つゆだく玉入り、牛丼一杯！

　　　　　　　　　　＜つゆだく玉入りでお願いしますっ！＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　

牛丼。
それは１９歳の女子大生だった私にとって
食べてみたいんだけど、ど～しても食べることのできない
未知の世界の味だった。

当時はまだ
あの大型チェーン店に女の子が入るなんて「はしたない！」などと
かたくなに思っていたからだ。

つきあっていた彼はすでに牛丼フリーク。

「つゆがドバドバっと入ってるやつに
　生卵かけてまぜたのがうまいんだぜ！」
　（これがつゆだく玉（ぎょく）入り）
と牛丼のことを話すときは目が輝く。

・・・ふ～ん。

と聞き流すものの、いつか入ってみたくて、
どうせ入るならお昼時をずらして、人のあんまり入ってない時間にしよう～。
などと密かに計画していた。

思いのほかチャンスは早くやってきた。
夕方といえば夕方の夕食を食べるにはまだちょっと早い時間に
小腹がすいてきた私は目の前にひっそりと建つ吉○家を発見！

一緒にいた部活帰りの彼を誘って入ってみるのだった。

大学の近くにあるお店だけに
店内は学生たちのほのかな汗の匂いがしている。

まず、彼が慣れた口調で注文。
「牛丼！つゆだく玉入りで！」

・・・・あ～そういうふうにいうのか。

と思い、私も、
「私も牛丼！つゆだく玉入りで！」

「えっ！」（女の子は普通言わないぜ・・・という言葉をのみ込み）
・・・・・赤面する彼。

心なしか店員さんもギョッ！としているふうだったが
・・・まあいいや。
すでに肝っ玉がすわっている私であった。

ふたり並んだカウンターに
威勢のいい店員さんの声とともに牛丼がはこばれる。

「おぉぉ～これが、つゆだく玉入り牛丼かぁ～。」
感動しながら箸を割り、

「こうやるんだよ！」という彼の指南を受けつつ
ごはんや具と生卵をよくまぜてグワッと口へと運ぶ。

自分の豪快な食べっぷりが「食ってる～！」という感じでうれしい。

「うまいだろ！うまいだろ！」と私の隣で声高らかに笑う彼。

薄暗くなりかけた夕方の景色と、
店内のほのかな汗の匂いと牛丼の甘辛い香りと
隣にいる元気のいい彼の話し声・・・。

全部ひっくるめて遠い日の「牛丼の思い出」である。


そして・・・・

今も隣にいるのが

あいかわらずＢ級グルメ好きで
あいかわらず羨ましいほど元気のいい

ちょっぴりメタボになった彼なのである。



　　　　　
　ただいま出張中！の彼（オット）でございます～♪
　いつも応援ありがとうございます！よろしくお願いします。