2006年FIFAワールドカップ・ドイツ大会の直接的なビジネス規模は約3000億円(FIFAおよび組織委員会の収入)ということであるが、これをすごく大きいと見るか、まだまだ小さいと見るか・・・。いずれにしても巨大ビジネスとなったW杯の裏での権利ビジネスの戦いを紹介している。
その話を消化しようとしながら、自分が日頃企業活動を理解するフレームワークが、いかに従来型ビジネス(特に製造業)を念頭に置いたものであったか、ということに思い至った。企業が付加価値を生み出す活動の流れ、所謂バリューチェーンを、
調達>製造>梱包>配送>販売>アフターサービス
であるとか、
基礎研究>要素技術開発>生産技術開発>商品開発>販売
であるとか、製造業ベースのモデルで理解していても、コンテンツビジネス/権利ビジネスの話題を評価できない、頭を切り替える必要がある、と痛感した次第である。ひとまず、頭を切り替えて、コンテンツビジネス/権利ビジネスのバリューチェーンを、一番粗いレベルで、
コンテンツ開発>一次市場>二次市場
と理解することにして、さて、この記事で焦点が当てられているのは、FIFA(国際サッカー連盟)が販売する権利市場、すなわち、一次市場の話である。ひとまずそこに絞って記事を読むことにする。FIFAの営業活動というのが、この記事での焦点である。
- FIFAは収入拡大を目指して、パートナーと呼ばれる最上位のスポンサーを6社に絞り込むことにした。
- しかもFIFA主催のすべての試合を対象とした8年間のパッケージにした。
- 「本当に売れるのか」懐疑的だった電通にFIFAはこう伝えた。「ソニーに声をかけてくれないか」
- FIFAの方針は、横断的なマーケティング活動の拡大を目論むソニーにとって、渡りに船だった。加えて、・・・途上国地域での収益拡大を目指すソニーとFIFAの思惑は一致する。
- (ソニーは)交渉の舞台を英国ロンドンに移した。電通を間に介しての伝言リレーを避け、直接FIFAと対峙したかったからである。
- 約1ヶ月の激闘の末、ソニーとFIFAは大筋で合意に達する。
- 調印式には、FIFAのブラッター(会長)が顔を見せ、ソニーの出井が出迎えた。合意金額は・・・約341億円。
電通がこれほど無様に描かれる必要があったかどうかはさておき、電通の姿と対比しながら、いかにFIFAがハイパフォーマンスのビジネス活動を行ったか、ということが感じられる記事になっている。
さて、ここで考えてしまったことは、FIFAの収益拡大戦略とその実施によって、FIFAの収益が仮に年間300億円アップしたとしよう、それに従事したFIFAの担当者の人数はどれくらいであったか(おそらく少数だろう)、そして、その300億円の収益は誰にどのように配分されるべきか(投資銀行のフィー配分とは違うべきだろう)、ということなのである。
- 価格のないモノに価格(アウトプット)をつけて成功した、そこにおけるインプットとは?
- そうして得られた超過収益は、その一次市場での取引に関わった人々にどう配分されるべきか?
- コンテンツ開発者(グラウンド上のプレイヤーを初めとして・・・)の側には、どのように還元されるべきか?
サッカーとなると、コンテンツ開発者の側(上流側)も、二次市場の側(下流側)も、参加主体がほとんど地球的な広がりを持ってしまい、組織内外の境界線がはっきりしないが、ひとまず、サッカー界という「閉じた」組織論の話として論点を整理するとともに(リーダーシップ論=ベッケンバウアー論?とかも含めて)、しかしそれでも広すぎるし、複雑系にすぎるので、さらに絞って、300億円(?)の超過収益の分配論だけでも、組織・人事コンサルタントとしては考えておきたいところだと思う。