「人材沈没-育てず伸びずのデフレスパイラル」というキャッチにて、日本企業の人材マネジメントが劣化しているのではないか、と投げかけている特集。ちょっととりとめもないのだが、読みながら、扱われている話題を拾っていくと、出てくる順に、次の通り。
- 安直な即戦力指向の採用の現場
- 人材を育てる筈のミドルが育っていない
- 短期的成果に偏らない人事評価項目が必要
- 経営者による「徳育」の例
- 現場でのコーチングの重要性
- ヴァリュー(価値基準)遵守の評価
- 海外現地法人採用者への教育
- グローバルリーダーの育成
- 熱い思いを伝播させる組織のリーダー
- パートから正社員への登用
以上の話題を、なんとか、次の2つのメッセージにまとめている。
- 濃密なコミュニケーションによって組織のメンバーの士気を鼓舞し、「成長したい」という意欲を高めさせること。
- 日本にこだわらず、グローバル市場で優秀な人材を確保すること。
確かに今企業の中には人材に関するテーマは山積している。それをどのように扱ったらいいのか。何かしら体系づけなければ、モレダブリのない施策に落ちていかない。しかし、これまでのような、「採用」とか「育成」とか「評価」とか「報酬」とかいった人事の体系では問題をとらえきれなくなっているのは確かで、コンサルティングサービスを供給している側も、なかなかそれに代わる新しい体系をマーケットに示しきれていないわけなのだが(・・・汗)、ついに待ちきれず、という感じで、日経ビジネスの方でともかく問題を列挙して、特集を組まれてしまった、という感じである。
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さあ、そこで、人材に関わる問題をモレダブリなく取り扱うことのできる新しい体系をジャーンと開陳する、ということまではここで意図しないのだが、次のことは言える。
「人の問題」「人事の問題」「組織の問題」・・・これらいずれの切り口でも狭すぎて、問題の一部分しか取り扱うことはできない。だからもっと根源的/原初的な現象、「人が集まって働いている=協働している」という事実に着目するのがよい。
これはバーナードという、半世紀前の全くユニークな、経営者/アマチュア哲学者/オリジナルな経営学者が、「経営者の役割」という有名な著作にて示した方法であり、ご存知の方も多いとは思うが、バーナードは自らの経営者業の中で「協働」の事実を観察し、つまるところ次の3点が「協働」が永続していくための必要十分条件であり、これら3つの視点から注意深く組織の手綱を引いていくべきだと語っている。
- 共通の目的
- 協働する意欲
- コミュニケーション
そう、今の企業は、これらを再構築してしなければならない過渡期の真っ只中にあるのである。
- 何のために事業を行っているのか
- 何をモチベーションの源泉にして働けというのか
- IT/グローバル化の中でコミュニケーション環境が激変する中で、コミュニケーションの手段や場をどう再構成していくのか
このバーナードの理論ですぐに企画書を書けるわけではないが、内容が繊細で深く、哲学マインドを満足させてくれるものなので、読んでみてください。すぐに役立つものではないが、混沌につきあたった時に、目の前を照らし出してくれる。