MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<5-1>すぐ妥協してしまうのってだめなの?(1)

2005-03-14 | 第一部:そもそも「交渉」ってなに?
ここまで何回か交渉に臨む心構えについて書いてきました。
前回も触れたとおり、交渉で一番難しい部分の一つに相手との協調(妥協)と競争(拒絶)をどう使い分けるか、というバランス感覚が挙げられます。
今回・次回は心構え論の最終回として、このバランス感覚について論じたいと思います。
今回はまずこの論点についての二つの代表的な見方を紹介します。

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-ずいぶん強気に無茶な要求をするなあ…

MBAの授業でクラスメートと交渉の実習をしているとき、よくこんなことを思ったものです。

筆者の感覚からすれば、「交渉は持ちつ持たれつ、お互いに冷静に話を聞きあうのが成功のカギ」と思っていましたし、なるべく物分りのいいところを見せてうまく話をまとめようとしたものでした。
しかし相手の中には、一方的に自分の要求を押し付けて全く譲歩せず、こちらの話は途中でさえぎって聞こうとしないヒトがかなり見受けられたのです。
そうした相手にあたるといくら交渉の練習とはいえ説得するのが嫌になってしまい、「もうこの辺で妥協して交渉を終わりにしよう」という誘惑に駆られたものでした。

ビジネススクールには数十カ国から色々なバックグラウンドの参加者が集まっていましたが、
そこでの見聞を振り返ってみると、文化的なバックグラウンドによって交渉の仕方もずいぶん違ったように思います。

日本人(及び程度の差はあれ東洋人全般)の場合を考えてみると、自分も含めて強く感じられたのが、「激論になるくらいならつい妥協してしまう」クセでした。
これにはお互いの関係を重視する文化的な背景が影響しているように思います。
お互いの関係やその場の文脈が話し合いの内容に大きな影響力を持つため、相手を尊重するとどうしても強い要求がしにくいのです。
また特に現代の日本人の場合、例えば買い物をする際の値段の交渉経験すらほとんどないため、交渉慣れしていないことは大きく不利に働きます。
結果として、「あまり強くこちらから要求ばかりするのも失礼で品がないし、相手とケンカになってしまうかもしれない」という遠慮が頭から離れない傾向が筆者にはありました。

一方で、海外からの多くの参加者、特に中東出身者にはそういった遠慮がほとんどありません。
彼らの場合、日常生活でも交渉が不可欠で、強い要求をしなければろくに自分の取り分が得られない環境に生きているため、傲慢に見えるほどの要求をすることが自然に身に付いているのです。
ちなみに筆者が一位を取ったクラスの交渉結果ランキングでも、二位以下はベストテンの多くが中東勢、他は欧米系でした。

さて、筆者が持っていたような「妥協グセ」はダメなクセなのでしょうか?

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