第149回、続きです。
編集長に会いたいという客が訪れるが
突然、編集長に襲いかかり、暴れる!
それを見ていた、松浪
その暴漢を、簡単にねじ伏せる
(カッコイイ~!!)
暴漢は警察に連れて行かれた。
(編集長)どうも有難うございました、お見事な腕で
何か武術をおやりですね。
(松浪)いや、余計な手出しをしてしまったようで、お怪我がなくて、何よりでした。
(編集長)有難うございました
(子供を抱きかかえて、うずくまったままのおりん)
(松浪)弘(ひろむ)君、もう大丈夫だ。お母さんがちゃんと守ってくれたから、怖くなかったよね
ヨシヨシヨシ 良かった・・
(おりんは、父の営む珈琲店に松浪を連れてきた。)
(父)あの頃は私は耶蘇が大嫌いで、おりんが私よりもあなたのことを よくきくのが、腹立たしかったのです。
(松)あの頃は私も若くて、キリスト教伝道の為に気負いたっていましたから。(苦笑する松浪)
(りん)日本にはいつ頃まで、ご滞在ですか?
(松)明後日、博士と一緒にアメリカに向ってアメリカに立ちます。
(り)じゃ、明日 一日しか。
(松)私はもう少しゆっくりしたいのですが、博士の予定も有りますから
(り)そだば、もし明日お時間があったら、私のうちにいらっしゃいませんか?
母や祖父も喜ぶと思いますそれに、そうだわ!鶴治先生も!
(松)鶴治君が?東京に?
(り)ええ!小石川の教会にいらっしゃるんです。
(松)ああ、そう。鶴治君が
(り)ご無理でなければ是非
(松)では、明日の昼にでも
(り)嬉しい!それでは明日 ホテルへお迎えに上がります。
(松)新聞社のほうは?
(り)先生の事やお話を記事にしますから、これも仕事の内です。
(松)なんだ、ちゃっかりしてるんだ。(笑)
(松浪、懐中時計を見て)
(松)ではもうそろそろ、博士との約束の時間ですから
(父)明日、お待ちしてやす。
(松)何分よろしく、大変美味しい珈琲をご馳走になりました。
(弘の頭をなでなで)
(り)送っていきます。
(松)いや、結構。
(父)お送りしなさい、弘は見ているから。
(二人で歩く、りんと松浪。)
(松)もうここで・・君に会えたことを。神に感謝しています。こんなに立派になった君に。
(り)立派なんかじゃないんです。あたし、ちっとも立派なんかじゃないんです。あたし、ダメな母親なんです。自分の子供の心も見てやれない、情けない母親なんです。
(松)おりんさん・・
(り)弘は学校に行ってくれません。いくらわけを聞いても、心を閉ざして答えててくれないんです。あれは自分の子供の事を忘れていた母親への、精一杯の抗議なんです。あの子はああして抗議しているんです。私は子供よりも自分の仕事ばっかりを大事にした悪い母親なんです。
(松)そんなことは無い、あなたは いいお母さんだ。今日、あの騒ぎの中で君は弘君を真っ先に抱いて、守ってあげましたね。あの時、君にとって一番大事な物は、弘くん意外に何もなかったはずです。他の事はどうでも良かった。そうじゃなかったのかな?
あの君の姿を見て、昔君が僕を庇って石を投げる男たちの前に立ちはだかってくれた、あの時の事を思い出しました。弘君は、あなたの腕の中でどんなにか心強かったことか。あなたはいいお母さんです・
(り)先生・・
(松)何も心配することはありません。弘君はきっとお母さんの心をわかってくれるに違いない。
母親であることに、もっと自信を持って、見守ってあげて下さい。(頷く、おりん)
(松)明日の事、楽しみにしています。皆さんと、あなたをこんなに素晴らしいお母さんにした、ご主人にお目にかかる事を
(り)先生・・
(松)それじゃ
(り)先生、有難うございました。
(自宅に帰り、夫にお茶を淹れているおりん。)
(夫)それは君にとって、何よりの心強い励ましだったな。
(り)どうしていいかわからなかったのよ、ほんとに。だから 嬉しかった・・
(夫)わかってくれるさ。弘はきっとわかってくれるさ。自信を持って、もう少し じっと見ていていよう。
(り)でもあの時、本当に私の目の中には、編集長も松浪先生もなかったわ。ただ弘だけしか。
(夫)当たり前じゃないか!何言ってんだ、当たり前じゃないかそんな
(り)あら、怖い顔
(弘・ひろむ)お父さん!お母さん
何?
弘が「お休みなさい!」とペコンと頭を下げた。