議論してしまうんですよ。で、その極論にはぼくはまったく関心がない。

――ただ外交におけるビジョンというのはやはり必要じゃないですか。ビジョンなき日本外交の失態は、各方面から指摘されているわけで。
枝野 ただぼくはあえていうけどね、どういうビジョンを持てるの?ビジョンを持たないからダメだって言う人で、「こういうビジョンがありますけど」って言うのを聞いたことがない。大体、ビジョンを持って日本が外交を先導できるほど国力があるんですか、ぼくはないと思ってる。そういう勘違いをしたのが大東亜共栄圏でしょ。たとえば今の客観的な国際情勢の中だったら、もうちょっと中国とは信頼関係を作んなくちゃいけないとかね、それをぼくはビジョンとは言わない。それはウエイトのかけ方の問題なのであって。ビジョンがあると縛られるじゃないですか。

政界再編の軸に対する枝野さんの答えは「選択的夫婦別姓の賛否」で、民主党らしくていいですが、これは別に重要課題ということでおっしゃったのではなく「二者択一」ができるし、リベラルかどうかの分かりやすい分水嶺だからという現実的なお答です。枝野さんは二大政党制を実現すべきだという意見です。

枝野 たとえば旧民主党を作った96年のときには一種純化路線をとろうとしたんですよ。純化路線をとろうとしたんだけれども、あえて言えば、結局いろんな人が入ってくるのを止められないんですよね。つまり勝馬に乗るんですよ。で、また要らない人ほど勝馬に乗るわけで(笑)。だから、大連立というよりは、少なくとも政権交代をして、お互いが与党と野党に慣れる、で、一旦野党になってもまたすぐ与党になれるんだという状態がお互いに共有されないと、何となくとりあえず次に与党になれそうなほうにどっと人が流れるということになりかねない。
後藤田 うん。まあ、そうですね、ぼくも1回、民主さんに政権をとってもらっても構わないって地元でも申し上げてるんだけど。それによって、権力の責任を感じていただけば、議論もまた噛み合うようになりますからね。
枝野 そういう、自分が野党になることを前提とした再編論をおっしゃる自民党の方って、後藤田さんの他にぼくはひとりしか知らない(笑)。
――どなたですか。
枝野 (山本)一太さん。他の人は当たり前のように再編後自分が与党っていう前提で話すんです。

えーっと、山本一太さんのあの風通しのよさは何かな?と思ってたら、M2シリーズの中で宮崎哲弥氏が友達だと言っていた。なるほど情報の伝達経路はそうなのか。

まあ、風通しのいい人たちにがんばっていただきたいです。

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