人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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採用におけるインターネット活用はますます一般的なものになってきているが、ネットを利用した採用の「負の側面」と、各社の対処状況について扱っている記事である。

この記事で取り上げられている問題は主に次の2つ。

  • ネット上の玉石混交の情報に、企業も学生も振り回される。
  • ネット上では簡単に応募できるため、人気企業は応募者数が膨れ上がり、学生を絞り込むためには結局、就職偏差値などの画一的な指標を使わざるをえない。

・・・どうやら、採用プロセスにおけるインターネットの使い方は、まだまだ確立されていないようだ。

労働市場から人材を引き寄せて雇用契約に持ち込む採用プロセスは、一種のマーケティングプロセスに他ならない。顧客コミュニケーションのWeb化とともに、現在マーケティングプロセスは大きく変わっているのだから、採用プロセスもマーケティングプロセスを参考にしながら見直し、再定義していく必要がある。

Webを活かしたマーケティングプロセスの変革例としては、Webサイトをマーケティング活動のプラットフォームとして、顧客をすべからくWebを経由させることを目指し、マスメディア広告はあくまでも顧客をWebサイトに呼び込むためのものとした、ホンダのような例がある。同じように、採用のプラットフォームをWebに一本化できるかどうか。(すなわち、すべからく全ての採用候補者がWebを参照して情報収集し、Web上でエントリ情報を登録するようにできるかどうか。)

さて、採用のプロセスは、Webマーケティングのプロセスと同じように、次のようなモデルになるだろう。下の方に行くに従って、漏斗のように狭まっていくイメージ。

ステップ1: メディアを通じての「集客」
         V
ステップ2: ウェブを通じての「情報提供/収集」
         V
ステップ3: 面接を通じての「商談」
         V
ステップ4: 内定後の「定着化」

ただし、各ステップの中身の設計にあたっては、商品マーケティングとは違った難しさがありそうだ。採用の場合には、採用に至る者が多ければいいというわけではないので、適切なフィルタをかけて選別して下に流していくことが鍵になる。企業側、応募者側、双方の側からお互いに選別が進んでいくような仕掛けを、ステップ1、ステップ2の中にどのように組み込むかが鍵になる。ステップ1にて強烈なメッセージも発しておくとか、ステップ2で作文を課すとか。

また、採用プロセスのパフォーマンス(=効率性、効果性)の評価の仕方も難しい。商品のマーケティングプロセスに比べて成果指標が明確ではない。採用プロセスでは量よりも質が問われることになる。採用が成功だったかどうかは、その後の離職率や採用者のパフォーマンスをトレースするなどして、後になってみないとわからない。

しかしそこが工夫のしどころであって、企業や職種によって、どの採用ステップでどのような結果が得られれば全体がうまくいくのか、「鍵となるステップ」が決まってくるので、そのステップに焦点を当てて採用プロセスを組み立てればよい。

例えば、ステップ3の面接において、絞られたメンバーで充実した「模擬業務体験(=例えばケーススタディを用いて協働して問題解決を行わせて適性を見る)」を行うことが、最も重要なファクターである場合がある。そうだとすると、いかにそのような「模擬業務体験」のメンバーを揃えるか、ということが採用プロセス全体を設計する上でのポイントになる。しかし通常、なかなかそのような良い候補者を、一時にタイムリーに集めることができるものではない。そこで工夫の方法は沢山あるのであって、例えば、その会社が部門別採用を行っている場合であっても、部門横断的に採用候補者を集めてそのような「疑似チーム活動」を行うとか、そしてそこで適性を見極めた上で配属も決定するとか、できるだろう。

要は、各社ごとに工夫のしがいはあるので、現状の採用プロセスを評価してみた上で、新しいプロセスを再設計したい。Webを能動的に活用せずに、一般サイトや掲示板を放置していたら、Webのデメリットだけを受けることになってしまいそうだ。



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