公立病院はほとんどが赤字である。あんなに患者が詰めかけているのに、なぜ赤字なのか 2011-06-16 の記事に原因を書いた。
今回は少し別の角度から見てみよう。私が勤めていたT市の市民病院を参考にする。
戦後、焼け野原になったT市の市長はまっさきに復興を考えた。市長は「まず、病院と消防だ」と掛け声をかけ、インフラの再建に取りかかった。これは正しい行動である。
まだ国民皆保険制度はなかった時代だったけれども、市民病院も消防署も順当に復活した。とくに市民病院には患者が押し寄せ、市民病院は大変な収益をあげた。当時、国民皆保険制度が発展途上にあった。まだ、政府による健康保険への締め付けはなく、この時期、医療機関がものすごく儲かったことは意外に知られていない。
やがて、健康保険から支払われる医療費は年々削られ、病院は経営努力をしなくては立ち行かないようになってきた。
ここで民間と行政の違いが露わになった。行政には収益という感覚がなかった。役人はいつまでも病院は消防署と同じで市民の福祉のためにあると考えていた。つまり、消防署が市民を助けても報酬を請求しないのと同じく、病院も市民から儲けるという感覚を持ちえなかった。
市立病院の事務職はすべて行政マンであり、紙切れ一枚(辞令)で明日から市立動物園や市立美術館に飛ばされる可能性がある。だから、病院業務に精通しようというモチベーションをもちえなかった。
そのため、業務の多くを他の職種、主に医者にやらせようとする。診療報酬請求業務は病院の収入を守る重要な業務なのに、診療報酬明細書の誤りを医者にチェックさせる。そのときに吐くセリフはなんと「僕たち医学の専門的なことは分かりませんから」である。民間病院なら入社一年目の女子事務員でもできることである。つまり、医者を無駄遣いするのだ。
従来、看護師がやるべき検査の説明を医者がやる。さらに、ほんらい受付の事務職がやるべき診療や検査の予約業務を看護師がやる。受付の事務職はなにもしない。女性ばかりの彼女らは派遣社員である。給料はきわめて安い。彼女らは若くてにこにこしているが、スキルがない。なのに病院から見れば彼女らはけっして安い労働力ではない。なぜなら、派遣業者がごっそりピンハネするから。
こうした構造に院長がメスを入れようとしても、なんと院長には人事権がない。医者はもちろん事務職を異動させる権限さえない。人事権は市役所の幹部にある。受付を派遣職員にしたのは事務方(役人)であって、院長がそうさせたわけではない。
こうして公立病院の赤字体質は、いつまでも変わらないのである。
消費税が導入されてからも、健康保険から支払われる額に消費税分は上乗せされなかった。これは公立、民間を問わないが、使用するアルコール綿、ガーゼから、レントゲン装置まですべてに消費税がかかってきた。その分は病院の持ち出しになる。
医療費に消費税分を上乗せしようとしても、世論の後押しがない。公立民間を問わず、病院は消費税分の収益を減らしている。今後、消費税がアップされたら、病院はますます苦境に立つことを、ここで申し述べておきたい。
今回は少し別の角度から見てみよう。私が勤めていたT市の市民病院を参考にする。
戦後、焼け野原になったT市の市長はまっさきに復興を考えた。市長は「まず、病院と消防だ」と掛け声をかけ、インフラの再建に取りかかった。これは正しい行動である。
まだ国民皆保険制度はなかった時代だったけれども、市民病院も消防署も順当に復活した。とくに市民病院には患者が押し寄せ、市民病院は大変な収益をあげた。当時、国民皆保険制度が発展途上にあった。まだ、政府による健康保険への締め付けはなく、この時期、医療機関がものすごく儲かったことは意外に知られていない。
やがて、健康保険から支払われる医療費は年々削られ、病院は経営努力をしなくては立ち行かないようになってきた。
ここで民間と行政の違いが露わになった。行政には収益という感覚がなかった。役人はいつまでも病院は消防署と同じで市民の福祉のためにあると考えていた。つまり、消防署が市民を助けても報酬を請求しないのと同じく、病院も市民から儲けるという感覚を持ちえなかった。
市立病院の事務職はすべて行政マンであり、紙切れ一枚(辞令)で明日から市立動物園や市立美術館に飛ばされる可能性がある。だから、病院業務に精通しようというモチベーションをもちえなかった。
そのため、業務の多くを他の職種、主に医者にやらせようとする。診療報酬請求業務は病院の収入を守る重要な業務なのに、診療報酬明細書の誤りを医者にチェックさせる。そのときに吐くセリフはなんと「僕たち医学の専門的なことは分かりませんから」である。民間病院なら入社一年目の女子事務員でもできることである。つまり、医者を無駄遣いするのだ。
従来、看護師がやるべき検査の説明を医者がやる。さらに、ほんらい受付の事務職がやるべき診療や検査の予約業務を看護師がやる。受付の事務職はなにもしない。女性ばかりの彼女らは派遣社員である。給料はきわめて安い。彼女らは若くてにこにこしているが、スキルがない。なのに病院から見れば彼女らはけっして安い労働力ではない。なぜなら、派遣業者がごっそりピンハネするから。
こうした構造に院長がメスを入れようとしても、なんと院長には人事権がない。医者はもちろん事務職を異動させる権限さえない。人事権は市役所の幹部にある。受付を派遣職員にしたのは事務方(役人)であって、院長がそうさせたわけではない。
こうして公立病院の赤字体質は、いつまでも変わらないのである。
消費税が導入されてからも、健康保険から支払われる額に消費税分は上乗せされなかった。これは公立、民間を問わないが、使用するアルコール綿、ガーゼから、レントゲン装置まですべてに消費税がかかってきた。その分は病院の持ち出しになる。
医療費に消費税分を上乗せしようとしても、世論の後押しがない。公立民間を問わず、病院は消費税分の収益を減らしている。今後、消費税がアップされたら、病院はますます苦境に立つことを、ここで申し述べておきたい。