院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

日本医師会がTPPに反対する本当の理由

2013-03-31 01:08:46 | 医療
 現在、保険診療と自由診療を同時に行うことは法令で禁止されている。これらを同時に行うと、なぜ国民皆保険制度が崩壊するのか、やや理解しにくいかもしれないが、すでにマスコミで説明されているので、ここでは述べない。

 日本医師会はTPPに加入すると国民皆保険制度が危ないと言っている。これは本当である。国民皆保険制度の崩壊は国民も困るし日本医師会も困る。この点では、国民のニーズと日本医師会のニーズは一致している。

 では、なぜ日本医師会が困るのだろうか?ここからが国民の知らない部分である。それについて以下に述べる。

 医者は診療すると、診療報酬を健康保険支払基金(以下、単に支払基金)に請求する。よほど奇妙な請求でなければ、支払基金はだまってお金を支払う。支払基金の支払いの仕方は出来高払い、すなわち診療を行った分だけ天井知らずに支払いをする。

 ところが、国民皆保険制度が崩壊して、国民が民間の医療保険に入ったらどうなるか?民間の医療保険会社は営利企業である。だから、絶対に来高払い方式をとらないと日本医師会は見ている。

 民間保険会社は、病気Aなら金額の上限はここまで、治療は何回まで、これこれの薬を用いなくてはならない、または用いてはいけない、などなどの条件をつけてくるはずだ。病気Bにも病気Cにも条件が付けられ、それ以上は自由診療でということに必ずなる。

 つまり、医者の裁量に制限が加えられるようになる。日本医師会はこれがイヤなのだ。日本医師会だけではなく、私も含めたすべての医者がイヤである。民間保険会社のような素人に医者の裁量を左右されてはたまらない。

 いつぞや、日本医師会と支払基金とは犬猿の仲だと述べた。しかしながら、支払基金は民間保険会社よりはずっと(医者にとって)ましなのだ。少なくとも金額の上限を設けたり、回数を制限することはない。

 医者は素人に指図されることをもっとも嫌う。日本医師会がTTPに反対することの本質は実はこの点にあることを、ほとんどの国民が知らないから、ここで述べてみた。

(日本の保険会社であろうと外資系であろうと、保険料を安くする競争が起きる。その結果、医療費を安くさせようとする圧力が生じるだろう。つまり、医者の技術や知識が買いたたかれるような仕組みになるということだ。)

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