人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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さて、先に述べたように、コンピテンシーファクターはいかようにでも設定できるわけだが、良い設定の仕方と、そうではない設定の仕方があると考えられる。良い設定の仕方とは何だろうか。次の5項目が基準になるであろう。

  1. 概念構成を説明できること
  2. 脳や生体機能との対応関係を説明できること
  3. 社会や組織の機能との対応関係を説明できること
  4. 個々のファクターが独立性を保ち、重みのバランスがとれ、ファクター間の距離もバランスがとれていること
  5. 統計的なテストと関連づけられていること

それぞれについて見ていこう。

  1. 概念構成を説明できること ・・・ ファクターとファクターの間の違いや、お互いに共通性がある場合にはその共通性を説明できる必要がある。そのためにも、何かしら理論的な背景を持っている方がよい。陰陽五行説の「木・火・土・金・水」みたいなものはだめ。もっとも、「風・林・火・山」はエンジニアのコンピテンシーファクターをうまく言い表しているという小野和俊氏の説もあるが。
  2. 脳や生体機能との対応関係を説明できること ・・・ ハーマンモデルと言われる4ファクターモデルが、脳幹と前頭葉、右脳と左脳、という2軸でもって、4つのファクターを出している。ハワード・ガードナーの多元知能モデルも、8つの知能を提唱するにあたり、脳部位と関連づけることができることを根拠にあげているとのこと。
  3. 社会や組織の機能との対応関係を説明できること ・・・ 企業組織の機能やビジネスのライフサイクルのフェーズなど、社内労働市場が分割される単位と対応づいていることが実用上重要になる。社会や組織が脳や生体の機能を投影しているから、という言い方もできるかもしれない。製品のライフサイクルをフェーズに分けてそれぞれのフェーズ毎に求められる人材像、すなわち価値を生むコンピテンシーが異なるというジェフリー・ムーアの有力なモデルがある。面白いものとして、スターンバーグの思考スタイルの議論では、国家組織の機能や形態と思考スタイルとが関連づけられている。
  4. ファクター間の相関ができるだけ少なくなるよう配慮されており、よって各ファクターが独立性を保ち、重みのバランスがとれ、ファクター間の距離もバランスがとれていること ・・・ 各ファクターが独立性を持ち、重みが等しく、お互いの距離関係のバランスがとれている場合には、複数のファクターを自由に組み合わせることでさらに詳細なファクターを作り出したり、逆に、複数のファクターを統合することでおおぐくりのファクターを作り出したりすることができる。これにより、必要に応じて市場をさらに細かく分割したり、統合することができることができるので、実用上重要である。「企画力」「調整力」「実行力」・・・とビジネスマンの必須スキルを並べた日本の「職能資格基準」はこの点において弱く、それゆえにプロフェッショナル時代のコンピテンシー基準としては使えなかった。
  5. 統計的なテストや経験則と関連づけられていること ・・・ 統計的なテストは実証のためには必須。しかし、統計的なテストには測定方法などにどこまでも疑問がつきまとう。「統計的にも裏付けられた、長年多くの人々によって正しいと認められている理論」との明白な関連性が言えることが重要、と考えるべきだろう。

ちなみに、以上の5つの観点を考慮して、私が現在最も優れていると判断しているファクターのセットは、職業カウンセリング分野で長年用いられている「ホランド・コード」の6ファクターである。職業カウンセリングためのパーソナリティの分類ツール、という以上の潜在力を持っていると考えている。もちろん、マーサーのコンピテンシー・マトリックスとも対応させることができる。



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