人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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多元的ネットワーク社会の組織と人事
南雲 道朋
ファーストプレス

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新刊の拙著です。初めての単著になります。

  • デジタル化、インターネット化の進展の中、組織の境界線がますますあいまいになる中、組織をどのように把握し、マネジメントしたらいいのか、ということを体系的に論じた初めてのものと考えています。
  • 20世紀型・工業社会型の組織観が終焉を迎え、マーケティングとイノベーションが一体化し、付加価値がサービス化し、人々の活動が切れ目なくネットワーク化されていく中、それらを支える組織運営と個人のキャリア形成はどのように変わっていくのか、ということを考える手がかりにしていただけるものと考えています。
  • また、企業活動がグローバルに広がり、経済全体の中で組織が果たす役割がますます巨大になる中、経営学は個々の経営テーマに分断されがちであり(=帯に短し)、一方、組織の経済学は組織運営の具体的な課題までなかなか踏み込めない(=襷に長し)ようにも感じられますが、その間をつなぐ読み物としてもお読みいただけると考えています。

以下は、本書の「はじめに」より。(文中出てくる「組織論の公準」とはバーナード組織理論のことを指しています。)

はじめに
本書の目的は、企業社会の形が大きく変わっていることを受けて、次のような広い範囲の論点に対して答えを出すことである。

●ITは本当に組織を変えるのか。伝統的な階層組織が崩れた時、それに代わる枠組みは何か
●グローバルな平準化と格差拡大とが同時進行するなか、賃金・報酬配分の基本思想はどうあ
るべきか
●キャリアや能力開発は何を基軸にしたらいいのか。ビジネスパーソンは何を身につけたらいいのか。教育研修のミッションはどうあるべきか 

これからの企業社会を「多元的ネットワーク社会」ととらえることによって、これらの問いに対する答えが見えてくる。本書を通してそれぞれの論点について、これまでの組織や人事の書籍とは一味違う答えを見いだしていただけると思う。
本書は、これから本格化する多元的ネットワーク社会に対応する組織運営と人事の実現に向けて、多くの論点を体系的に関連づけ、今後の組織運営の方向性を一望できるようにしているが、その際、論点を整理するフレームワークにこだわった。情報洪水を制するポイントは、さまざまな情報の意味や重要性を解釈し、分類整理することのできる安定したフレームワークを持ち、そのフレームワークに従って情報を整理することにある。
本書は、組織論の公準にまで遡ることにより、そのようなフレームワークを用意している。新聞やビジネス雑誌などを通して知られている事例であっても、フレームワークの中にパズルのようにあてはめ、全体の関連性の中で見ることによって、組織・人事に新しい視界が開けてくることを意図している。本書の特徴は以下のとおりである。

●70年間正しさが検証されてきた「組織論の公準」に基づいて体系づけている: テクノロジーの進化によって組織の前提が変わっても、長持ちする体系を用いている。また、「戦略論」「マーケティング論」「人材マネジメント論」といった従来の分野に制約されていない。個々の問題をお互いの関連性の中で体系的、有機的に扱っているので、自社の問題の構造や解決へのアプローチを考察するためのガイドブックになる
●現在生じている変化の本質に焦点を当てている: ソリューションを決めつけた教条主義的なものとは異なり、環境変化の本質、変わるもの・変わらないものを明らかにしたうえで、変化の方向性を示しているので、変化にどのように対応したらよいか、効果的な考察が可能になる
●雇用やキャリアなど、働く側からの視点も加味している: 従来の経営管理論は、経営側の視点だけから書かれている場合が多い。しかし、企業のあり方や働き方が大きく変わっている現在、働く側の視点から雇用や能力開発、キャリアの意味を問い直すことが欠かせない。本書の体系は、経営側の視点と働く人の視点の両方を重視し、両者を融合させている
●個々の企業の視点のみならず、産業や企業社会の問題として問題をとらえている: 提携やM&Aなど、企業の枠組みを超える活動が常態化し、また、雇用形態の多様化や格差社会と言われる状況が働く人の意識に甚大な影響を及ぼしているなか、「個々の企業の枠を超えて産業・経済・社会はどう変わるのか」という視点なしには、個々の企業の方向性も定まらない。本書では、従来の企業の境界を前提としない議論を展開しているので、おのずから視野を企業の枠の外に広げることができる
●デジタル化した組織を論ずるにあたって、有益なソフトウエア工学の知見を活用している: ソフトウエアというのは人間の知的活動を取りまとめるものであるから、プロジェクトマネジメント手法をはじめ、組織・人材マネジメントのヒントや使えるツールに満ちている。とくに現在、デジタル化の影響を受けて、組織・人事運営そのものがデジタルな発想を取り入れるようになっているので、ソフトウエア工学の応用余地は大きい

本書は、経営スタッフがこれまでの一般的なあり方より視野を広げながら組織運営を検討するためのガイドになることを意図している。経営企画部門は、企業再編やM&Aの企画にあたって、財務や経営戦略の視点のみならず、組織と人材の融合という視点が必須となっている。同じように人事部門も、人事労務の専門家としての視点のみならず、組織再編や社外からのスキル調達などを含めた広い視野から企業能力構築のアドバイザーになることが求められている。
本書が経営スタッフ向けの書籍であるということは、裏を返せば、社員のためのものでもある。社員の心からの参画がなければ、グローバル競争の中で企業は立ち行かなくなる。また、今の時代、すべてのビジネスパーソンが、企業の組織運営や人事の方向性を洞察し、自己責任で生涯キャリア形成についての意思決定を行う必要がある。こうした観点から、働く人の側の視点から企業組織とどのようにつきあっていったらいいのかということについても展望が得られると思う。
2007年9月
  

 

本書の図表

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