消費者物価指数に現れないが既に来つつあるインフレとその要因。それを「成熟国型インフレ」と呼び、その影響の可能性について、英国の例を挙げながら概観している特集。
インフレ/デフレは人事・組織運営のあり方に影響を及ぼすだろうか?・・・そのことは考える必要はないだろう。しかし逆に、人事・組織運営の如何がインフレ/デフレを引き起こすことは大いにありうる。ただしそれは通貨のインフレ/デフレではなく、「人材価値尺度のインフレ/デフレ」。それは、商品やサービスの価値尺度である通貨のインフレ/デフレと同じことであり、アナロジーがきく。
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人材価値尺度のインフレとは次のことを意味する。
- 昇進・昇格のインフレ (マネージャーばかりになる)
- 賃金・報酬のインフレ (報酬水準が安易に上がっていく)
- ビジネス機会のインフレ (あの案件もこの案件も投資Go)
ライン部門にてマネージャーが部下にいい顔をしたいのを放任する場合には、どんどんこのようなインフレが進行するだろう。インフレを起こせばしばらくは部下のモチベーションは上がる。しかし数年経った頃には、タイトル(資格)と賃金が高騰した社員を養えるだけの仕事はなくなっており、人材の品質も低下して業界での評判も低下し、さらに、先に投資したプロジェクトの失敗によって赤字が拡大し、クラッシュ=大リストラがやってくる。
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一方、人材価値尺度のデフレとは次のことを意味する。
- 昇進・昇格の閉塞感 (上が詰まっている)
- 賃金・報酬の頭打ち (パイが増えない)
- ビジネス機会のデフレ (投資基準が厳しすぎる)
このようなことが起こるのは、成長が鈍化している時、人件費の高止まりやプロジェクト案件の採算性に関して経営が危機感をもって、強い締め付けを行うような場合だろう。あるいは、既得権益を持った上級管理職が、ビジネスの成長をもたらさないままポジションに居座り続けるような場合にも起こる。この場合、モラールは低下し、若手の流出などが起こっていくだろう。
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こうしてみると、人材価値尺度を一定に保つことは、組織の長期的な成長のために、決定的に重要であると考えられる。特に、放っておくと起こりやすいインフレが要注意だ。そのような「人材価値尺度の番人」は誰だろうか?それが人事部の役割ということになるだろうか。
日銀のミッションはただ一つ、それは通貨の番人であることである。そうであれば、人事部のミッションはただ一つ、それは「人材価値尺度の番人」であると言ってはいけないだろうか?