読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

「多文化共生」以前の現状

2008-12-10 00:56:30 | 時事
 日曜日、福山市主催の世界人権宣言60周年記念「2008ふくやま人権・平和フェスタ」に行って来た。PTAの専門委員会会報のネタにするためだ。
 午前中は6分科会に分かれて報告とディスカッションがあって、私は先日PTAの講演会に来て頂いた講師の先生がおられる「外国籍市民」の分科会に出席した。

 地元FMラジオ局で今年から始まった多言語放送で、ポルトガル語の番組を担当している日系ブラジル人通訳の女性と、英語及びタガログ語の番組担当の女性英語教師のがそれぞれ日系ブラジル人労働者、国際結婚したフィリピン人女性の抱える問題について話をされた。それから去年NHKの特集番組で取り上げられた中国人研修生の相談を受けてトラブル解決に尽力をしている地元労組「ユニオンたんぽぽ」の書記長から、外国人研修生の労働実態や相談に乗った事例について詳しい報告もあった。

 日系ブラジル人労働者の現状

 この1、2か月、大量解雇のニュースが続々と報じられてあきれて物も言えないが、日系ブラジル人の置かれている状況はもっとひどいそうだ。国に帰りたくとも、今飛行機が3月末まで満席で取れない。3月まで住む家も収入もない。カトリック教会に駆け込んだり橋の下にビニールシートを張って寝泊まりしたりしている人もいるという。帰れる人はまだいいが、一生家族と日本に住むつもりだった人もいる。必死に仕事を探しているが、今は日本人でさえ仕事がないのに言葉もおぼつかない日系人はなおさらだ。「まさか、日本がこんな状態になるなんて夢にも思わなかった」と呆然としているという。まったく、日本人だって呆然としてるんだからそりゃあそうだ。

 今の状況はもう非常事態だと思う。災害とおなじだ。だから自治体も民間ボランティア団体も宗教団体も協力して、炊き出しや宿泊の世話などホームレス状態の人のサポートをしなくちゃいけないと思う。とにかく経済状況が回復するまで、みんなで死なないように助け合わなくてはだめだ。自分に何ができるかを考えていて、とりあえず地元のカトリック教会がそのようなホームレス対策をしているようだから行ってみようと思った。

 国際結婚したフィリピン人女性の現状

 日本人と結婚したフィリピン人女性のサポートをしている方からは、彼女たちの抱えるさまざまな問題について話があった。

 フィリピンから来日する女性はほとんどがエンターテイナービザだそうだ。ダンサーとして来日するのだが、実質的にはホステスなど水商売に従事させられる。嫌だと思っても家族に送金しなくてはいけないので何でもしなくてはいけない。店で知り合った男性と結婚するが、ほとんどの男性は「情けない男」。文化や生活習慣の違いをわかろうとしないで「フィリピンは貧乏で危険汚い劣った国」という先入観で決めつける。言葉がうまくしゃべれないのをバカにして暴力をふるう。親兄弟にも結婚したことを内緒にしている人がいる。姑が亡くなったと聞いてどうしてもお葬式に出たいと思い、こっそり行って大変なことになった人がいた。
 子供の教育も困難で、母親が文字や言葉を教えることができないので小学校段階からついていけない。このような子供にはマンツーマンで時間をかけて教えることが必要なのだが、今先生たちはとても忙しく、そういう時間がとれない。生活習慣や伝統の違いから地域社会でも家庭が孤立している。やはりここにも偏見がある。
 彼女らの側にも問題がある。子供が生まれたら洗礼を受けさせたい、女の子にはピアスをしてやりたい。だけどそれは日本社会では受け入れられないのだと言ってもなかなか理解しない。教育の大切さがわからない。高校を卒業したらそれでもういいと言う。保険や年金のことも勉強しようとしない。結婚しても国の家族を養うために働いて送金するのを当然と思っているので夫とトラブルになる。離婚率が高い。離婚しても養育能力がないと主張されて子供を引き取ることができない。日本人と結婚するとビザの更新期間が半年から1年になり、子供が生まれると3年になるのだが、離婚して子供を手放したら帰国しなくてはならない。帰りたくないので再婚を急ぐが、また同じような「情けない男」と結婚してしまって同じようにDV被害に遭う。
 日本の制度の問題もたくさんある。たとえば運転免許。免許を取りたくてもなかなか取れない。国際免許の試験は英語と日本語しかない。英語が苦手な人も多い。日本語が読めても試験の引っかけ問題のような複雑な文章は全然だめ。27回受験して落ち続けている人もいる。日本社会はとても閉鎖的だ。
 「もっと地域に出て地域の人たちと付き合いなさい」とアドバイスをしている。「ひどい人もいるけど10人に1人くらいはやさしい人がいるからそういう人と付き合って認めてもらいなさい」と言っている。


 とてもシビアな報告で、腹が立ったのは、日本人女性にモテないからといって安易にフィリピン人女性と結婚して責任を果たさないダメ男のことだ。県北の農家なんかに国際結婚が多いと聞く。嫁は無給で黙々と働いて子供さえ産めばいいと思っている。「貧乏な国から来たんだからどういう扱いをしても文句を言わないだろう」と偏見を持ってひどい扱いをしたりする。威張りくさって暴力をふるうなんて最低だ。雇用だけでなく、結婚に関しても外国人労働者が下支えして日本を救済していてくれたのかと思った。
 
中国人研修・実習生の実情

 ユニオンたんぽぽは3年前に発足したばかりの労組だ。それが去年の4月に突然中国人研修生の相談を受け、それ以後怒涛のように相談が相次いで今月までに70件。最近少し落ち着いてきたそうだ。今手がけているのは今治のタオル工場。あまりの待遇の悪さと賃金未払いのため研修生が逃げ出した。未払い賃金の請求交渉をしているが会社が倒産し、多額の借金もあるので回収が難しいという。

 中国人研修生の問題についてはこのサイトにピックアップしてあるし、ユニオンたんぽぽの扱った件もネット上に載ってた。
『日本の事件から浮かび上がる中国人研修生問題』
「莫 邦富の中国ビジネス指南」(2008年7月7日)より

 話を聞いて思ったのは、研修生制度というものが欺瞞に満ちていてすでに破綻しているのじゃないかということだ。国際貢献とか技術指導とかそういう名目とはまったくかけ離れたものになってしまっている。そしてこの地域でもそうなのだが、すでに中国人研修生の労働力に依存しなくては経営が成り立たない中小企業がたくさんあるのだから研修生などという偽りの制度は廃止して、きちんと労働条件を保護した上で受け入れを認めるべきだ。

 「ひどい低賃金と長時間労働。残業が月250時間という事例もあった。過労死のラインが80時間だ。就業時間中トイレに立つことも許されない。トイレ一回罰金1万円を取っていた会社もあった。寮は狭い部屋に二段ベッドというタコ部屋状態。給料は月平均6万で衣食住は面倒をみることになっているが十分ではない。食費は一日500円支給という質素さ。研修制度では一年目は残業してはいけないことになっているが暗黙の了解でほとんどの受け入れ先が残業させている。二年目以降は技能実習生として法定賃金の時給を受け取ることになっているがほとんどはそれ以下。造船や鉄鋼など3Kの仕事でも時給600円くらい。過酷な労働状況でも文句が言えない。中国を出る時に送り先機関と契約書を交わし「受け入れ先の社長のいうことには絶対服従」「携帯、パソコン、電話など外部との連絡の禁止」「恋愛禁止」などと書かれたものにサインをして来ているからだ。「儲かる」と中国人ブローカーにだまされて実情をよく知らずに来た人や多額の仲介料を払った人もいる。」

 最近の若い中国人はみんな携帯もネットも自由に使って情報収集をする。携帯でこっそり録画された動画を見た。狭い寮の部屋で畳に寝そべってテレビを見ている男性。ミニスカートをはいた二人の女性が男性の足の上をふみふみマッサージしている映像。何人かの女性が携帯が見えないように立っていてその影から隠し撮りをしている様子。緊張した静けさの中でテレビの声とだらけ切った男性の姿だけが異様だ。
 これは県北の縫製会社の事例で、労働条件とセクハラのひどさに耐えかねて研修生が訴えてきたものだ。社長は賃金不払いは認めたが、映像があるにもかかわらずとうとうセクハラに対しては一切謝罪しなかったそうだ。
 最初、研修生たちは地元の警察に駆け込んだのだが、そこの署長は社長の友人だったので相手にしてもらえなかったそうだ。社長は地元の名士で青年会議所の会長などもやっていて、休日に友人を連れて飲みに行くときには研修生をホステス代わりに使っていた。(休みの日なのに接待!)そして研修生にパンツを下ろさせたりセクハラし放題。でも「親交を深めるために善意で飲みにつれて行ってやっていた」と主張しているそうだ。警察も仲間なんだからそらーとりあってもらえるはずがない。休みの日には寮にしけこんでマッサージなどの奉仕をさせる。上記の映像もゴルフに行って帰って疲れたからマッサージしてもらいに来たそうな。
 彼女たちは、それから労働基準監督署にも行ったが地元ではらちがあかないのでとうとう広島に出て行ってNHKに駆け込んだ。そうしたら、たまたま例の番組を作ったプロデューサーがいてユニオンに取り次いでくれたということだった。「地元では名士でいいお父さん、いいおじさんなのに外国人に対しては平気で差別的な扱いをする」と書記長が言っていたがまったく日本人として恥ずかしいと思った。

 自民党も経団連も、それから「移民立国」とか言っている人たちも、こういう現状をまずなんとかしてから移民の受け入れを決めてくれよと思う。

「たかじん」で中山さんを見て思ったこと

2008-11-25 22:21:28 | 時事
 先日、「ハンサムスーツ」という映画を観てびっくりした。「えー、谷原章介って、やっぱりハンサムだったのか。」この年になると人の顔は記号みたいなもので、あんまりハンサムかどうかなんて気にしないのだけど、「王様のブランチ」で司会してる人はいつも目がキラキラして髪形も変だし、まるで雑誌のモデルみたいだと思っていたらほんとにモデル出身のタレントだったのだ。若手の局アナにしてはおかしいと思った。

 久しぶりに笑った愉快な映画だったし、あのぽわんとした色彩も好きだ。だけどそれにしてもどーも、違和感がある。冒頭に出てくるハンサムボーイ達の写真が私には全然ハンサムに見えないのはどうしたことか。最近のハンサムはああいうのを言うのか?だいたい私はヨン様だってハンサムには見えないのだ。(草食動物系じゃん。ちょっと噛んだらすぐに血が出て死にそう)最近のジャニーズ系などは特に、育ちも頭も悪いただのガキに見える。それに、塚地武雅が谷原章介に化けたとしても、あの軽薄なしゃべり方、振舞い方ではとてもかっこいい男とは思えない。なのに顔が谷原章介になった途端、わっと女の子が群がって来るという映画のシチュエーションが変だと思った。

 生物多様性という言葉がある。いろいろな種が多様に存在する状況、そして種の内部でも遺伝子がヴァリエーションに富んでいる状況。人もつがい形成においてそれぞれ好みがばらけていて、いろんな容姿才能の子が生まれるという多様な状況の方が種の存続には望ましいと思う。環境が激変したらどうするんだ。女がみんなああいうヘニャっとしたジャニーズ系の男にばかりなびいていたら、子孫はどんどん細くナヨナヨしてきて、顎も尖って咀嚼力が落ちる。生存戦略上よくないと思う。谷原章介が好きな女性も、塚地武雅の方があったかそうで食べでもありそうなのでタイプだって女性もいろいろいた方がいいのだ。

 ということを映画を見ながら考えていて連想したのは、最近のネット右翼のステレオタイプな発言。あったまカチカチじゃないのか?いろいろな物事の背景を全然知らないのにすぐに善悪、ウヨ―サヨとかステレオタイプな見方で決めつける。最近の日本の男というのはいつからこんなにもの知らずで偏見に満ちてそのくせ変な自尊心を持った鼻もちならない奴になったのかとあきれることばかりだ。きっと韓流なんてものが流行るのも遺伝子が呼んでるんだと思う。このままだと進化の袋小路に入り込んでしまうからできるだけ生物多様性を確保しようという無意識が働いてるんじゃないか?

 日本社会自体がすごくカチカチで息苦しい気がする。いろんな文化を持つ人をどんどん入れた方がいい。というより他に選択肢はない。なのに移民を受け入れると犯罪が増えるとか日本のよき文化が失われるとか言って頭から反対する人は、どっか田舎にゲーテッドコミュニティーでも作って住めばいいと思う。そんな地域おもしろくもなんともない。多様性に対応できる思考振る舞いを身につける他に生き延びる道はない。試行錯誤しながらやっていくしかないのだ。できるだけ早く。
社会】「厚生年金」お年寄り1人を現役世代"2.82人"で支えている 10年前は4.76人…厚労省調査
(2ちゃんねるのマモノ板って役に立つよね)

 ところで・・・・
 23日(日)の「たかじん」には「失言三連発」の中山成彬元国交相が出演していた。出演者のいろいろな批判に対して「私は、子供たちのことを思って・・・」と、最後にはそれしか言わないのでガックリした。妻中山恭子さんからのお手紙朗読というちょっとしんみりするシーンもあったけどおかしいよ。なんでそんなの読む必要があるの?恭子さんはよい人らしいけども、あんなとんちんかんな発言をほんとに正しいと思って信じてるのだろうか?いかにも右翼の人が感動しそうなお手紙だけど、夫婦間のことはともかく、政治家が仮に自分の思い込みで間違った方向に先導してくれたのでは国民はたまったもんじゃないのだ。

 うちの子の学校の校長先生が常々強調する学校の教育目標のひとつに「ベクトルを合わせる」というのがある。これは元和田中校長、藤原和博氏の言葉だ。社会は刻々と状況が変わっていく。大事なのはそれに対して自分がどのように対応するか、方向を見定め、目標を決めてエネルギーを注ぐ、その無限のベクトル合わせが必要なので、まるであさっての方向にエネルギーを注いでもダメだ。ベクトルを合わせるためには常に正しい状況判断ができなくてはいけない。今まで通りの決まり切ったやり方をステレオタイプに守るだけではやっていけなくなってきていると誰もが感じているはずだ。言われたことしかできないんじゃだめだ。自分の頭で考え、行動する新しいタイプの子を育てる教育をしなきゃ日本に未来はない。それを、既に弱体化している日教組がガンだなんて時代遅れの認識でわざわざ大金をかけて学力テストを復活させてそれで教育がよくなると思い込んでいるってところがすでに老害化しているから失言でやめてくださってほんとによかったと思った。失言ったって、「単一民族」なんてまったくステレオタイプな保守的歴史観とマイノリティーに対する偏見がついポロッと本音で出たわけで麻生総理の漢字の読み間違いとはわけが違う。案の定お題の「田母神発言」に対しても「正しい」と支持されてて、「今までの自虐史観」とか言うし、「過激な性教育」とか現状認識を欠いた決めつけの決まり文句連発だった。

 やはり問題は、こういう善―悪二元論で論じようとする硬直した発想だなあと思った。だから過去を正当化しなきゃいけなくなるのだ。田嶋さんも言っていたけど、なんで過去の戦争を反省したら今の日本がダメだということになるのか。もちろん当時は植民地主義の時代だった。このままでは日本も食われてしまうところだったし石油も止められて兵糧攻めにあっていた。戦後だってアメリカやヨーロッパ諸国は旧植民地で資源や労働力のあくどい搾取をしてきた。でもだからって日本が当時中国大陸や他のアジア諸国でやったことが正当化されることは決してない。植民地争奪戦争で残虐な行為の数々を犯したということを認めて謝罪することでしか発展的な未来の関係は築けないし、今アメリカや中国やロシアの覇権主義を批難することもできないと思う。


 こういう、「日本を守る」と言いながら未来の可能性を害するような政治家はやめてほしいと思う。そんなことをガタガタ言っている暇はないはずだ。
 来週の「たかじん」には田母神氏が出演するそうだ。楽しみだ。中山氏と他の出演者のやり取りを聞きながら思ったが、右翼番組「たかじん」のスタンスは右翼的視聴者のニーズに答えることで特化していくのか、それとも「とんでも右翼」を叩いてみせることで常識的保守の知性教養を見せつけようというのか、あるいは「右翼に発言の場を与えないと先鋭化して暴発する危険性がある」と思っているのか、単に対立軸を作ってバトルをすると視聴率が取れるからか、どうなんだろ。

テロかどうか不明であるけど

2008-11-22 00:56:52 | 時事
 元厚生次官殺傷事件のニュースを聞いて、私がまっ先に思い浮かべたのは、例の自民党のホームページだった。
 
 以前よりもかなり派手派手しくなったが、制作パンフレットはそのままだ。「あきれた社会保険庁の実態」で、「はっきり見えてきました。わたしたちの『敵』の姿が」と言っている。社会保険庁を「敵」認定しているのだ。国民の「敵」なんだから成敗してしかるべきと考える奴が出てくるのも当然だ。先日の森達也氏の警告がとてもリアルに感じられた。「敵―味方」という単純な二分法によって意見が異なるものを攻撃し排除しようとする最近の世論に顕著な思考の傾向が行きつく先がテロであり、戦争であるということをもっと自民党は自覚するべきだ。なんだよ!「ここまで進んだ小泉改革宣言」なんて今ではギャグだよ。先日TVタックルを見ていたら屋山太郎氏が道路特定財源の問題に関して「麻生さんにはシステムが悪いという頭がない」と言っていた。10数年くらい前まではうまく回っていたシステムだけど今ではすっかり時代に合わなくなり、自己肥大化してしまって害を及ぼすようになったから変えなくてはいけない、だから・・・と言って「外部環境がこう変化した。それに対応するためにこのような基本方針でいく。そのためにこのような新しいシステムを構築するのだ」という説明を、政治家は国民にしなくちゃいけない。全然だめじゃないか。麻生さんも自民党も。

 「今ひどいことになっているのは、あいつらが悪いからだ」と名指しして、そいつらを排除すれば万事解決ってなわけないだろ。もしもそういう論法を許すならば、大義のないイラク戦争によって天文学的大赤字を作り(そしていずれはそのツケを世界中に配分するのだろう)ブッシュ政権、・・・サブプライムローンという毒入り団子を世界中にばらまいて経済を大恐慌に陥らせたブッシュ政権、そしてそれに追随してイラクに自衛隊を派遣し、アメリカ型自由主義経済路線を突っ走って大量の貧困層を生み出した小泉元首相なんかは国民の一番の敵じゃないか。小泉さんを(あるいは麻生さんを)殺せば問題解決できるのか?そんなことはないだろう。

 自民党のネガティブキャンペーンは結局、自分で自分の首を絞めることになるだろう。あんなパンフレットを作った人は次の選挙で落選するに違いない。国民の不平不満を扇動して非難の矛先を別なところに持っていこうとする姑息なやり方がいかに危険なことであるかよくわかった。そして、麻生さんを見ていると自民党が賞味期限切れだってこともよくわかる。日本が生き延びるための、その場凌ぎでないきちんとしたビジョンを持っている政治家はどこかにいるのだろうか。

 もし定額給付金が出たら、うちはほとんどはローンの繰り上げ返済に使う予定だけど、私の分は「寄付するからちょうだい」と言ってある。民主党に寄付するつもりだ。将来もっと生活が厳しくなることがわかっているのだからぱっと使ったりできない。貨幣価値を将来に繰り越すためには貯金か借金の返済しかないけれども、民主党を支持するのも将来への投資の一つの方法だと思う。将来の選択肢が広がる。
 今、続々と製造業で派遣従業員が解雇されている。たいへんな規模の失業者が出ることが予測される。浅く広くばらまいている場合じゃない。給付金で景気刺激なんて悠長なことを言っていては餓死、凍死してしまう人が出かねない。まず緊急に失業者対策をするべきだと思う。

 何が不安かって、政府が信頼できないっていうのが一番不安だ。いったい誰が、不況への対処策を知っているかわからないっていうのが不安だ。もしかして首相もブッシュ並みにアホなんじゃないかと思えるのが不安だ。(だいたい安倍元首相が麻生総理を支持してるってところからして傾向がわかるじゃないか)アメリカでオバマさんが党派を超えて協力し合って危機を乗り越えようなどと呼びかけているときに、この国では「ああしようか、こうしようか」と言を左右にしたり、同じ党内で意見の統一がまったくとれてなかったり、閣僚や官僚のレベルの低い失言が相次いだり、迷走という言葉が思い浮かぶような情けなさだ。

 もう、そういうの飽きたからチェンジしてくれ!

田母神前幕僚長の論文とか・・・

2008-11-12 13:37:07 | 時事
 従軍慰安婦への謝罪・賠償要求

 今朝、新聞を読むと「台湾の立法院が従軍慰安婦への謝罪・賠償を求める決議を採択した」という記事が目についた。
「決議案は、与党国民党と野党民進党の議員らが共同で提出。」おいおい、台湾は親日で従軍慰安婦は存在しないってことじゃなかった?「たかじん」で金美鈴さんが「私はずっと聞き取り調査をしたけれども、無理やり連れて行かれたなんて人は一人もいなかった。」とか言って、「そんなことはない!」という田嶋さんは猛烈にバッシングされてなかった?
ウィキペディア 金美齢
日本統治時代を批判してきた金だが1996年、産経新聞が始めた新しい歴史教科書をつくる会の運動に連動するかのように「台湾で生きている日本精神」を発表する。日本の保守派は歓迎してこれを受け入れ、日本統治を賛美する本が日本人の手で次々に出版されるようになる、

2001年2月に勃発した小林よしのりの『台湾論』騒動では、台湾立法院(台湾の国会に相当)が小林の台湾入国禁止を決定。これに対し金は、「民主主義と言論の自由への弾圧」「言論の自由は守られるべき」と抗議のため帰国。メディアを通じて、立法院で多数を占める野党国民党を激しく批判。

日本の台湾統治は清国政府や後の蒋介石よりはましであったにしても植民地は植民地だ。人権侵害も抑圧もあったし、いくら親日派が多いからって「だから日本の統治は台湾に発展をもたらした」などと胸を張っていうものじゃないだろう。金美齢さんの右翼的な発言を聞きながら、台湾の一般人はそうは思ってないはずだということを知っている私は、あの人が台湾を代表する評論家として日本のメディアでもてはやされている状況を、あちらではどう見ているだろうかといつも思っていた。きっと、中国に飲み込まれないためには日本と「仲良く」するしかないと必死にヨイショしてるんだと思ってた。
金さんを国策顧問に任命した陳水扁総統も汚職で逮捕されちゃったし・・・。

台湾の元「慰安婦」裁判を支援する会 
台湾の政治はこれからも二転三転するかもしれないが、アメリカでも人権問題を重視する民主党が政権を取ってこれから日本を見る目はますます厳しくなるだろうと思う。そんな時に田母神論文ですよ。ワシントンポストの意見広告がアメリカ人の対日感情を悪化させ、結果的に謝罪決議案が可決される状況に至ったと同様なことが起こるだろうと思う。(あのとき、私は恥ずかしさと怒りで目がくらむ思いだった。あの広告を出した人たちの名前をよく覚えておこう。おお、映画「靖国」騒動の発端になった稲田朋美さんもいたなあ。「たかじん」の常連やゲストがいっぱいじゃん。)

 田母神論文

 テレビで「ザ!世界仰天ニュース」を見ていたところ、顔にシリコン注射をし続けた挙句、化け物のようになってしまった女性のエピソードが出ていた。最初はエラの張った輪郭を隠すため、ヤミ医者に注射してもらったのが病みつきになり、とにかく「きれいになりたい」とシリコン注射をし続けたのだ。ここに動画があった
 人間は過度のストレスに曝されると、かくもわけがわからなくなってしまうものなのか。この女性の場合「整形依存症」という心の病気であって、まず精神科で治療を受けなくてはいけなかったのだ。寄付によって何十回も再生手術を受けたけど、崩れて変色した顔はもう元には戻らない。これから一生後悔しながらあの顔で生きていかなくてはならないのだ。

 その番組を見た後で、NB online 伊藤乾「KY空幕長の国益空爆」を読んでいたら頭の中で不思議な融合が起きて「そうか、あの論文や広告や、右翼の方々の勘違い発言なんかは、自分が醜くなってしまうとわかっていてもシリコン注射をしないではいられないという症状とおんなじなんだ」という考えが浮かんだ。これまで積み上げてきた歴史的検証も、海外からどう見られるかという視点も、国益もまるで眼中にない。昨日の田母神氏の発言「日本はいい国だと言ったら解任された」などというのはほんとアホ過ぎる。アジア2000万人の犠牲者に対してはどう思っているのか。軍部の無謀な作戦で餓死、病死した多くの日本兵、大空襲や原爆でなくなった200万の犠牲者に対してどう思っているのか。今まで日本が行ってきた戦前の軍国主義への反省も、戦後の国際貢献、平和主義外交も台なしだ。しかも例によって、「インターネット上でのアンケートでは過半数が支持している」と中山さんみたいなことを言う。一応タカ派の麻生総理でさえ、外交を考えて「村山談話を継承」と発言して2ちゃんねらーをがっかりさせていたのに。無責任に言いっぱなしの人はいいよな。

 今回唯一の救いだったのは、私が保守派と思っていた人がちゃんと批判をしていることだ。前防衛大臣の石破さんはブログで論文批判をしてコメント欄が大繁盛してるし、「たかじん」では保守派の三宅さんが田嶋さんも顔負けの剣幕で批判をしてた。「日本は文民統制でいくと決めてるんだから、もしもの時に(自衛隊の出動が)遅れたってそれは仕方ないんです。」とゲストの軍事評論家、惠隆之介氏に言っていた。(動画が載ってる・・・)親米保守はわりと理性的なんだと思った。




中山国交相辞任

2008-09-29 00:08:13 | 時事
はやっ!
国交相辞任】「一体何だったのか」省内に脱力感 産経ニュース(2008.9.28 13:37)
午前10時半から始まった辞任会見で、中山氏は冒頭から「たくさんの方から『よく言ってくれた』『頑張れ』と山のようなメールをもらった」と述べ、日教組に関する発言が国民の支持を得ていることを強調。そのうえで、自らの発言が臨時国会の審議と次期総選挙に影響を及ぼすことを懸念して辞任することを明らかにした。

中山国交相:「日教組ぶっこわす」宮崎での発言要旨 毎日新聞 2008年9月27日 21時53分

最後の発言を聞いたとき、やっぱりおかしいよなあと思った。あの自民党の政策パンフレットにそっくりだ。(体裁はちょっと前と変わっているけど内容はほぼ同じだ)日教組=民主党じゃないと思うけどな。
 あと、どうでもいいけど日教組の組織率と学力テストの結果。(例の阿比留氏のブログ)

 それはともかく、問題は事実誤認による失言ってことじゃない。
1.「さまざまな犯罪が起こっている。あるいは親殺しとか。それは教育に問題があった。」(今の社会の荒廃は戦後教育が悪いから)

2.「特に日教組。何より問題なのは『内心の自由に立ち入らない』と言って、道徳教育に反対する。」(日教組が教育を悪くした)

3.「何とか日教組を解体しなければいかんと思っている。小泉さん流に言えば『日教組をぶっこわす』。この運動の先頭に立つ思いでいる。」(よって、日教組を解体しなければならない)

1について
 思い出したのは内田樹「私家版・ユダヤ文化論」(文芸新書)。P84
 19世紀的近代人はあらゆる事象は因果の糸で緊密に結びついており、その因果の糸を発見することこそが「科学的思考」であるという思い込みに深く領されていた。因果関係の発見こそが科学であるとする思考は「一つの結果には必ず一つの原因が対応している」という機械論的な世界観を不当前提とする。だから、「近代科学主義者」たちは例外なく政治過程を「機械」のメタファーで構想した。つまり、yを「出力」、xを「入力」と取ると、y=f(x)という方程式ですべては説明されると考えたのである。この場合のf(関数)は一種の「ブラックボックス」であって、それがどういうふうな構造であるかには副次的な重要性しかない。分子生物学者のルドルフ・シェーンハイマーはこれを「ペニー・ガム法」と名づけた。「ペニー・ガム法」とは自動販売機にペニー硬貨を投じるとガムが出てくることを、「銅がガムに変化した」と推論する思考のことである。(中略)
 陰謀史観は世界政治をこれに準じた「ペニー・ガム・メカニズム」として理解する。百円のコインを投じると百円分のガムが出てきて、二百円分のコインを投じると二百円分のガムが出てくる。ということは「帝国の瓦解」というような巨大な「ガム」の出力があった場合には、それにふさわしい「帝国規模の侵攻」が「ペニー」として入力されていなければならないことになる。(中略)
 歴史的な変動をある「見えざる工作者」の企図に帰すこの発想を私たちは陰謀史観と呼んでいるが、19世紀の政治思想家でこの弊を免れている者はほとんどいないと言ってよい。あの怜悧なマルクスでさえ、『ヘーゲル法哲学批判序論』ではこう書いている。(中略)
 社会がうまく機能していないのは、社会の不幸から受益している「悪者」がいるせいであるから、「悪者」を滅ぼせば社会はよくなる・・・・という19世紀的な「物語」をマルクスもまたここで繰り返している。私たちの注意を引くのは、マルクスの文言のうちの「でなければならない」の執拗な反復である。彼は社会の不幸のすべての原因であり、社会の不幸からひとり受益している「単一の非行者」が存在することを論証するに先んじてほとんど渇望していたのである。

 一般にある事象の背後には複数の原因が複雑に絡み合って存在している。飛行機事故ひとつ取り上げても、物理的原因、人為的ミス、その他複数の原因が存在していて、あとから検証しようとしてもなかなかわからないことが多い。ましてや「さまさまな犯罪」などという漠然とした事象の原因が戦後教育のせいだなどと考えるのはほとんど妄想の域だ。それに常識的なことだけど、戦後凶悪犯罪が多かったのは昭和30年代で、その後は一貫して犯罪の発生率は減ってきているはずだ。
(ブログ「少年犯罪データベースドア」
Googleブック検索「犯罪心理学」から
そしてこの本に書いてあるように犯罪に影響を及ぼしているのは都市化、情報化、共同体の空洞化という社会の変化だ。

2について
 「道徳教育の強化」と「愛国心教育」を推進してたのはこの人だったのか。そりゃそうだ。教育が個人のこころの内面に立ち入るべきじゃない。立ち入るったって容易じゃない。(先日、うちの子の学校のスクールカウンセラーの先生に子育てに関する話を聞いたけど実のところがっかりした。古臭い教育心理学の授業みたいなことしか言わない。まあ、のんびりしたうちの学校にはちょうどいいかと思った。害もないし)
 宮台なんか言うには、そもそも道徳教育を成り立たせる基盤というか前提がなくなってきているのが問題だ、そして、それは経済的発展のために農村社会を破壊し、共同体を弱体化してきた政治の責任でもあると言ってる。参考(「安藤哲也(Fathering Japan 代表)との子育てトークイベントに出ました」)確か自民党から招かれて話をしてきたとどこかに書いてあったがなあ。きっと中山さんのような人は、自分の都合のいい情報しか頭に入らないようなフィルターができてしまっているのだろう。

3について

 民主主義というのは、いろんな利益団体が多数存在し、それらが政治にさまざまな影響をおよぼしていく中で利害調整していくもんだ。ほら(ウィキペディア「利益団体」「日本の利益団体一覧」
たとえば、経団連の方針が若者の非正規雇用を増やし、社会に不満が高まって秋葉原の事件が起きた(と仮定して。間違っているけど)からといって「経団連をぶっつぶす」なんて政治家が言っていいわけがないし、また、たとえば鴻池さんが「株式会社の医療参入はよいことだ」と発言して日本医師会から猛反発を受けたからって、「医師会は構造改革の抵抗勢力」「ぶっつぶす!」とか言ったら大問題になりますね。それがなんで日教組だけいいのかな。ネット右翼の人たちは本当に日教組をつぶせば教育がよくなると思っているのだろうか。(教師の質はますます落ちると思う。だって組合もなくって1日12時間以上の労働時間で残業手当も出ず、おまけにクラブ指導や生徒指導で日曜祭日もない職業なんかに優秀な人材が集まるはずはないだろ)
 今まで自民党は、よくも悪しくもいろんな人がいる百貨店型の政党で、本来保守的な党であるにもかかわらず実際は公平分配、高福祉政策を実践してきたところが庶民に支持されていたのに、最近は方向転換を目指しているようだ。教育に競争原理を取り入れて上位校を優遇し、エリート的人材を育成しようと思っているのか。まあ、それならそれでいいのだ。エリートにこそ道徳、愛国心教育が必要だろう。エリートが自民党政治でダメになった国を見捨てて海外に出ていかないようにしっかり教育してくれ。