ここ数ヶ月間、日経ビジネスには毎号、AT&Tグローバル・サービス株式会社の変な広告が載っている。
The world according to MAYA マヤの場合(http://www.att.com/advertising/images/mayaspread.pdf)
という、グローバルカンパニーで活躍している東洋人の女性のイメージ広告である。
背景の地図には、Tokyo, Hong Kong, Singapore, Sydnyなどの地名が載っている。モデルは中国系の人のようにも見えるが、どう見ても国籍不明の雰囲気である。だいたいMAYA マヤというのが、東洋っぽいが、どう考えても国籍不明の名前である。その下には、英語を直訳した意味のよくわからない訴求メッセージが載っている。数ヶ月間全く同じイメージ広告で、こちらの違和感はいつまでも変わらず、平行線をたどったままである。
この広告からひたすら感じられるのは「アジア全域はこの一枚の広告ですませよう」という意思である。AT&Tのホームページを見ると、Maya とJane とAlan とAnthony の4人で全世界をカバーしているようである。因みにJane のモデルには欧州人と中近東人とインド人が混ぜ合わさったような人が選ばれているので、インドより西、ヨーロッパまで、Janeがカバーしているのだろう。
「一般化」「抽象化」「汎用化」というのは、複雑な対象を取り扱う上で常に意識すべきことだが、少なくても日本のお客さんの前では、「汎用化」を意識した資料をそのまま使ってはいけない。「省力化しました」ということをお客さんに自慢するかのようであってはいけない。・・・とこの広告を見ながら強く自分に言い聞かせた。私はいつもそのような「汎用化による省力化への意思」がお客さんの前で滲み出てしまい、失敗するので。
そういえば日経ビジネスでは以前、欧州の重電メーカーABB(アセア・ブラウン・ボベリ)が、ネイティブチェックを通していない変な日本語の広告を続けて出していたことがあった。そしてその頃、「欧州発のグローバルカンパニーであるABBの社内公用語は Bad English だ(=英語の質を気にすることなくコミュニケートするのが大切だ)」と当時のバーネビク会長は語っていたと思うが、その広告は、「ABBは余計なコストはかけない」、「 Bad English がABBの公用語だ(=その流儀で Bad Japanese で日本市場に飛び込みます)」、という意思表示の現れだったのかしらん?もっともその後ABBは急速に業績が悪化して、日本では名前を聞かなくなってしまった。
優秀人材であっても、お客さんに対する最後の詰めの意思や、誠意の感じられる姿に欠けると、全然パフォーマンスが上がらないので ・・・もっとも本人には何故自分のパフォーマンスが上がらないのかわからないのだが・・・、人の採用にあたっては気をつけましょう。