読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

雑誌二冊 その2

2008-02-28 22:59:21 | 雑誌の感想
 「PLAYBOY」4月号
 
 つい新聞広告につられてPLAYBOYを買ってしまったのだけど、帰って開いてみてやっと思い出した。この雑誌ってヌード写真いっぱいの男性雑誌だったっけ。見た次の瞬間思わず閉じてしまったよ。おへそにピアスしたぷりぷりの金髪美人のナイスバディーなグラビアがてんこ盛り。はあー、容姿に恵まれなかったわが身を省みてつくづく人生が儚くなりますな。
 それはまあどうでもいいのだ。買ったのは「この人の書斎が見たい!」という特集に惹かれたからだ。だって吉本隆明、ガルシア=マルケスですよ。内田樹、鹿島茂ですよ。私は人の本棚を見るのが好きだ。どんな本を読んでいるのか見たい。

 だけどこれって、「どんな本」じゃなくって「どんな書斎」ってところに焦点が合っていて、背表紙が読めないのでちょっとがっかり。

 吉本隆明の書斎は予想通り本に埋もれている。入りきらなかった本が書棚の前にうず高く積まれていてまるで穴倉のような暗い部屋だ。棚の空いたスペースに変な置物のようなものがいろいろあって、三度傘みたいなのも掛っていて、わー、昔っぽい書斎だと思う。いるよね、本棚にこけしとか火山岩とかおみやげの趣味の悪い状差しとかいっぱい置いてる人。うちの夫ですが。いやいやそういうのとは格が違う。

 かっこよかったのは石田衣良。「書斎は地下にあり、ホワイトを基調にした52畳のワンルーム。・・・美しく整然と保たれた書斎の壁に、高さ3.5メートル、幅約7メートルの巨大な書棚が配置されている。」わーお、高級美容院みたいだ。白い棚、白い床、白いソファ。ボックスシェルフの一部にはアナログ盤のジャケットが飾られているが、それは中の文庫本を隠すためらしい。「文庫の背表紙ってかっこよくないでしょ?」だって。さすが「おばさんの心をわしづかみ」にする超売れっ子作家。(私は2冊しか読んでないけど。)こんな広くて清潔で大容量の書斎が欲しいものだ。

 フランス文学者の鹿島茂氏は「論座」2007年6月号「私流 本の整理術」に蔵書整理の苦労話を縷々綴っておられた。本の収蔵のために転居を繰り返し、現在 一階から3階まですべて本に埋もれた70坪の自宅、 壁面すべてを天井突っ張り本棚で覆い尽くした20坪の仕事場・兼書庫、 壁面のほとんどを突っ張り本棚にしている25坪のマンション、がある。住宅ローン・プラスマンション賃貸料を稼ぐために大車輪で執筆するのだが、その執筆素材としてさらに蔵書が増え、それを収蔵するためのスペースがまた不足し・・・という悪循環に陥っているとか。もはや、本をすべて売り払って執筆をやめるか、地価と税金の安い海外に逃亡するかという夢想をしていらっしゃる鹿島氏のこれは神保町の仕事場だな。
 写真を見て、こんなに壁面一杯じゃ地震がきたとき生き埋めになるに違いないと思ったが、この本棚は天井で突っ張るタイプだから大丈夫らしい。実はこの本棚、販売会社が「鹿島氏の要望を加えてさらに進化させた」カシマカスタムという特別のものですごく便利な棚(奥行き17センチ)なんだそうだ。壮絶な眺めです。怖いです。

 すっきりしてたのは、時々サンデープロジェクトでお見かけする高野孟さん宅。去年5月に完成したばかりの千葉県鴨川市の新居。窓の外は見渡す限り山並みという風通しのよさそうな書斎だ。「それまで人が住んでいなかった丘陵地なので、地均しが大変でした。広さは、1000坪といわれて買った土地ですが、あとで測ってみたら1800坪(笑)。」近くに「鴨川自然王国」があって、田んぼや畑をみんなで作ったり、味噌を手作りしたりするそうだ。「家を作るための開墾中に出土した仏像」や「薪木切りや草刈りなど家の周囲で日常的に使う」ナイフの写真が載っていてかっこいい。

 オランウータンとミッフィーちゃんの巨大なぬいぐるみがあるリビング兼書斎は内田樹氏。一方の壁全部が本棚で埋め尽くされているが蔵書は2000冊ほどらしい。目を凝らしたのだが「エースをねらえ!」は見当たらないので、すでにブックオフに売っぱらわれているのかもしれない。部屋の真ん中にこたつがあっていかにも居心地がよさそうだけど、ちょっと先生のイメージがこ・・・。ここで読書したら絶対寝てしまう。

 さすがこだわりの書斎は林望氏。地階には22畳の書庫があるって。いーなー。

 みなさんそれぞれに個性があってうらやましい。床の耐荷重を気にせず本棚を増やせてうらやましい。お金のかけ方が違っててうらやましい。だけど考えてみると、第一私には書斎なんて必要ないのであった。図書館があるし、いらないや。

 おっと、忘れていた。「アメリカンドリームが醒めるとき プータローライターが見たニューヨークの現実」【第10回】オバマという名の白人の免罪符がおもしろかった。アメリカ社会の人種問題は相当に複雑で黒人社会のアイデンティティーの葛藤もねじれていて私たちにはちょっと理解しがたいもんがあるとか。
 アメリカのテレビメディアで、最も尊敬されているジャーナリストのひとり、PBS(米公共放送)のビル・モイヤーの番組に、人種関係に関する著書で有名な、シェルビー・スティールがゲストとして出演。彼の新刊『アバウンド・マン』は、オバマについての本で、彼によれば、黒人の指導者や成功者には、チャレンジャーとバーゲナーがいて、オバマは後者なんだそう。
 チャレンジャーとは、「おまえたちがそうでないと証明してみせるまで、おまえたちのことを、人種差別主義者とみなす」という態度で白人に対しプレッシャーをかけ続ける黒人。バーゲナーとは、白人の主流派の中に入り、「あなたたちに、アメリカ史の恥ずべき事実を突きつけたりはいたしません、白人の全てが人種差別主義者だなんて言いません、あなたたちが私の人種を理由に私を否定することがなければ」という態度で取引し、白人に絶大な人気を得る黒人。前者は、60年代からの黒人指導者で、80年代に大統領選に立候補して話題になったジェシー・ジャクソン、ニューヨークの黒人指導者アル・シャープトンなど。後者は、60年代の人気俳優、シドニー・ポワティエ、80年代に裕福な黒人家庭のコメディドラマを超大ヒットさせたビル・コスビー、現代のアメリカメディアの女帝、オプラ・ウィンフリーなど。


 「バーゲナーは、決して自分の本心(特に人種差別に対して)を言ってはいけない。それをしたとたんに、白人たちは懐疑的になる。だからバーゲナーは透明でなくてはいけない。オバマは、チェンジだの、ホープだのと言うけれど、その内容は曖昧で、空虚ですらある。バーゲナーとは、あくまでも(白人の贖罪や希望を映しだすための)白いスクリーンでなくてはいけないから。具体性はバーゲナーにとって危険なのだ」

はあ、複雑だ。オバマ氏の発言が曖昧なのはそういう戦略か。もし大統領になったとしても相当苦労するだろうな。大丈夫か?
 でも、少なくとも日本より数段は上だ。マイノリティーが大統領にだってなれるのだから。

 あと、「役に立つ神学」佐藤優という連載があったので目を疑った。「進学」じゃないのか?ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」における「大審問官」の解釈がされている。本格的な神学研究に基づいた説明だ。そーいえば、佐藤優氏は神学部の出身であった。これもシンクロニシティーか?いやいや、ドストエフスキーがあっちでもこっちでも流行っているってことだろうな。
 わあ、これはなんだー?


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