流通業界やアパレル業界に人材を輩出している伊勢丹の現場力、人材力が着目されるようになっているが、そのことからインタビューが始まる。
- 武藤氏: 「・・・教育体系を教えろ」などと言われることは多いです。でも、同じことを当たり前のように積み重ねて出来上がったものなので・・・教育カリキュラムを見て、「うちと同じだ」とおっしゃる方がほとんどですし。
・・・とのことであるが、インタビュー中に次のようなやりとりが出てくる。
- 編集部: ・・・売り場のスタッフがちゃんとしていてこそ機能します。その(お客様の)本音を引き出すことが難しいのでは?
- 武藤氏: (突然、同席していた本誌スタッフに向かって)あなたにはお嬢様が2人いらっしゃいましたよね?
- 編集部: (虚を突かれた本誌スタッフが)いえ、娘と息子です。
- 武藤氏: ねっ。お客様は、仮説をぶつけると、こうやって必ず正直に答えてくれるんです。その繰り返しですよ。
・・・とのことであった。もし、これが伊勢丹の基本動作なのであるとすると、すごいことなのではないかと思う。あらゆる流通の現場で、基本動作として、「いらっしゃいませ」の挨拶の訓練をやっているのではないかと思うが、お客さんに問いを発する訓練は、簡潔でありながらとてもレベルが高く、かつ、お客様の生活に対する想像力、お客様の観察力、そしてカンを磨いていく入り口になると思う。さらに、複数人で考えてみることを通じて、ノウハウの共有化も促進される筈である。
このような、おそらく全員に共通する基本動作が、(暗黙知的なものか、マニュアルのように形式知化されているのか、わからないが、)伊勢丹の中に存在しているのではないかと思う。