人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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コンピテンシーを論じる時に必ずついて回るもうひとつのパラドックス(ひとつは測定のパラドックス)に、「求められる人材像」のパラドックスがある。組織としてやろうとすることを明確にし、求められる人材像を明確にすればするほど、同時に、人材像は一様には決まらないのではないか、多様な人材の組み合わせこそが重要なのではないか、という疑問が出てくる、そのようなパラドックスである。このパラドックスの解決の仕方を決めておかないことにはコンピテンシーの見直しはできないと考えるべきだろう。

「わが社で求められる人材像」ということを言うことはできる。属する業界や業界の中でのポジションニングによって、会社の人間が共通して持つカラーのようなものを想定することができるし、また、そのようなカラーを確立することができれば、その会社の強みにつながることは明白である。例えば、

  • 全員にサービス精神を持ってほしい。
  • 全員にエンターテナーの精神を持ってほしい。
  • 全員にカイゼンのマインドを持ってほしい。
  • 全員に現地現物主義の精神を持ってほしい。
  • 全員に仕事の品質への強烈な意識を持ってほしい。
  • 全員が自分の仕事の生産性を強烈に意識してほしい。
  • 全員が創造に参加しているのだという意識を持ってほしい。
  • ・・・

さらに、「わが部門/わがチームで求められる人材像」ということを言うこともできるだろう。例えば、

  • 全員が、自分の言葉で議論し、考えを発表できること。技術に立場も身分もない。
  • 全員が、自分の足で動いてマーケットの感触をつかむことを最優先にすること。マーケットは頭の中にはない。
  • ・・・

しかし、同じようなタイプの人間を集めて組織を作ったところで最強の組織ができあがるわけではなく、攻めのタイプ、守りのタイプ、論理的なタイプ、人間味あふれるタイプ・・・等々が集まることに意味がある。どれほど組織やチームを細かく分割したところで、そしてついに2人にまで組織を分割したところで、「異なったタイプの人材の組み合わせによってこそ組織としての力が出る」ということはますます明らかになるばかりである。そのことはよく知られていることではあるのだが、では、そのことを踏まえて、人員構成のあるべき姿をどのようなものと定義し、そのあるべき姿にどのように持っていったらよいのだろうか?これは難しい問題で、次のようなパターンが考えられる。

  1. 「これこれのスキル・コンピテンシーの組み合わせを持つ人材が何人ずつ必要」ということを、組織のあらゆるレベル(全社レベル、部門レベル、チームレベル・・・)において定義する。
  2. 「うちの組織の人材にはこれこれのスキル・コンピテンシー要件についてだけは強い人材であることを求めるが、その他の要件においてはできるだけ多様であってほしい」というように定義する。
  3. 「7割の人間は金太郎飴のように同じような人間を採用するが、残の3割の人間はあえて変わった人間を集める」ものとする。
  4. 「個人には焦点を当てず、自生的にメンバー間の機能分担/役割分担が生じてうまく機能しているチームに焦点を当てて、そのチームを壊さないようにチーム丸ごと異動させる」ものとする。

しかし、

  1. 1のように人材要件を決めきることは現実的でないと考えるべきだろう。
  2. 2のように一つのコンピテンシー要件だけ決めることはより現実的だが、しかし、一つの要件だけにおいても「この要件は全員が強く持つ」という状態を作るのは難しいだろう。
  3. 3のようなやり方は、例えば霞ヶ関のキャリア官僚採用などにおいてもとられてきたという。しかし、「7割の金太郎飴を組織のコアにする」と言った段階で、今後の変化と多様性の時代にはそぐわないと考えるべきだろう。
  4. 4のようなやり方は、例えば外資系金融機関やコンサルティング会社においても見られたりするが、今後は、チームに人材を囲い込ませることでは、会社として十分な価値を生み出すことができるとは考えられず、必要に応じてチームを解体し、新たな組み合わせによって新たな価値を生むことが求められるだろう。そのためには、個人に焦点を当てたマネジメントがやはり必要だろう。

では、どうしたらよいだろうか。



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